アメリカのスポーツ

庶民の間ではバスケが最も盛ん

公園のバスケコートで少年たちがバスケットボール。
近くの公園に必ずと言っていいほどバスケコートがある。NYクィーンズで。

アメリカのスポーツと言えば、アメリカンフットボール、バスケットボール、野球が有名。後ほど詳しい統計で示すが、プロスポーツの市場もこの順でシェアが大きい。しかし、一般の市民がするスポーツというと、圧倒的にバスケットボールが首位だろう。どの公園に行ってもバスケットコートの2つや3つくらいはあって、子どもも大人も、多くの人が「玉入れ」に興じている。アメフトは、学校では盛んだが、やや危険なためかその辺でやっているのはほとんど見ない。野球も、場所を大きく取るからだろう、球場がある限られた場所でしかやっていない(ただし、アメリカは広いので、中規模公園でも野球場が4つも5つもあったりして驚かされる)。日本の私の世代では、子どもの頃よく1塁ベースだけの草野球で遊び、少人数で柔らかいボールを打ちあったが、そういうのはこちらでは見ない。

NYクィーンズにあるジュニパー・バレー公園の野球場。
NYクィーンズにあるジュニパー・バレー公園はごく普通の中規模公園だが(日比谷公園の1.4倍、22万平米)、野球場が8つもある。

次いでサッカー

私の見た限りでは、ニューヨークではバスケに次いでサッカーが盛んだ。前にサンフランシスコに居たが、西海岸ではサッカーはそんなに盛んではない。ニューヨークなど東海岸はヨーロッパからの移民が入ってきたところで、かの地のスポーツ文化が持ち込まれたと思われる。そして、最近は中南米系の移民が増え競技人口も増えた。私のアパート近くの公園にも立派なサッカー場があり、ヒスパニック系の人たちが夜遅くまでプレーしている。ただ、これは熱が入るだけ本格的で、ぶらっと行って入れてもらえる雰囲気ではない。本格的なチームをつくってガチでたたかっている。

NYブルックリンのサンセット公園のサッカー場。
NYブルックリンのサンセット公園のサッカー場。週末昼に少年たちのサッカー試合が開かれていた。

テニス、「ハンドボール」も

サッカーに次ぐのはテニスだ。公園の多くにテニス場があり(ある場所には10面前後のコートがあるので驚く)、正式なコートがなくても、ボールを打ち付けるコンクリート壁はある。アメリカでは、市のテニスコートは普通、無料。バスケコートと同じだ。しかし、ニューヨークは人口が多いからか、1回1人15ドルの料金を取られる。年間パスは100ドル。こんなのはニューヨークが初めてでびっくりした。

壁打ちテニスは無料だが、面白いことにニューヨークでは、交互に素手でボールを壁に打ちつける「ハンドボール」も盛んで、テニス練習の人の傍らで盛り上がっている。ニューヨーク周辺のビーチなどで発達してきた競技で、普通我々のいうハンドボールは「オリンピック・ハンドボール」と呼んで区別しているようだ。

UCLAのテニスコート。
アメリカにはテニスコートが非常に多い。市営なら通常は無料。このコートは、大学の本格的なコート。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で。

スポーツ統計で検証してみる

以上は、私が公園などで見た限りでの印象だが、これを統計資料などと突き合わせて検証してみよう。アメリカのスポーツに関しては、これ以上ないと思われるような非常に的確な統計資料が労働省から最近発表された(Rose A. Woods, “Sports and Exercise,” U.S. Department of Labor, May 2017)。まずは、これに沿って紹介する。

アメリカ人の2割が日常的に運動

アメリカ人はスポーツ好きだ。2015年の調査で、15歳以上人口の19.5%が日常的にスポーツや体操をしている(男性21%、女性17%程度)。しかも年々活発になる傾向で、2003年に15.9%だったものが3.6%増になっている。あらゆる年齢層でスポーツが盛んで、2015年に15~24歳で26%と高いのはもちろん、55歳以上でも18%近くと、25~54歳と同レベル。地域的には気候条件のよい西部で高い傾向がある。北東部は冬季に寒くなるので低いが、それでも東海岸の大都市部では若干高い。南部は暑すぎるのか低い。また、学歴の高い人ほど運動する傾向があり、高卒と大卒で2倍の開きがある。(以上、詳しくは前掲資料pp.2-6.)

ウォーキングがダントツ1位、球技ではバスケ

庶民の間で盛んなスポーツは何か、にズバリ答えてくれるのがp.8の表。スポーツする人の30%が「ウォーキングをする」と答えており、ダントツの1位だ。確かに朝、公園で歩き回っている人は多い。次いで、ウェイトリフティング、ジム、ジョッギング、水泳など、一人で行えるスポーツが7~9%台で続く。ウォーキングもそうだが、好きな時に一人でやれる運動が上位に来るのは当然だ。次の6位から、いよいよ球技が入ってくる。トップはバスケットボールで約3%。次いでゴルフ、サッカー、ボウリング、フットボール、テニスの順。それに交じる形でサイクリング、ヨガ、エアロビクス、ダンスなども入る(詳しくはp.8参照)。庶民の間ではバスケが最もポピュラー、という私の印象は統計上も正しかったことになる。

ただ、こうした球技をやる人は男性が圧倒的だ。バスケをする人のうち女性は10%のみ、フットボールする人では6%程度。逆に女性の間で盛んなのはエアロビクス、ヨガなどで、共に8割を超える(p.10)。年齢層から見るとこれら球技をするのは若年層が多く、15~24歳はバスケやフットボールをする人のうち約80%に上り、サッカーで70%台、野球で60%台だ。55歳以上の人が行うスポーツはウォーキング、ゴルフ、エアロビクスが多く、それぞれ全体の50%前後(p.12)。

その他、スポーツする人は1日に何時間くらいするのか、種目ごとではどれくらいの時間か、週日と週末での違いは、働いている人は1日のうちのいつ頃スポーツするのか、一人でやるか他の人と一緒にやるか、など多方面に渡ってデータを示している。興味のある人は原資料を見てほしい。

社会人バスケットボールの試合。
一般の人の間で最も盛んな球技はバスケットボール。NYブルックリンで。

日本人は個人でするスポーツが好き

なお、人気のある(自分で行う)スポーツを日本と比較すると、日本の場合、一人でするスポーツがより高い割合を示す。さすが個人主義の国だ。総務省統計局の平成28年社会生活基本調査によると、ウォーキングがトップなのはアメリカと同じだが、ジム、ボウリング、ジョッギング、水泳、登山、釣りと続き、8位にゴルフが入るものの(これもゴルフ練習場などでの個人プレーが含まれる)、次はサイクリングで、ようやく10位になって本格的集団競技の野球が出てくる。以後、卓球、バドミントン、サッカーなどが続く。日本の伝統スポーツというと、柔道、剣道、空手、相撲、弓道、流鏑馬などほとんど個人競技であり、集団でやるのは盆踊り、蹴まりくらいだ。それに対して欧米はサッカー、バスケ、野球など集団競技主体であり、著しい対比をなす。何を隠そう、日本にこそ強固な個人主義の文化がある、と結論付けられるだろうか。

(社会の集団主義があまりに強いので、息抜きの遊びは個人でやりたい、ということか。あるいはあまりに忙しいので、わずかな合間に一人でできるスポーツをする外ない、ということか。それにしても、伝統スポーツにほとんど集団競技がないことは説明がつかない。)

見るスポーツではアメフトがダントツ

以上は、一般市民が行うスポーツだったが、アメリカで、市民が「見る」スポーツ、つまりプロスポーツや大学スポーツ(米国では大学スポーツもプロに近い市場をもつ)については、その人気順位はかなり別のものになる。この種の統計で最も新しいのは、この9月に発表されたワシントンポスト紙とマサチューセッツ大学ローウェル校による1000人対象の電話調査(Washington Post-University Of Massachusetts Lowell – National Sports Poll, September 26, 2017)だろう。ダントツの首位は(アメリカン)フットボールの37%、次いでバスケットボール11%、野球10%、サッカー8%、アイスホッケー4%などだった。なぜフットボールがこれほど人気があるのか、いろいろ分析があるようだが、とにかく激しくぶつかる競技が見てスカッとするということだろう。自分で実際にやるとなると一歩引くが、お祭り騒ぎで観戦するには絶好、ということか。プロ・リーグのNLFは1シーズン1チーム16試合と、バスケ、野球に比べて圧倒的に試合数が少ないので希少価値が高まったとの説もある(Bill Sego, “Why Football is More Popular Than Baseball, Basketball, and Hockey Combined,” How They Play, Updated on November 8, 2016)。NLFや大学フットボールのシーズンが米国のホリデーシーズンの秋から冬にかけてに重なることも関連する。

プロスポーツではアメフト、野球、バスケの順

プロスポーツの市場シェアについては、英語版ウィキペディアの“Major professional sports leagues in the United States and Canada“とその日本語版「北米4大プロスポーツリーグ」がよくまとめている。2015年から16年にかけてのシーズン総収入(TV放映権料や入場料など)は、フットボール(NLF)130億ドル、野球(MLB)95億ドル、バスケットボール(NBA)52億ドルだった。観客動員数は、NLFが圧倒的に試合数が少ないので、年間総数にしても一試合平均にしても公平な比較ができないと思うが、次の優勝決定戦のTV視聴率比較が、傾向をよく表している。

優勝決定戦の全米視聴率(2015年)

NLF(スーパーボウル)    47.5%
NBA(ファイナル第6戦)   13.4%
MLB(ワールドシリーズ第5戦)10.0%

(ウィキペディア日本版より)

ワシントン州ポートランド市セーフコ球場での野球の試合。
米国のプロ野球、メジャー・リーグ(MLB)の試合。ワシントン州シアトル市セーフコ球場。

プロ並みの大学スポーツ

アメリカの大学スポーツはプロ並みだ。全米大学体育協会(NCAA)が各種競技で90の大会を運営し、1万9500チーム5万4000人の選手が競う。傘下で1123大学、約50万人の学生がプレーしている(NCAAウェブページ)。2016年9月10日のテネシー大学とバージニア工科大学のフットボール対抗試合で15万人の観客を動員、2014年4月11日のバスケットボール・NCAAセミファイナルで7万9000人の観客を動員など、プロスポーツ顔負けの人気がある。毎年3月に行われるNCAAバスケットボール最終トーナメントは「マーチマッドネス」と言われ、国民的な熱狂となる。日本で言えば高校野球のようなもの。商業化も進み、NCAA全体の事業収入は約10億ドルに上る(2016年。8割はTV放映権・広告収入)。バスケットボールの「マーチマッドネス」でその9割を稼ぐとも言われる。

大学男子はフットボール、女子は陸上競技が最も盛ん

学生の参加を競技別で見ると、男子の場合、総数274,973人のうち、1位フットボール73,660人、2位野球34,554人、3位屋外陸上競技28,334人、4位屋内陸上競技25,220人、5位サッカー24,803人、6位バスケットボール18,684人の順だ。女子は総数211,886人のうち、1位屋外陸上競技29,048人、2位サッカー27,358人、3位屋内陸上競技26,886人、4位ソフトボール19,680人、5位バレーボール17,119人、6位バスケットボール16,593人となっている。本格的に部活動がやれる環境では、男子ではフットボールや陸上競技、女子は陸上競技、サッカーなどが盛んになるようだ。バスケットボールは人気は高いが少数精鋭か。(National Collegiate Athletic Association, “Student-Athlete Participation 1981-82 – 2015-16”

パサデナ市立大学でのフットボール練習風景。
大学ではフットボールが最も人気がある。カリフォルニア州パサデナ市立大学でのフットボール練習風景。
カリフォルニア州スタンフォード大学のスタジアム。
カリフォルニア州スタンフォード大学のスタジアム。フットボール、陸上競技、サッカーなどが行われる。

高校も男子フットボール、女子陸上

高校では、すべてのスポーツ種目について全米州立高校協会(NFHS)が各州協会を通じ、1万8500校1100万生徒のスポーツ活動を統括している。高校でのスポーツ活動が一般国民のスポーツ種目選好を最もよく反映すると思われるが、大学スポーツと同傾向の種目別参加となっている。

NFHSの資料、2016-17 High School Athletics Participation Survey Resultsによれば、最も参加数の多いスポーツは屋外陸上競技で1,094,613人、2位フットボール1,059,399人、3位バスケットボール980,673人、4位サッカー838,573人、5位バレーボール501,988人、6位野球492,935人、7位クロスカントリー492,310人だ。フットボールは男子で圧倒的な人気なのだが、女子の参加が少なく、2位にとどまる。逆に陸上競技は男子で2位だが、女子では1位と人気が高いため、全体でも1位となった。野球も男子では4位なのだが、女子の参加が少なくて6位に落ちた。バスケットボールは男女ともそれなりの参加があり、上位と差の小さい総合3位だった。

カリフォルニア州イースト・ロサンゼルスでの高校生の野球試合。
高校生の野球の試合。カリフォルニア州イースト・ロサンゼルスで。