人口1人の自治体(ネブラスカ州モノワイ村)

2009年の拙著で紹介した小自治体の一つ、モノワイ(Monowi)村がついに人口1人になったようだ(Maria Carter, “What It’s Like to Be the Only Resident in a Pop. 1 Town,” Country Living, March 31, 2017)。

1990年当時、ネブラスカ州モノワイ村は人口8人だったが、同年の国勢調査でなぜか6人と発表された。この時は、国勢調査局のずさんな調査を示す例として有名になった(人口1桁の自治体はアメリカでは珍しくない)。モノワイ村は1902年に設立され、一時は人口150人を数えるまでになったが、人口流出が止まらず、90年までに8人になっていた。

名著Dennis Kitchen,  Our Smallest Towns: Big Falls, Blue Eye, Bonanza, & Beyond, Chronicle Books Llc, 1995. 米国の小自治体を写真で紹介した。その表紙に載せられたのが、ネブラスカ州モノワイ。ネブラスカ州モノウィは1990年当時人口8人だったが、同年国勢調査の結果が6人と出た。政府調査のずさんさの好例とされ全国に流布された。表紙写真では、村民全8人が「人口6人」と公表示され道路標識の前でポーズをとっている。

次の2000年国勢調査では2人になった。ルディ&エルシー・アイラー(Rudy & Elsie Eiler)夫妻のみ。しかし、2004年にご主人のルディさんが死去し、エルシーさん一人に。2010年の国勢調査では、全米の法人化されている自治体の中で人口一人はこのモノワイ村だけだった。

エルシーさんはこの村で居酒屋(モノワイ・ターバン)を経営する。そこの小さい机が村役場だ。住民一人から選出されたエルシーさん自身が村長。村長として自分に酒類販売ライセンスを発行する。村税を自分に課し、年間村予算500ドルを確保。毎年、村の道路整備計画を州に提出し、4つの街灯を維持するための州補助金を得る。蔵書5000冊の村立図書館もある。ご主人を忍ぶためその蔵書を収めたプレハブ式の図書館だ(Laura Moss,”12 U.S. places where your visit could double the population,” Mother Nature Network, Aug. 1, 2011)。アメリカ大陸のど真ん中、広大な沃野が続くが、州道12号線と509番アベニューが通っているので交通がないわけではない。30~60キロ離れたところに住む「隣人」たちが居酒屋に来る。図書館も「周辺」住民に活用されている。

2011年にラジオ番組がこのエルシーさんの村を取り上げ、人気キャスターが「今、村の財政支援のため彼女の店でホットドッグを食べている」と報じた。1時間もたたないうちに人が集まり始め、結局1000人を超える人々が彼女の店に来てホットドッグを注文し、「支援」を行ったという(Wikipedia: Monowi, Nebraska)。

国勢調査は10年ごとで次回は2020年だ。それまでは国勢調査局が毎年人口推計を行う。最新の2016年推定では、モノワイ村人口は、2010年と同じく1人だとした(U.S. Census Bureau, “Annual Estimates of the Resident Population (Nebraska, 2016)“)。