ニューヨーク地の果て -ロングアイランド東端モントークへ

ニューヨークから東に延びるロングアイランドの東端にある町モントーク。
ニューヨークから東に延びるロングアイランドの東端にある町モントーク。

ブルックリンから長い島が東に続いている

ニューヨークは島の街だ。市を構成する5区のうちブロンクス以外4区は島の上にある。スタテンアイランドはニューヨーク湾に浮かぶ島。マンハッタンはハドソン川、ハーレム川、イーストリバー(実際は海峡)に囲まれた中洲(地質学的には違うが)のような島。クイーンズとブルックリンは大陸に続いていると誤解されがちだが、実は東に延びる長い島、その名も「ロングアイランド」の西端の街だ。

ロングアイランドは東西約190キロ、面積約3600平方キロで、奈良県や埼玉県の面積に近い。私の住むブルックリンからずうっと東に続いている。こんなに長く続いていれば、先に何があるのか行ってみたくなるのが人情だ。で、行った。ロングアイランド鉄道に乗り、突端の街モントークまで行って帰ってくる。それだけのこと。暇な退職老人はこれだから困る。

冬の初日12月1日(金)、晴天。いつものように、計画なしでぶらり出かける。島最東端からフェリーで大陸側ニューイングランドに行けたら面白い、などと考えていた。(とても無理。フェリーは夏だけ。列車も突端のモントークまで日に5本で、3時間かかる。途中、ジャマイカ・バビロン間で17駅素通りする快速に乗ってもそれだけかかる。)

ロングアイランド鉄道の乗り方

マンハッタンのペン・ステーションやブルックリンのアトランティック・ターミナルから通し切符で乗るが、いずれにしてもジャマイカ駅で乗り換えになる(したがってジャマイカ駅まで地下鉄で行ってもいい。地下鉄の乗換駅名は「ジャマイカ駅」ではなく「サットフィン大通り・アーチャー街・JFK空港駅」なので要注意)。マンハッタンやブルックリンからモントークまでの料金は、片道ピーク時29ドル25セント、非ピーク時21ドル25セント、シニア料金(65才以上、午前ピーク時除く)14ドル50セント。ジャマイカ駅からだとそれぞれ25ドル、18ドル25セント、12ドル50セント。アメリカの鉄道は、地下鉄など以外は改札がなく(どこからでもホームに入れる)、乗ってから車掌にチェックされる仕組みだ。車内でも切符は買えるが、6ドルくらい高くなる(シニア料金は同一)。

行き当たりばったりお出かけゆえ、まず、モントークまでの列車が一日5本だけなのにびっくり。夜9時や1時近くに出る列車もあり、昼間の列車は3本だけだ。時刻表を調べてくればよかった、と後悔する。だが、途中のバビロンやパチョーグなどまでなら(おそらく通勤圏内で)本数が多いので、そこまで行きまわりを散策するなどのことができる。通し切符さえ持っていれば、どこでも乗り降り自由だ。

ロングアイランド鉄道のジャマイカ駅。
ロングアイランド鉄道のジャマイカ駅。郊外電車と市内電車の乗り換えターミナルだ。地下鉄や、ジョン・F・ケネディー空港に行くエア・トレインも発着し交通の要衝。
ロングアイランド鉄道の車内。
ロングアイランド鉄道の車内は地下鉄と違いゆったりとして快適。

ニューヨークの典型的な郊外住宅地が続く

ジャマイカから鈍行でバビロンまで行った。バビロンはロングアイランドのほぼ中間地点だが、ここまでは確実にニューヨーク通勤圏のようだ。列車の本数が多く、電化もされている。

列車はクイーンズ区からナッソー郡に入り、バビロンに着く頃は、ロングアイランドの東半分を占めるサフォーク郡に入っている。ここまで住宅地がほぼ連続していた。「ロングアイランド」と言ったときのイメージは、この広大に広がる平屋の郊外住宅地だろう。

バビロンでディーゼル車に乗り換えてさらに東へ。パチョーグの街で降りて駅近くを散策した。小さな波止場があった。この辺はロングアイランド南岸の海辺の行楽地。沖に横たわる砂州状の細長い島ファイアーアイランドへの船が出ている。

この辺のロングアイランド南岸から二十数キロ行った北岸には、捨ておかれたショアハム原子力発電所があるはず。1984年に完成したが、住民の反対運動で稼働しないまま廃炉となった。フクシマで事故を起こしたのと同じ沸騰水型原発だったという。

パチョーグ以東はさらに林が多くなり、農地も見えてきた。市街地でも広い庭があって、森の家の風情がある。

ロングアイランド地域に続く住宅街の風景。
バビロンまでは住宅地がほぼ連続。ロングアイランド西半分にあたるクイーンズ区、ナッソー郡などはこのような景色が続く。バビロンに着く頃はサフォーク郡に入っている。
ロングアイランドの住宅街の風景。
同上。

 

バビロンから先を走る2階建てディーゼル車。
鈍行で行くとバビロンでディーゼル車に乗り換える。車内をよく見るとKawasakiの文字があり、日本製のようだった。(東端モントークまで行く快速列車は電気・ディーゼル両用機関車のようで、乗り換えない。)
パチョーグの街の波止場。
パチョーグの街で降りて駅近くを散策。小さな波止場があった。パチョーグはロングアイランドの南に横たわる海浜行楽地ファイアーアイランド(砂州状の細長い島)への起点となる街のひとつ。海浜保存にも力を入れているようだ。

 

ロングアイランド東部の農地。
パチョーグを出るとさらに森が増え、農地も増えてくる。これは牧場か。
パンプキン畑のように見える農地。
ロングアイランド東部に開けた農地。収穫したパンプキンの残りか。
ロングアイランド東部の広い庭の住宅。
住宅地域では、一般住宅でも、塀の中に庭が広く取ってあり、林や野原の中に住んでいる風情だ。

ロングアイランド東端の街モントーク

モントークに近づくにつれ曇ってきて、まさに地の果てに来たような気配に。 午後2時20分、モントーク着。(鈍行乗り継ぎのため)5時間かかった。駅舎はなく駅員も居ない寂しい駅。着いた列車がそのまま30分後に折り返しで出るという。それを逃すと次は夜の10時だ(マンハッタンやブルックリンに着くのは夜の2時近くになる)。近くの海岸に出て写真を撮るのが精いっぱいだった。

ロングアイランド東端の街、モントーク。海辺。
ロングアイランド東端の街、モントーク。
モントーク駅。
モントーク駅は駅舎もなかった。屋根が見えるのはホームの雨よけ。左手の白い建物は地元美術館で、「これは駅舎ではない、切符は売っていない、トイレもない」と書いてあった。
モントークの街の海辺。
モントークの街の海辺。曇ってきて寂しい風景になった。ニューヨーク州の東端、ロングアイランド最果ての街だ。

さらに先には灯台が

モントークの街からさらに東に5キロ行くと、本当の地の果てモントーク岬とその灯台がある。夏ならバスがあるが、冬だと歩いて行く以外ない。また、モントークから大陸側のコネチカット州ニューロンドンに行くフェリーも夏ならある。島北側の半島部グリーンポイントに行けば、冬でもニューロンドン行きのフェリーが1時間おきに出ている。ロングアイランド鉄道でこのグリーンポイントにも行ける。次はそこが目標か。