イチ、首位打者とマリナーズ優勝だ ―イチローと年齢差別禁止法

イチローのマリナーズ復帰が決まった。おめでとう。

長らく、彼を受け入れる球団がないことにいらだっていた。トシで見るな、大リーグよ。アメリカに年齢差別禁止法があることを忘れたか。表面的に年齢で見てはいけない。ただただ実力だけで判断し、何歳であろうが、実力さえあれば正当に採用する。それがアメリカだ。それが公民権と年齢差別禁止法(ADEA、1967年制定)のアメリカだ。

主に代打という厳しい環境の中でイチローは2016年2割9分1厘、2017年2割5分5厘と結果を残してきた。なぜ彼を取ろうとしないのか。彼は徹底的に体を作り込まないと力を発揮できないタイプだ。だから入念なウォーミングアップを毎回欠かさない。毎年シーズンの初めは調子が出ず、5月頃になってからやっと打ち出す。2009年3月、世界一を決めるWBC決勝戦。我々が皆覚えている「神が降りた」と延長10回2死の勝ち越し2点適時打の際も、それまでに8安打2割1分の不調にあえいでいた。何歳になろうが、全試合全部出て徹底的に体を使った方が結果を出せるタイプだ。なのに、トシだからと出場を抑えられ代打にまわされる。

やっとマリナーズが迎えてくれた。やるべきことを彼は知っているはずだ。首位打者、いや、もしかしたら4割達成、そしてチームの優勝。

米国最初のチームで有終の美を飾る、そんな花道のために今年があるのでないことを彼は知っているはずだ。彼のキャリア最高のシーズンにする。首位打者はもちろん、もしかしたら20世紀後半以降初の4割、あるいはシーズン最多安打262本の更新でもいい。44才にしてキャリア最強の年であったことを証明することが今年の彼の課題であるはず。そしてチームメートを鼓舞しながら、マリナーズを優勝に導く。なぜ彼を取らなかったのか。トシに目を曇らされた大リーグ球団がことごとく悔しがる1年にする。彼らのトシに対する偏見が根底からくつがえす。それがこの1年であることことをイチローはよく知っている。

2008年9月、マリナーズ時代のイチロー(右端、右翼)。シアトル・セーフコ球場で。

実はイチローが2001年に初の日本人野手として大リーグに来た時から、私は彼の熱烈なファンになった。世界に出て勝負する。その意気込みに共感した。ほれ込んだ。その年私は日本に職を得て帰国することになったのだが、それ以後、私は奮闘するイチローとともに歩んできた。毎日彼の打撃をネットでほぼライブで追い、複数安打をすれば私の仕事にも活力がみなぎったし、不振だと私の体調がおかしくなった。

2004年8月18日、シルクロードの旅の際、清朝に服属したイスラム系ハミ国の街ハミで、夢の中にイチローが現れた(「アジア奥の細道」14章1)。「実は私はあなたの異母兄弟の弟なんです」と彼が言う。「今更弟だと言われても困る。まあ友人として付き合おう」などと話した。目覚めて苦笑したが、この日のイチローは4打数4安打打点5の大爆発だった。

退職して今またアメリカに戻ってきている今、彼は44才で17年目の大リーグ・キャリアに入る。なぜ私が彼にこれほどまで肩入れするのかは明らかだろう。年齢の壁をぶち破り、実力で最強の軍団に立ち向かう。イチロー、がんばってくれ。