ブルックリン・サンセット公園からのニューヨーク高層ビル街

ブルックリンの「隠された宝石」(秘宝)と言われるサンセットパーク。ブルックリン中央部の海岸近く、この公園から見えるニューヨークのビル街は絶景だ(本ブログのトップページ写真でもある)。「ニューヨーク市の眺望でこれ以上のところはない」とさえ言われる(Eater New York)。

素晴らしいのはまだ観光ガイドブックに載っていないこと。観光客がだれも来ない。ただただ地元住民だけがこの絶景を堪能させて頂いている。子連れ家族やカップルや退職老人たちだけの静かな憩いの場だ。

今回は、このサンセットパークから見えるニューヨークのビル街を解説させて頂きましょう。

サンセットパークは西方向、海(アッパー・ニューヨーク湾)の方に開けている。リクレーションセンターやプールのある東半分が高く、西に低くなっている。中央部の芝生から、マンハッタンのビル街や自由の女神、港など目のくらむような景色が目に入る。右手(北方向)から左手(西南方向)への連続した写真を撮ると次のようになる。

 

A、ブルックリン中心部

まず、右手(北方向)に見えるのが、ブルックリン区のダウンタウン(中心街)。近いので高く見えるが、そんなに高層というわけではない。ここから見ると、マンハッタンのビル街もブルックリンのビル街も連続しているが、あくまでイーストリバー東側にある別のビル群だ。一番右端に見える歴史的建造物的なビルは156メートルのウィリアムズバーグ貯蓄銀行タワー。1929年に完成して2009年までブルックリンで最も高いビルだった。

今、この近辺に325メートルの「デカーブ通り9番地ビル」が建設中で、2021年に完成する予定。いっきょにブルックリンの存在感が増すだろう。マンハッタンには高さでやられてきたのだから、高さでやり返せばいい、ということだ。ブルックリン橋のたもとから見たブルックリン区中心部ブルックリン橋のたもとから見たブルックリン区中心部。サンセット公園から見るのとは反対方向からの景観になる。ブルックリン橋からの景色というと必ずと言っていいほどマンハッタン方向の写真が紹介されるが、その裏手にはこのような景色が広がっているということだ。

B、ロングアイランド・シティ

ブルックリン中心部建物の背景にかすかに見えるのがロングアイランド・シティの中心街。ブルックリン中心街に比べて2倍離れているので目立たないが、結構高層。これもイーストリバーのこちら側(東側)、クィーンズ区内になる。

名前が示唆する通り、かつては独立した市だった。それが、ブルックリン市などとともに1898年の大合併でニューヨーク市に組み込まれた。現在でもマンハッタン周辺で比較的独立した都市域を形成しているのは、ブルックリンとこのロングアイランド・シティ、それにニュージャージー州側のジャージーシティなど。ロングアイランド・シティ。イーストリバーから見たロングアイランド・シティ。イーストリバー河岸はどこも再開発が目白押し。その中でもこのロングアイランド・シティはマンハッタンの高層ビルが拡張してきた感じ。

C、マンハッタンのミッドタウン

その左一帯がマンハッタンの心臓部、ミッドタウン。サンセット公園からはちょっと遠いので、あまり目立たずごちゃごちゃして見えるが、超高層ビルが集積している地域だ。エンパイアーステートビル(屋上部381メートル、塔先端443メートル)が確認できるだろう。やや右に、それよりも高いが、細く長いだけの建物がある。印象深いビルではないが、実はあれが、建物部分としてはニューヨークで一番高い「パーク街432番地タワー」ビル(426メートル)。名前もさえない。高級マンションで、セントラルパークがよく見渡せるとのこと。

なお、塔の高さも加えるとニューヨークで一番高いビルは、後述ロウアーマンハッタンの「1ワールドトレードセンター」(541メートル)だ。だが、建物部分だけだと417メートルで、トップをこのパーク街432番に譲るということだ。

エンパイアーとパーク街432番の2高層ビルの間に建設中の大きなビルは「1マンハッタンスクエアビル」で、完成すれば244メートルの高級マンション。近いので大きく見えるだけ。マンハッタン・ブリッジのたもと、イーストリバーに面しているので眺めはいいだろう。エンパイアーステート・ビル。エンパイアーステート・ビル。

パーク街432番地タワー」ビル
建物部分としてはニューヨークで一番高い「パーク街432番地タワー」ビル(426メートル)。

ミッドタウンとは何か

マンハッタンには「ミッドタウン」という特徴的な都市域がある。エンパイアーステート・ビルやタイムズ・スクエア、ブロードウェイ劇場地域などのある高層のビジネス・商業地域だ。しかし、そこがニューヨークの中心かというと、南のロウアー・マンハッタンにウォールストリートなどの高層ビル街があり、どちらもいい勝負の中心街となっている。

アメリカの都市は典型的には、ダウンタウンと呼ばれる中心街があり、それ以外の郊外住宅地(サバーブ)とで構成される。港を起点にビジネス・商業地区が発展したため、多くの場合、都市中心部が海岸・河岸に近い低地帯に形成されたことのなごりと思われる。広大なサバーブが形成される以前にできた街では、丘の上の方(標高の高い方)に向かって形成される「アップタウン」という都市域も意識されるようになり、比較的富裕層が住む地域となっていた。

マンハッタンでも、一つの有力な地域分けとしてダウンタウン(14番ストリート以南)、ミッドタウン(14番ストリート以北から59番ストリートまで)、アップタウン(59番ストリート以北)という分け方がある。マンハッタンの碁盤の目状の整然とした道路区画が14番ストリートの南からやや乱れてくるし、59番ストリートから北ではセントラルパークが始まり、都市構造上の境界となっている。

しかし、金持ち地域のニュアンスがある「アップタウン」の中にハーレムなどを含めることの違和感からか、アップタウンの中でも96番ストリート以北を「アッパーマンハッタン」などと呼ぶことが多いだろう。同様に、14番ストリート以南でも、芸術家の多いグリニッジビレッジやイーストビレッジ、あるいはチャイナタウンなどの低層地域と、さらにその以南の超高層金融街を区別するため、主にチャンバー・ストリート以南を「ロウアー・マンハッタン」と呼ぶことが多い。

なお、英語では北方向をアップ、南方向をダウンと言うのが普通なので、マンハッタンの場合、ちょうどこれに当てはまることからダウンタウン、アップタウンの用語ができたと考えることも可能だ。また英語ではダウンタウン、アップタウンを場所を示す名詞としてだけでなく、副詞的に「go downtown」(中心街に行く)などとも用いられる。

ニューヨーク市の中でマンハッタン区は中心街に相当するが、大きすぎるためか、ここをダウンタウンにしてそれ以外の4区を郊外(サバーブ)とするような区分けはなされない。例えばブルックリン区なども独自の中心街「ダウンタウン・ブルックリン」があると観念されている。

マンハッタンは細長い島の街だ(北辺もハーレム川という事実上の海峡で本土と隔てられている)。島のどこでも水運を基礎にした経済発展が可能で、そのためダウンタウンばかりでなく、ミッドタウンなど第二のビジネス・商業街も発展できたと思われる。実際、ミッドタウンの西部ヘルズキッチンに大型客船の埠頭(ピア88、90、92)がある。ダウンタウンが狭い島の突端で発展の余地がなかったことでさらに第2中枢の必要が増大した。

ロウアーマンハッタン(ダウンタウン)とミッドタウン(初期のアップタウン)という明瞭に2つに分かれた中枢を持つ米国都市は珍しい。その中間が地盤が弱く高層ビルが建てられなかったため、という説は根拠がなかったようだ。多くの大都市同様、中間層・富裕層がダウンタウン近辺の貧しい地域を避け、やや遠いアップタウンに逃避した。マンハッタンの場合、そこに新たな経済中心を形成できる地理的要因(水利など)がそろっていた。このためそこにも富裕な消費者を対象とした産業(商業、娯楽、メディアなど)が立地した、と理解できるだろう。さらに20世紀に入ってグランドセントラル、ペンステーションなどの鉄道ターミナルがミッドタウンに建設され、鉄道時代の拠点を確保したことで、第2中枢の発展は保証された。

D、ハドソン・ヤード

ミッドタウンの西側で、現在、ニューヨーク最大の再開発「ハドソン・ヤード」事業が行われている。サンセット公園からでは下記のロウアーマンハッタン・ビル群に隠れてよく見えないが、床面積にしてオレゴン州ポートランド市に匹敵する高層ビル群が姿を現すはずで、別の都市がもう一つできるようなものだ(それでも巨大なニューヨークの一部として組み込まれるだけだろう)。ハドソンヤード高層ビル街近くで見るハドソン・ヤード大規模開発。ハドソン河岸方向(西)から見た景観。ロングアイランド鉄道のウェストサイド車両基地敷地に高層ビル16棟、床面積118万平方メートルの街をつくる。高架鉄道廃線を緑道に変えたハイラインの終点に当たる。

E、ロウアー・マンハッタン

言わずと知れたウォール街初めニューヨークの金融街があるところ。狭い地域にかなりの超高層ビルが集中している。サンセット公園からは特にこのビル群がよく見える。かつて417メートルの双子ビル「ワールドトレード・センター」が建っていたが、2001年の同時多発テロで破壊され、その跡地に「1ワールドトレード・センター」ビル(541メートル)などが建っている。ブルックリン・ブリッジとロウアーマンハッタン。マンハッタンに面したイーストリバー河岸から見たブルックリン・ブリッジとロウアーマンハッタン。ニューヨーク景観の代表だろう。

F、ジャージー・シティ

サンセット公園からは、ジャージー・シティの高層ビル街もよく見える。マンハッタンと連続して見えるので、その一部だと勘違いしてしまうが、間にハドソン川が流れ、その向こう側、別の街だ。別の州(ニュージャージー州)でもある。

いつもこのジャージー・シティを見ていて思うのだが、この街も相当な大都会だ。高層ビルが林立し、世界的な大企業が本社を構える。特に最も高くて堂々としている「ゴールドマン・サックス・タワー」(238メートル、全米67番目の高さ)は、「都市圏中心部以外にある高層ビルでは全米一高いビル」とのこと。ジャージー・シティ市全体で150メートル以上の高層ビルが9本あり、米北東部ではニューヨーク、ボストン、フィラデルフィア、ピッツバーグに次いで5番目の高層都市という。

相当の大都会なのに、残念ながらすぐ近くにマンハッタンというそれ以上のとんでもない高層都市がある。それで目立たず、単なる周辺ビル街になっている。気の毒だ。ニューヨーク市周辺には、このように、大都会なのに目立たない地位に追いやられた街が、他にもブルックリン、アトランティック・シティなど…。

前述の通り、マンハッタン自身もロウアー・マンハッタンとミッドタウンの2大高層ビル街に分かれている。そこに今後ハドソン・ヤードも加わる。マンハッタン内外が多数の高層ビル街に分かれ、それが複合的に融合・成長する。それがニューヨークの都市発展メカニズムらしい。ゴールドマン・サックス・タワー近くで見るジャージーシティのゴールドマン・サックス・タワー。

G、自由の女神像

高層ビル街に比べると目立たないが、ニューヨーク、というよりアメリカの象徴的存在の「自由の女神」像も、サンセット公園から見える。これが見えることで、サンセット公園の景観的完璧性は高まる。

間近で見る自由の女神像。
間近で見る自由の女神像。

H、ニューアーク中心部

ニューヨークから20キロ離れた内陸のニューアークのビル街も遠くに見える。ニュージャージー州最大の街(人口28万)で、ニューアーク空港や港があり、ニューヨーク都市圏にとっては重要な街だ。

空港と港はやや左手の方にあるが、サンセット公園からは遠いのでほとんど見えない。北方向に飛び立ってくる飛行機は見えるが、写真には小さすぎる。

なお、サンセット公園の真上を北方向に向かって低空飛行する旅客機を頻繁に見るが、これはクィーンズ区の北にあるラ・ガーディア空港に向かう飛行機だ。ニュージャージー・ターンパイクの左(東)にニューアーク港、右にニューアーク空港。幹線高速路ニュージャージー・ターンパイクの左(東)にニューアーク港、右にニューアーク空港。Photograph by Famartin, distributed under a CC BY-SA 3.0 license.

I.ポート・ジャージー

アッパー・ニューヨーク湾にある最大規模の港湾。巨大なクレーンも見える。外洋航海の大型客船なども停泊する。さらに規模が大きいニューアーク港もちょうどこの方向だが、裏手の内湾(ニューアーク湾)に立地しているので、サンセット公園からはほとんど見えない。天気のよい日に大型クレーンなどがかすかに見える程度。ニューアーク空港はさらにその裏手。ポート・ジャージーちょっと近くから、ポート・ジャージーの全景。 

J.スタテン島

ニューヨークの第5の区を形成するスタテン島も、左手(南)端に辛うじて見える。緑が茂ると見えなくなるし、もう少し建物が増えると完全に見えなくなるだろう。現在のところ、マンハッタンからのフェリーが着くセント・ジョージ桟橋付近が見える。サンセット公園の場所によっては、そのかなたにあるベイヨン橋(ニュージャージー側とスタテン島を結ぶスチールアーチ橋)の上部が見える。スタテン島近くから見たスタテン島。マンハッタンからのフェリーが着くセント・ジョージ桟橋付近。