ニューヨーク熱暑、バスケ名所まわり

殺人!

灼熱の太陽の下、歩道を歩いていると、スーパーから出てきた男が「ムーダー(殺人)!」と叫んだ。驚かなかった。冷房から出てきて、歩道の照り返しと熱い大気に襲われ、「殺される!」と叫んだのだ。太陽に向かって叫び、さらに私に向かってニタッと笑った。

ニューヨークもいよいよ本格的な夏が来た。6月29日から少なくとも2週間は最高30度以上の日が続くという予報。私の安アパート部屋は冷房がなく風も入らず、夏は耐えられないので、7月半ばから2カ月間旅行に出る予定だった。しかし、夏が早く来てしまった。少なくとも2週間は30度台の熱暑に耐えなければならない。

扇風機だけで

24時間、ずっとこの暑さに耐えるというのはつらい。夜も25度以上だ。いや、25度なら涼しい。部屋の中はなぜか30度になってしまう。廊下奥にある冷房からの空気を少しでも入れようとドアを半開きにして寝るが、それでも暑い。上半身裸で寝ても暑く、扇風機を回す。腹巻をしないと寝冷えをする、という子どもの頃からの「常識」をこの歳になって葬り去った。扇風機に当たりながら寝ると風邪をひくという常識も簡単に捨てた。脳が発熱する。とにかく風を当てる以外ない。

美術館で夕涼み

家の中に居ると熱中症になるので、前日6月30日はとにかく外に出た。外で風に当たると、密室空間に居るよりはいい。ニューヨークでは熱中症死者が増え、2080年には年間3000人以上が死ぬとの予測も出ている。(IDNYCがあるので)無料で入れるメトロポリタン美術館に行った。鑑賞ではなく夕涼み。涼しい空間でハイキングができた。冷房があるところならどこでもいい。地下鉄の冷房さえありがたい。少なくともそこに座っているうちは死なない。

最高気温38度、どうする?

そしてきょう7月1日は予想最高気温38度。ニューヨークでは30度台後半になることはめったにない。おそらく今年の最高気温として記録されるだろう(結果的には36度)。どうするか。脳が破壊されたか、バスケとサイクリングをしに行った。日本人のバスケサークルというのがあって毎日曜ハドソン河畔の野外コートでバスケをしているというのをウェブで見た。天の啓示。これに行かねば、という思いがつのり、とにかく行った。午後1時から3時。体が暑さに参っていたのだろう、すぐ息が切れた。汗だくになり疲れた。しかし、こういう時こそ攻めの姿勢で行かないと暑さに負ける。

バスケサークル(JFB)は、「老若男女・経験不問・国籍不問」ということで、気楽に迎えて頂いた。ありがとうございます。予約もせず、ぶらっと行っても入れてくださる。ニューヨーク在住のバスケ好きの方にはお勧め。その辺の公園バスケでは、よくて半面コート3対3だが、フルコートでバスケをできるというのは貴重な経験だった。

バスケ名所めぐりサイクリング

マンハッタンW72ストリートはブルックリンからだとちょっと遠いので、往きは自転車を地下鉄に載せて。帰りは、マンハッタンのバスケ名所を見学しながらサイクリングして帰ってきた。(ハーレムにもいくつか重要スポットがあるのだが、ちょっと遠いのでまたの機会にする。)

セントラルパーク・グレートローン・コート(86th Street)

ビッグメドウ・バスケコート
セントラルパークのバスケ・コートとして有名なところ。この暑い日にも腕に自信のありそうな輩がバスケをしていた。メトロポリタン美術館から近い。無料でボールも貸してくれる。1970年代に、ストリートバスケのトップレベルの大会が行われていたそうだ。2面だけ。その向こうはバレーボール・コート。
ビッグメドウ
小さいコートだ。ニューヨークの由緒あるストリートバスケの名所は皆小さい。立派なコートはクールじゃない、ヒップじゃない。
グレートローン
この小さいコートを「グレートローン」というのは、付随して野球グランド8面のどでかい芝生広場があるから。このグレートローンのわきにおまけでバスケコートが付いているというのが正解だろう。しかし、野球場が8面だよ。日本の公園では野球場が1面でもあれば上出来だ。しかも、セントラルパークには、この他に野球場が10面以上あるコーナーもあるのだから驚く(ノースメドウ)。さすがにこの暑さの中では野球をやっている人はほとんどいなかった。
タイムズスクエア。
セントラルパークからブロードウェイを南下。このあたりはマンハッタンの中心タイムズスクエア。2018年最高気温の日の午後のタイムズスクエアだ。
自転車レーン。
タイムズスクエアにも、ちゃんと自転車レーンが通っている。快適に通行できる。しかし、何だね、空気の滞留したアパート部屋より、炎天下のマンハッタンを自転車こいだ方が涼しい。(高層ビルが多く、日影ばかりいう要因もある。)        
ワシントンスクエア公園
ブロードウェイから5番街に入りさらに南下するとワシントンスクエア公園に着く。芸術家などが多いグリニッジビレッジの中心となる公園。ジョーン・バエズの歌にも出てくるでしょう。
ニューヨークの公園にある水飲み器(ファウンテン)。最近、公園でこの水を飲むようになった。ニューヨークの水道水は意外とクセがなくコクがあって(?)おいしい。長らくミネラルウォーターだけ飲むようにしていたが、水道水に切り替えることにした。炎天下のサイクリングには公園の飲料水は重宝する。        
West 4th Streetコート
ストリートバスケの「聖地」と言われるWest 4th Streetコート。ワシントンスクエア公園の近くにある。というか、地下鉄ワシントンスクエア駅の出口に隣り合っている駅口コート。
West 4th Streetコート
さすが、この今年最高気温の午後でも、かなりハイレベルのプレイヤーたちが試合をしていた。ここのコートも狭い。大男たちが小さいコートで躍動する。
West 4th Streetコート
観客席も設けられていた。
West 4th Streetコート
金網に囲まれているので、Cage(かご、おり)とも呼ばれる。「おり」の外に見物人が寄ってたかって観ている。
West 4th Streetコート
コート1面だけの小さな「おり」。ストリートバスケはジャズ、ソウル、ストリートダンスなどともに黒人たちがつくりだした文化と思うが、彼らの文化は徹底して庶民的なところがいい。その「発祥の地」「聖地」も、ごく日常的な場所だ。   実は私はこの場所は何度も訪れていた。しかし、ストリートバスケの「聖地」だとはまったく気づかなかった。ワシントスクエア公園やジャズ・クラブ「ブルーノート」などが近く、そこに来るときにたまたま目に入る。へえ、こんなところに小さなバスケコートがあるんだな、こんなとこじゃ、風通しも悪いし、バスケやりたくないな、と思っていた。
West 4th Streetコート
「おり」のすぐそばに有名なジャズ・クラブ「ブルーノート」がある(青い垂れ幕)。日本人観光客では、こっちの方に来る人の方が多いのではないか。「おり」の横にはパトカーが目立たないように待機し、熱い戦いで発生しかねないトラブルに備えている。
チャイナタウン付近のバスケコート
さらに南下してチャイナタウン付近に。ここにもバスケコートがたくさんある。そうだよな。ニューヨークにはコートが至る所にあり、別に由緒がなくても、どこもかしこも、若者たちを育てる「聖地」になっているんだよな。私のアパート近くのサンセット公園だって、日々熱い戦いが繰り広げられる「聖地」だ。
マンハッタン橋
マンハッタン橋を渡ってブルックリン側に帰る。
マンハッタン橋自転車道。
片側(北側)が自転車専用道になっている。地下鉄もこの橋を渡る。
ウィリアムズバーグ橋
イーストリバーの眺め。少し北側にはウィリアムズバーグ橋が見える。ブルックリンのウィリアムズバーグ周辺は最近起業家経済が活発化している。橋のたもとに真新しいビルがずいぶん建ってきたな。
変電所ボヤ
アパート近くまで帰ってきた。近くの変電所でボヤ騒ぎがあったらしく消防車が出動していた。こう熱くてはボヤも起きるか。消防士さんも暑い中分厚い防具服を来て大変だな。

以上、7月1日の記録、おしまい。