ニューヨークから日本への安便 ―アジアまで足を伸ばせ

ニューヨークがあまりに暑いので、涼しいと言われた日本に脱出してきた。ところが、実際には日本はサウナ状態で、避暑のためさらにフィリピンまで行くはめになった。

まわりにはそう説明している。
もちろんこれは冗談で、実際は、フィリピン・セブの老年期長期滞在地としての可能性を探るため、調査に行くことにしたのだ。その途上で日本にも寄ったということ。

この航空便予約の過程で大変なことを知った。それで、今回はそのお話。

フィリピンまで行けば半額

ニューヨークから成田までの直行便(ANA・ユナイテッド共同運航)往復は20万円だが、フィリピン(マニラ)にまで足を伸ばし、途中日本に寄るようにすると往復10万円ですむ。何と半額になってしまう!

最初は、何かの間違いか、と思った。しかし間違いではない。現在(2018年8月1日)でも、Skyscannerで調べると、例えば9月3日(月)にニューヨークを出て、10月29日(月)に帰ってくる成田直行便往復は208,742円。それに対し、途中日本で3週間滞在した後9月24日(月)にマニラに行き、同じく10月29日(月)に成田経由でニューヨークに帰ってくると108,130円だ。

つまり、日本まで往復したいのなら、ついでにフィリピンまで行った方が安くなる、それも半額になる、ということだ。これでは、いやでもフィリピン観光を満喫せざるを得なくなるではないか。

あまりこの大穴を宣伝しすぎると、ANA(全日空)さんがが気付いて料金修正してしまうかも知れないので黙っていた方がいいのか、とも思った。しかし、おそらくは、ニューヨーク・マニラ便の安値競争に勝つため、マニラまで行く便は料金を大幅に下げるのが合理的なのだろう、とも思える。

実際、ニューヨーク・ニューアーク空港を出たANA・ユナイテッド共同運航便は、成田直行便であるにもかかわらず、日本人はそれほど多いとは思われなかった。アジア人、一般米国人が多かった。

私の人生を変えたアジア経由便

昔から米国から日本行きの航空券は高かった。ついでにアジアの都市に足を伸ばし、途上で日本に寄るようにした方が安くなる。私がサンフランシスコに居た1990年代、直接日本を往復するより、ソウル、北京、上海、台北、香港、バンコクなど、アジアの街まで足を伸ばし、途上で日本に寄った方が運賃が1~2割安になった。だから、帰国のたび「やむを得ず」アジア諸都市を観光した。それで私は徐々にアジアへの関心を高め、その後、アジアに長期滞在したり広く放浪に出たり、アジア論の本を出すことにもなった。航空運賃の怪が、私の人生を変えたと思う。

今でも、ANAをはじめ多くの航空会社がアジアまで行けば安くなるフライトを飛ばしており、調べてみる価値がある。しかし、それにしても、半額になるマニラ行きほどおいしいルートはない。私が調べた限りでは、香港まで行くのがそれに次いで割安になっていた。例えば上記8月1日現在で調べた同日程のフライトで、香港まで足を伸ばせば、ANAでもユナイテッドでも12万円程度になる。10万円になるマニラ行きほどではないが、それに次いでおいしい。

普通はアジアの航空会社が安い

日本帰国便は、通常は、中国国際航空、中国東方航空、アシアナ航空などが、北京、上海、ソウル経由で飛ばしている便が最も安い。前記日程だと最安で8万円前後からある。わざわざフィリピンまで行く便(10万円)を使う必要もないだろう。ただ、夏場はこれらの便も高くなり、私が調べた限りではフィリピンまでつなぐANA便が最も安く日本に行く方法だった。

格安航空会社(LCC)の拡大で、空の旅は益々安くなってきている。今注目しているのは関空―ホノルル間に往復3万円台の安便を飛ばしはじめたエアアジアやスクート。これらの延長、あるはそれとの接続でさらに安いニューヨーク・ルートが可能にならないか、楽しみにしている。

西回りルート

ニューヨークから日本まで往復20万円出すなら、ヘルシンキ経由など西回りの安便ルートを取り、東欧、中東、そしてインド・デリーあたりまでLCCをつなぎ、そこからバスでパミール高原を越え、中国・西域の安い鉄道網をつたい、最後は上海からの安便で日本に帰る、などというルートの方が安上がりだ。その壮大な旅を計画しながら、空の旅がどんどん安くなっては、それに向かわせる経済合理性は薄れる一方だな、とやや悲観的になる。