君はゴーファーを知っているか

インターネットとはフェイスブックのこと

多くの途上国では、インターネットとはフェイスブックのことだと思う人が半数以上を占めるという(qz.comの調査)。おそらくネットに接続したら即フェイスブックのページになって、そこでいろんな情報を取り、友達と連絡を取り合い、ネットの全機能が完結してしまうのであろう。(逆に、例えばインドネシアでは11%の人が、フェイスブックを使っているのに「インターネットは使っていない」と回答するともいう。同じ認識構造の裏返しだろう。)

私たちから見れば、これは間違ったネット理解で、特殊なネット空間を全体と取り違えている、ということになる。だが、私たちもある意味同じだ。多くの人が、インターネットとはワールドワイドウェブ(WWW)であちこち行き来するあの空間だと思っているだろう。しかし、ウェブはあくまでインターネット上の一つのアプリ世界に過ぎない。

30年近く前、米国サンフランシスコで

1990年代初頭、インターネットが初めて一般市民の前に現れたとき、サンフランシスコに居た私にとってインターネットはゴーファー(Gopher)だった。WWWはまだ出回ってなかった。Gopherと言っても今の人は知らないだろう。パソコン通信と同じように文字だけの世界でインターネットをあちこちサーフできるアプリだった(え、「パソコン通信」も知らないですか)。それでもリンクはいろいろたどれるし、文字情報だけながら、かなりの情報がネットの中から取り出せた。

サンフランシスコでは1990年代初頭、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)がアクセスノードとなる電話番号を公開していた。学生が家からアクセスするためのノードだったのだろうが、一般市民も使えた。パソコン通信と同じように電話機に「モデム」をつないでこの番号にアクセスして(ギャー、ピーと音がする)、インターネットを使った。接続は無料。アメリカでは通常、市内電話も無料(基本料金に込み)だから、関心あるサンフランシスコ市民は当時からインターネットの無料利用ができていたことになる。接続速度は遅かったが、リンクをたどれば、ウィーンとうなるかのようにして世界各地の情報サイトに行ってくれる。その感覚がとても新鮮で、私にとってインターネットのイメージは、この世界に広がる暗黒空間文字列だった。

そうか、もう30年近く前になるのか。

日本でインターネットはWWWとともに

当時はパソコンもグラフィック処理がうまくできず、Windowsパソコン(Windows 3.1やWindows 95だ)が出てからも、ちょっと高くて買えず、私はかなり長い間、MS-DOS機で文字ベースGopher方式インターネットを使っていた。日本の人とインターネットについて話すときも、私はGopherでの話をするので、相手はいぶかしがった。「それはパソコン通信のことじゃないの。」

日本では、インターネットが一般に広がると同時に、時代はすでにWindowsパソコンとグラフィック型WWWの世界だった。インターネットというのは要するにワールドワイド・ウェブだった。今もWWWは健在で第一線で活躍しているから、この認識は間違いという訳でもない。

しかし、実を言うと、インターネットはWWWだけじゃないんですよ。それが出てくる前からいろんな世界があったのですよ、ということだ。そして現在の途上国では、インターネットはフェイスブックのことであり、そして恐らくスマホで手の中に展開する情報空間、ということになったのだと思う。