バルト諸国をバスで

ダブリンからヘルシンキは飛行機、タリンへは船。そしてタリン以降は、移動はバスとなった。ヨーロッパは鉄道が発達していて、前回(2002年)、前々回前半(1979年)はユーレルパスで鉄道を使ったが、今回はバスだ。小回りが利くし、鉄道より人間の暮らす場所に近いところを通るので、いろいろ見れて楽しい。(鉄道は、駅近くはともかく、路線に沿って人が住んでも全く便利でない。道路ならどこでも路線上に住めば便利だ。だから、列車よりバスからの方が人間生活の光景をよく見られることになる。)

大陸を覆う森林

エストニアのタリンからラトビアのリーガまで、まわりは森林地帯だった。2車線のアスファルト道路が平原の森の中をずっと続く。白樺と、杉かヒノキのような針葉樹がうっそうと繁り、空に向かってまっすぐ立つ。こんな森林が内陸のロシア平原、さらにシベリアにまで続くのか、と想像できた。

所々、製材所のようなところも見た。平原植林なのかも知れない。

曇天

空は相変わらず曇って暗い。ダブリンやヘルシンキと同じだ。車内は暖かいが外は寒そうだ。時々粉雪のようなものも舞った。11月下旬。幸いにもまだ雪は積もっていない。12月からは雪化粧になるというから、積雪の直前だった。化粧もいいが、旅人としてはやはり素顔をみたい。枯れた寂しい風景でも、素の姿がわかるのはありがたい。

タリンはバルト海に面しているため、粉雪や霧雨が時々やってきた。風が強く、寒かった。それに対してリーガは、サーレマー島やリーガ湾周囲の半島に一旦は遮られるからだろう、風も小雨もあまりなかった。風が強いと体感気温は10度違うという。タリンもリーガも気温はほぼ同じ(昼間で摂氏数度)だが、タリンの方がずっと寒かった。

アイルランドのダブリンに着いてから、バルト海横断時を除いて、暗い曇り空ばかりだ。ヘルシンキも、バルト諸国も、判で押したように厚い雲が垂れ込めていた。大西洋で多量の水分を含んだ大気がヨーロッパの大地を這う。さえぎる山もないアルプス以北では、暗雲が大陸奥深くまで侵入する。

ラトビアからリトアニアへ

ラトビアのリーガからリトアニアのカウナスへの移動でも、沿道の風景は同じだった。相変わらず曇天で、寒々しく、そこに平原森林が続く。しかし、やや南に来たからか、農地もある程度開けてきた。牧草地のような農場も見る。草が少し青みも帯びている。菜っ葉のような野菜畑も見た。

リーガを発つ際、ヨーロッパに来て初めて小雨が降った。本当に小雨で、傘なしで歩ける程度。ヨーロッパの雨というのはこの程度なのか。台風も集中豪雨も来ない制御しやすい自然。

リトアニア首都ビリニュス

リトアニアは、首都ビリニュスが内陸寄りなので、カウナスに行くことにした。海側に近く、ポーランドへのルート上にある。ところが、何のことはない。バスはわざわざ遠いビリニュスまで行って、そこから大廻りで引き返すようにカウナスに向かった。交通網がやはり首都を中心にできているらしい。これならビリニュスを滞在地に選んでも同じだった。

 

タリンの長距離バス・ターミナル。
針葉樹の森が続く。エストニア南部で。
知らない町を過ぎ… 
次第に牧草地なども顔を出すようになった。
リトアニアのカウナスに向かうバスは大回りして首都ビリニュスに寄った。
リトアニアでは野菜畑なども目に入った。