進路を南に:ウクライナを回避

東欧の旅。最初はずっと東のウクライナまで行こうと思っていた。肥沃な黒土地帯「チェルノーゼム」が見たい。ロシアとの紛争でクリミヤ半島と東部は危険だが、西部は大丈夫と聞いていた。しかし11月25日、ロシアが黒海でウクライナ艦艇を銃撃・拿捕する事件が起こった。両国間の危機が高まり、ウクライナ行きはやめざるを得ない。

ということにしておくが、実はその前から、目的地のマルタまではかなり遠回りになるウクライナ行きは止めよう、と思い始めていた。バルト諸国から、ずっと同じ車窓風景を見続けてきた。森と農地の平原。このままウクライナまで行っても同じだろう、と思われた。最短距離、ウィーン経由で地中海方面に向かうルートを取ることした。

「二泊三日滞在・半日移動」

ダブリン、ヘルシンキ、タリン、リーガ、カウナス、ワルシャワと「二泊三日滞在・半日移動」の定型パターンを繰り返してきた。ふらふらした放浪の旅なのに、妙に規則正しい生活をしている。日の出から行動を始めれば、半日で、主な観光名所はまわれる。あとは博物館などをゆっくり見て回る。2日目の晩に翌日のバス便を検索し、次の行先の宿を予約する。そうやって「日課としての旅」を粛々と続けてきた。

次の行先は、基本的にその街に着いてから考える。あまり先まで考えない。旅している間に、気持ちがどんどん変わってくるからだ。平原と森林が永遠に続くように思われた。だから、ウクライナ行きを止め、地中海方面に直行しよう、などと。

白樺がまだある

ワルシャワからウィーンは、半日でなく一日がかりになった。かなり南に下がった。バス内に表示される車外気温が昼間の7度から、夜になってもほぼ変わらない。これまでは夜になると零下に下がっていたのだが。夜に寒くはなるが、同時に南下して暖かくなるのでプラマイ・ゼロ、ということだろうと解釈した。

ワルシャワからウィーンまでも、これまでと同じ平原と森、そしてなだらかに起伏する農地。暗くなってから少し山がちになった。杉かヒノキのような針葉樹以外に、ここまで来ても白樺の林があるのは意外だった。

ただ、ポーランド南部で初めて紅葉を見たのは感動した。わずかに残った残骸のようなものだったが、私たちの故郷である温帯地域に近づいているということだろう。

ポーランド南部でも景色はあまり変わらず、針葉樹に混じって、白樺の木も見た。
チェコに入り、オストラヴァの街で一休み。2分だけ外に出て写真を撮ったから、これでチェコにも行ったことになる^^)