南イタリアの光を観る
12月6日、バーリを午前9時発。バスでカターニア向かった。イタリア半島東側の農村には、「まさに地中海」という景色が広がっていた。快晴で空が青く澄み、明るい太陽の下に、乾燥ぎみの野原や林、農地が続く。そしてオレンジ色のかわら屋根と白っぽい壁の家々。
地平線まで続く意外に広大な平野が広がっていた。ただ、平野でも日本の水田地帯のように真っ平らではなく、かすかに起伏して広がる。
「観光」とはよく言ったものだ。「光を観る」ものなのだな、と納得する。明るく広がる光景だからこそ美しく、感動する。田園も家も遠くの山々も皆輝いている。写真だって、腕が悪くてもそれなりものが撮れてしまう。
西岸で曇り空に
それは午前中だけだった。午後になると、バスがイタリア半島の西側に入り、曇り空になった。地形も山地が主体となる。日本の太平洋側と日本海側の天気の違いと同じで、地中海から吹いて来る北西からの海風が、半島山地にぶつかり若干の雨を降らせた後、東側に乾燥した気候をつくりだす。バルカン半島でもイタリア半島でも、地形に支配される気候をいろいろ観察することができた。
イタリア半島西の地中海域(イタリア半島、サルデーニャ島、シチリア島に囲まれている)は「チレニア海」というのだが、あまりなじみがない。アドリア海も、エーゲ海(ギリシャの東)も、明るい海のイメージで人々によく知られているだろう。古代から文明の栄えた海域だからか。イタリアの西側はそうでもなかったのか。ローマやナポリはあるが。
珍しくバスが満員
前にも書いたが、シーズンオフ時の旅行のメリットは宿もバスもがらがらなこと。バスが定員の半分以上になることはない。だが、ここ南イタリアでは、途中で、別都市(タ―ラント)発のシチリア島行きバスと一本化され満員になってしまった。なかなかしっかりしたバス会社だ。これまでは席を自由に移動していいアングルからの写真撮りに努力していたが、それができない。通路側の席をあてがわれ、観念して写真はあきらめ、人の頭越しに外の景色を眺めていた。
車内でいろんなものをがつがつ食うこともできなくなった。しかし、トイレ休憩が頻繁にあり、昼食時には外でパンを食べられた。外で食べた方が気持ちいいし、車内でぼろぼろこぼしたりしないのでよい。レストランはあるが、かなりの人が外で立って食べている。さすがだ、ちゃんと携帯食を用意している。北の国では寒くて外では食べられなかったが、南イタリアでは可能。マカロニ・スパゲッティをスプーンで容器からかき込んでいる人もいる。立ったままだ。
シチリア島へ渡る
午後3時ころ、半島部からシチリア島に渡る。多くの車、トラックといっしょに、バスごと船に乗る。乗ってから乗客は船室に移動するが、席に座るともう船は動き出していた。
30分で対岸メッシナに着き、着くとすぐ、バスもそのまま前に進み上陸。船尾が入口で、船首が出口になっているのだ。船に乗り込んだ順に車が降りられるようになっている。非常にスムーズだ。だれが考え出したのか、この車ごと乗船のroll on/roll off(RO-RO)方式。うまくできている。混雑ぎみの橋を渡るくらいの手間だ。両岸で別の乗り物を用意する必要はないし、貨物でも、クレーンでいちいち上げ下ろしをしなくてよい。時間と手間と経費の絶大な削減だ。
フィリピンでもこのRO-RO船利用で、多数の島に分かれた国土の一体化を進める政策提案がなされていた。
溶岩を吹く火山
カターニアに近づくにつれて、右手に3326メートルのエトナ山が見えてきた。富士山と同じように裾野の広い雄大な山だ。最初雲かと思ったが、山頂からの噴煙が出ている。暗くなってから赤い溶岩の噴出も確認できたのには驚いた。溶岩が噴き出るような火山を遠くから見るのは初めてだ。
いや待て、38年前私はシチリア島に来ている。そこでエトナ山も見ているはずだ。が、例のごとく、記憶にない。あの時は西部のパレルモ(シチリア最大の街)の方に行った。今回は東岸のカターニア。そこからマルタ行きの船が出る(はずだった)。
頭越しに1発試み。イオニア海が広がる。