














シャウエンが青の街になった理由 -インスタグラム!
なぜ青い街になったか、Zachary Staffordさんという人がVISA-VIS TRAVELというブログで、この問題を徹底的に究明している。「多くの人に聞き取りを行い、かなりの資料調査をおこなった」という。結果は、インスタグラム! だった。
青い街なら、インスタグラムでいい写真が撮れるので、多くの観光客が訪れる。そうすると観光収入が増える、ということだ。インスタグラムは冗談だとしても、観光客を呼び寄せるための方策だったというのは本当のようである。この地にやってきたユダヤ人が神を象徴する青色に染めた、イスラムにとっても青は神聖だった、蚊を寄せ追い返す効果がある、などいろんな説を検討し、その結果明らかになった「真の理由」だとのこと。その決定的な証拠として、シャウエンの街が青いのは決して古くからの伝統ではなく、ここ数十年に塗りだしにすぎないという。確かに別のブロガーBun氏も、30年前のシャウエンの写真を出し、昔は青くなかったことを示している。
イスラム教で神聖なのは青ではなく、むしろ緑だった。ユダヤ教というと私はまず黒ずくめの服を思い出すのだが、イスラエル国旗が青いことからも青が好まれる色であることは確かだろう。しかし、15~16世紀にイベリア半島から逃れてはきたものの、ここ数十年でモロッコにユダヤ人が増えた事実はない。むしろ戦後、新しく建国されたイスラエルにモロッコ系ユダヤ人が大量に移住し、今はあまり残っていない。第二次大戦中にナチ迫害を逃れたユダヤ人難民も行先はモロッコではなかった。青が蚊を追い払うという説には科学的根拠がない(青は水の色だから、といっても蚊は水を好む)。モロッコをはじめ地中海地域の家が白いのは太陽光線を反射し、暑さを抑えるからだが、青を含め色を付けると光を吸収しやすくなる。青は何となく涼しく感じる、という効果はあるだろうが。
「観光収入のため」では身もふたもない
「観光客と観光収入を増やすため」。そう言ってしまっては身もふたもない。せっかく青い街に魅せられてここに来た観光客たちがかわいそうだ。
しかし、世界の名所旧跡をまわって思うのだが、名所旧跡というのは、かなり霊験あらたかな場所を含めて、多かれ少なかれ現地住民のつくり出したものではないか。悪く言えば客寄せの虚構だが、私はこれは活発な起業家精神だと理解する。地域経済振興のため、自分たちの地域に人を惹きつける仕掛けを作る。その努力とそこから生まれるアイデアは尊い。近くにテトゥアンという白い街並みの有名観光地がある。しかも世界遺産だ。普通に白い街並みで売り出しても太刀打ちできない。ならば…、と考えがめぐったか。その貴重な起業家精神の歴史を調べてみたいが、残念ながら、言葉を初め私にはその能力がない。
起業家精神こそ尊い
であるならば、このシャウエンの人たちの活発な起業家精神に心を寄せ、楽しく青い街を満喫するのが筋というもの。前出ブログ氏Zachary Staffordさんも次のように言っている。「15世紀末頃にシャウエンの街を築いた人たちが、インスタグラムに思いを馳せ、どうやって観光客を呼び込むか議論していたと考えるのも楽しいじゃないか。」