セビリアと聞いて「理髪師がたくさん居るのか」と思った、ということはないにしても、ロッシーニの歌劇『セビリアの理髪師』以外で、あまり思い浮かぶことがなかった。
しかし、セビリアは、スペインの大航海時代の拠点となった街だった。現在、南北アメリカにスペイン語を話す諸国が多数あり、カリフォルニアなど米国西南諸州も元メキシコ領でスペイン文化の影響が濃厚だ。これらの巨大な文化圏をつくる元となったのがセビリアの街だ。
セビリア(人口70万)はスペイン南部、アンダルシア地方の最大都市。グアダルキビール川がアンダルシア平原をつくり、その水系上流にはアルハンブラ宮殿のグラナダや、後ウマイヤ朝の首都だったコルドバもある。グアダルキビール川は、スペインでは珍しく、外洋船が河口から80キロのセビリアまで遡航できる。当時の技術では、直接海に面した外港より、海から遡航できる河岸港の方が適していた。スペインの新大陸の探検・植民活動の中心になったのはこのセビリアだった。