オリーブの果樹園が続く
グラナダからコルドバまで3時間のバスの旅。高速道路でなく一般地方道を通った。スペインは高速道路網が完備していて、バスは普通は高速道路を通る。そうすると、鉄道沿いと同じで、何もない山の中を通りがちであまり面白くない。その点、地方道は人々の日常が見えるのでうれしい。
だが、ここの景色は単調だった。うねうねとした丘陵が続き、行けども行けどもオリーブの果樹園(というより畑)。快晴だが、少し霞がちで、くっきりした風景にはならない。コルドバに近づくにつれて緑の牧草地が増えてきた。
隣に座った黒人青年は、この草原に関心が向くようで、草地ばかりにスマホ写真を向けていた。彼の故郷、恐らくサハラ以南のアフリカには草原というのはないのだろう。
曇天のアンダルシア
セウタからアルヘシラス、英領ジブラルタルと、曇天だった。太陽がさんさんと輝くはずのアンダルシアで曇り続きか、と気落ちしていたが、マラガあたりで少し晴れてきて、グラナダは目の覚めるような快晴になった。海から遠ざかり、しかもシエラネバダ山脈に湿気が遮断されるためらしい。気象図を見ると、この辺の天気は普通に西(大西洋)の方から変わるだけでなく、地中海からの風によっても支配されているようだ。その湿気を帯びた風がシエラネバダで遮られ、グラナダ盆地あたりでは晴れる。
しかし、グラナダの澄み切った快晴は1日だけ。その後はずっと霞がかった晴れだった。アンダルシアはこんなものなのだろう、と思いながら車窓からの風景を眺めていた。
コルドバからは大平原
コルドバからセビリアへはまっ平らな平原になった。グアダルキビール川がつくる沖積平野だ。高原が支配的なスペインでは珍しい。空は、相変わらず霞がかった晴れ。前に居た米カリフォルニアの中央平原(セントラルバレー)を走っている錯覚に陥った。
セビリアからリスボンへは、まずは前と同じ平原の風景が続く。そしてウエルバ付近でポルトガルとの国境を渡った。グアディアナ川が国境になっている。むろん同じEUで国境検問はないし、風景の違いも感じない。アンダルシア(スペイン南部)からポルトガル南部に、同じような風土が続いている。乾燥した明るい大地、褐色のかわら屋根と白壁の家、オレンジやオリーブの果樹畑。しかし、最初は山地を通るからか、でこぼこで農地がほとんどない。ごろごろ石の丘陵地帯が続いた。
「大西洋岸」のポルトガル
朝セビリアを出て、昼過ぎにはバスはポルトガル内陸に深く入り込む。地中海世界は遠のく。「大西洋岸」の風土になってくる。湿気が増えてきたのを感じる。バス内の湿度は一定だが、風景の違いでそれがわかる。平地ではサバンナのような風景になった。草原(牧草地)が広がり、間隔を置いて木が生えている。羊や牛が放牧されている。さらに北上するとそれまであまり見なかった農地も広がる。スペインよりやや頻繁に川を渡る。そして川に水が流れている。低地では、水田のようなものも見た。「田植え」前で何を栽培するのかわからないが、日本の農村を思い出させる。山地ではユーカリと松の森林が多い。松が多い点は、明らかに地中海沿岸とは違っている。それと見慣れぬ木。野生のオリーブだろうか。
リスボンが近づくにつれて大平原になってきた。農地や牧場が広がる。畑が中心だ。緑が多く、ここはもうフランスなどと同じく大西洋岸のヨーロッパになっているのを感じる。半ば湿地帯化している広大なテージョ川潟湖を渡ってリスボンに着いた。