米国映画『シックス・センス』(1999年、The Sixth Sense、「第6感」の意)で、主人公が妻に「最近、時間の感覚がないんだ」と語るシーンがある。
主人公は、「幽霊が見える」という少年に寄り添う精神科医。かつて救えなかった少年が、目の前で自殺してしまう体験をもつ彼は、必死にその少年の心の中に入っていく。しかし、妻との関係は冷え切り、コミュニケーションが成立しない。
しかし、実際は彼(主人公)はすでに死んでおり、幽霊として「幽霊が見える」少年とやり取りしていたことが映画の最後に分かる。みごとなどんでん返しの映画だった。
で、実は幽霊になっていたその主人公が「最近、時間の感覚がないんだ」と妻に語るシーン。ある朝、とある異郷で目を覚ますと、この感覚になっていて、まずいと思った。
旅に出ている。毎日宿で文章を書いている。私は何をやっているのか。貧乏旅行を続ければ、年金でも何とか持つ。現実に帰ることを強制されない。いつまでもこの生活を続けられる。で、最近、時間の感覚がない。
もしかして私はすでに…、そんなどんでん返しだけは、幸いにも今のところ起こっていないようだ。