マドリードから東京、3万9000円(+旅費用決算、移住地評価)

ポルトガル、スペインに来た理由

「ヨーロッパの周辺」を回る旅。最後はスペイン、ポルトガルなどイベリア半島に来た。その理由は、一つは英領ジブラルタルやポルトガルなど、将来の老後長期滞在有力候補地を調査しておきたかったこと。もう一つはスペインのマドリードから東京まで3万9000円という安便があったこと(片道、モスクワ経由のアエロフロート便、2月段階)。

ジブラルタルは英語が公用語で有力滞在候補地の一つだ。ポルトガルは物価が安く治安がよく暖かい。日本人の間でも老後移住の有力候補地としてしばしば引き合いに出される。その調査結果については後述するとして、まず、日本への安便の件。

マドリード、パリからが安い

福岡から東京まで新幹線でいくらかかりますか。2万3000円くらいですね。それの5割増し程度(3万9000円)でスペインから東京に飛んで来れる、というんでは、これはマドリードを目指さざるを得ない。(確かパリからならもうちょっと安かった。日によっては、アムステルダム、アテネ、イスタンブールからも安い。)

残念ながら3月になってしまったのでちょっと値上がりし、しかも、わざわざモスクワ乗り継ぎ待ち12時間の切符を買ったので、4万7000円になってしまった。しかし、それでも安い。

今回の旅で航空券は、ニューヨークからダブリンまでが110ドル(12,400円)、ダブリンからヘルシンキまでが67ドル(7,700円)と安かった。帰国便も5万円以下になったので、結局、飛行機代は大したことない、という結果になった。諸都市間のバスや船での移動が、それぞれ数千円程度だったが、積もり積もってそっちの方が高くなったかも知れない。

ということで、今回の旅の出費を計算してみた。

月18万円(衣食住12万円)の旅

簡単に言うと、約4カ月の旅で総額70万円ちょっと使った。1カ月平均18万円だ。交通費(航空券、船代、バス代など)を除くと生活費(宿代、食費、施設入場料など)は月12万円だった。

上出来ではないか。日本に居てもちょっと油断すればこれくらい使ってしまう。貧乏耐久力、各種ノウハウを前提にしての話だが、ヨーロッパでも周辺を狙って旅すればこの程度でできるということだ。ということは、だいたい世界中どこでも、大した赤字をつくらず旅ができるということだろう。ますます旅人生から抜け出せなくなる。

どこが移住地として良いか

今回の旅の隠れた目的は、将来の移住地(老後の長期滞在地)はどこがいいか探ることだった。マルタあたりが一番良かったように思う。マルタは気候がよく(冬でも暖かい)、物価が安く、しかも英語が公用語だった。ヨーロッパでは英語がどこでも通じるが、公用語になっていると、政府資料、新聞雑誌記事にあたったり、取材したり深く突っ込めるという利点がある。また、マルタはEU圏内という意味で、問題関心を深め広げていける可能性もある。

英語圏としてアイルランドも期待していたが、物価が意外と高く(と言っても英仏独ほどではない)、早々と有力候補から落ちた。英領ジブラルタルも物価が高く(特に宿代)、かつ狭い所で、定住に行くような場所ではないという印象だった。

物価の安さで言うなら、今回まわった東欧、南欧諸国のかなりが当てはまるが、その中で住んでみたいと思わせるのは、スペインならグラナダ、ポルトガルのリスボン、クロアチアのスプリトやドゥブロブニク、さらに安さを狙うならモンテネグロやアルバニア、といったところか。バルト3国も物価が安く魅力ある街も多いが、なんせ寒い。

EU諸国(厳密にはシェンゲン条約国)は滞在が3カ月に限られる(6カ月内に3カ月以内の滞在)。期限が来たらEU外に出て3カ月たったらまた戻る、とする必要がある。この「一時逃避地」としてバルカン諸国は有力だし、また地中海を越えたチュニジアのチュニスなども良い。

ヨーロッパ以外の候補地

なお、ヨーロッパ以外では、昨年夏に行ったフィリピンのセブが、気候、物価、英語環境、ビザ延長可能性などの面から有力候補にあがる。英語圏という面からは、香港、シンガポール、グアムも候補にあがるが、これらはいずれも物価が高い。ミャンマーはある程度英語が通じ、かつ物価が安く、新しい民主化の課題にとりくむ国なので魅力的だが、最近のロヒンギャ抑圧情勢で気持ちが萎えた。

そして、結局、私にとっては「灯台下暗し」なのだが、アメリカが最も現実的な移住可能地として出てくる。物価が高いのは困るが、英語圏だし、何より私は米国籍だ。滞在資格的にまったく問題ない。そして息子夫婦がサンフランシスコに居たりもするので、海外逃亡暮らしをする大義名分・エクスキューズ(「彼らを支援する」)が成り立つ。日本人へのアンケートでは老後移住したい地のトップは常にアメリカが占めるらしい。そこに簡単に行けるという私の立場は恵まれているかも知れない。