ブログから本をつくる方法(電子本、印刷本)

本をつくる道楽

道楽というのはいろいろあるが、自分で本をつくるというのは、なかなかの道楽だと思う。カラオケ、将棋、旅、バスケ、卓球、マラソンまで私もかなりの道楽があるが、本づくりをその一つにしてしまっていいのか躊躇はある。が、本出版がそういう個人の趣味となる時代が来たのかとも思う。

アマゾン(KDP)他の電子本は無料で出版できる。印刷本も、5000円程度で出してくれるオンデマンド出版サービスがある。ISBN付きでアマゾン電子店頭に並ぶ。1冊からでも数千円の普通の本の価格でつくってくれるオンデマンド印刷・製本サービスもある。

ブログを書いている私は、そこから本をつくりたい欲求抗しがたく、電子本、印刷本をつくってしまう。下記にその方法を説明する。一般向けノウハウ解説というより、私が試行錯誤の末、するようになった作り方の忘備録だ。より「正しい」方法はあると思うが、とりあえずこういう風にやっている、ということを記録した。が、他の方にも参考になるのではないかと思う。

1、ブログ記事をWord文書にまとめる

ブログから電子本をつくるにはまず複数(多数)のブログ記事をWord文書にまとめる必要がある。Word文書でなくてもいいが、Wordなら使い慣れているので敷居が低いだろう。

ブログ記事を一つ一つ、Word文書に貼り付けていたら大変だ。まとめて面倒見なければならない。ここではWordPressを使ってブログを書いていることを前提にするが、ダッシュボード(管理画面)の「ツール」の「エクスポート」で特定の記事だけ選んで、エクスポートする(外部ファイルにする)。例えばキーワードが「ヨーロッパ」の記事全部、あるいは「何年何月から何年何月まで」の記事全部、などと指定してエクスポートできる。すると、それらがまとまったxmlファイルというができる。

指示に従って「エクスポートファイルをダウンロード」し、次にこのxmlファイルをフリーソフトのWordPress2docでWord文書に変換する。数十の記事をまとめて一本のWord文書にまとめてくれる(All articles in one file)のだから、こんなありがたいことはない。あっという間だ。(Wordpress2docプログラムのダウンロードがうまくいかないときがある。そういうときは、ダウンロードのボタンを単にクリックするのでなく、右クリックで「リンクのアドレスをコピー」して、別途タグのURLバーにそれを貼り付けてアクセスすればうまくいくようだ。)

2023年10月17日追記)Wordpress2docはうまくインストールできなくなったようだ(あるいは少し技術を要するようになった)。代わりにwpxslguiを使ってxmlファイルをWord文書に変換する。TransformationをWORD HTMLにしてgenerateをクリック。できた拡張子.docのファイルを.htmlに書き換えてしまい、それをWordで読み込む。

2、Word文書を整形する

できたWord文書は、いろいろ細かい所を整形する必要がある。まずは画像。できた文書の画像は「リンク表示」になっている。つまり、文書の中に画像本体は入ってなくて、元のブログ中の画像にリンクして表示されているだけ。その証拠にネット接続を切るとこの画像は表示されない。これをWord文書の中に入れる、つまり「埋め込む」。あまり使ったことないと思うが、Word2007の場合、「Officeボタン」(左上の小丸)から「配布準備」ー>「ファイルへのリンクの編集」を選び(Word 2019の場合、「ファイル]ー>[情報]ー>右下の「ファイルへのリンクの編集」)、「リンク元のファイル」をすべて選び、下の方の「文書に図を保存する」にチェックを入れて「OK」をクリックする(ただし、その前に次項に注意)。するとちょっと時間がかかるが、画像が文書に埋め込まれる。試しに別名で保存してファイルの大きさを比べてみると、前のファイルより画像分だけ大きくなっているのがわかるだろう。

ちょっと一工夫

上記操作をする前にWord文書をdocxからdocファイルに変え(つまり、docで保存し)てから上記をやると、すべての画像が文書幅にぴったり収まる。さっき作った原本ファイルでは、おそらく画像が大きく画面からはみ出しているだろうが、これで画像を自動的に整形できる(文書幅に合わせて同じ大きさに揃えられる)。なぜだかわからないが、docxだとこうならない。docだとこうなる。画像を一枚ずつ大きさを変えていくなどというのは枚数が多いととんでもない労力。ありがたい隠れ技だ。(比較的簡単に画像をすべて一定の大きさにそろえるマクロは別に解説した。)

(2023年10月17日追記)Wordpress2docの代わりにwpxslguiを使って前記の通りxmlファイルをWord文書に変換した場合、拡張子.docのwordファイルができる。これはWebレイアウト表示で出てくる(幅広図形サイズでそろててはいる)。これを印刷レイアウトの狭い図形サイズでそろえるには、画面を印刷レイアウトに変えてから一旦.docxファイルで保存し、次いで.docファイルに変えてから上記「文書に図を保存する」作業を行なえばよい。

労力の8割はWordの使い込み

電子書籍をつくると言っても、難しい仕事の8割はWordを使い込む課題だ。Wordを使っている人でも、上記の画像埋め込みなどという機能は普通あまり使わないだろう。文書を出版用に整形するためには、その他にもあまり使ってなかったWord機能をいろいろ使うことになる。実はこの辺が最大の難関だ。

長い文書を編集するためには、見出しマップの利用は必須だろう。見出しやスタイル、アウトラインレベルなどの概念にも慣れる必要がある。書式や特殊文字での検索・置換、マクロ機能などは使っているだろうか。例えば[/caption]など余分な記号・文字が入っている場合があるのでこれを一括削除する。余分な改行コードを取ったり、逆に入れたりすることも多い。見出し、小見出しも整理する。文書全体が中央揃いになって出力されてくるので、これを左揃えに変えることもお忘れなく。

リンク型目次の作成は必須

その中でも特に重要な作り込みは目次作成だ。印刷本のようにペラペラめくる一覧性がない電子書籍では、項目をクリックしてそこに飛べるような目次機能が必須だ。Wordでもそういうジャンプ型目次をつくることができる。見出し、目次などのキーワードでウェブで学ぶこと。

3、サイトにアップロードして出版

Word文書をつくってしまえば、後はアマゾンのKDPサイトにアップロードするだけ。いろいろ細かい情報を載せる必要があるし、最初は戸惑う所もあるが、基本はWord文書をアップロードすればそれでよい。簡単であっけない。

本文とは別に表紙をつくるのがちょっと大変かも知れない。何しろデザイン・センスがない。しかし、写真を主体にした表紙にすればデザイン力不足を少しごまかせる。私などは全面写真でヘボが入るスキを封じてしまう。そして、これもWordでつくり(図入りデザインをつくるWordスキル必要)、JPEGファイルに転換してアップロードするだけだ。(PowerPointでつくった方が簡単、という人も多いだろう。)

KDP出版の細かいやり方はいろんなサイトで解説されているので、ここでは省く。ただ、自分のブログから電子本をつくると、「審査したところ、Web で無料公開されているコンテンツが含まれていることが判明しました」という警告のようなメールが送られてくる。これは特に心配する必要はない。自分のブログからつくったのだからWeb上に同じコンテンツがあるのは当然。自分の著作物だからそれを本にすることに何ら問題ない。指示に従って再度手続きすれば、審査OKとなる。

4、電子本を印刷本にする

電子本を出版すればそれで出版完了だが、どうせなら、と私はそれを印刷本にもしている。電子本はどうしても読みたくない、読まない、読めないという人は居るものだ。そういう人のため印刷本にもする。いろんな方法があり、ウェブ上にもいろいろ解説があるが、私はMyISBN(デザインエッグ社)を使っている。5000円程度で出版できるオンデマンド型の印刷書籍だ。ISBNも付き、アマゾンで販売される。

印刷本は電子本以上につくり込みをきちっとしなければならない。細かいレイアウトにも手を入れる。例えば、印刷本の場合は、電子本では不要な段組みを2段程度で設定する必要も出てくる。その際に、画像の大きさを半分程度にする必要がある。画像が大量にある場合のやり方を別に記した

またまたWordとの格闘

まったくもって、ここでも課題の8割はWordの使い込みスキルだ。Wordというのは奥が深く、突っ込めば突っ込むほどわからなくなる面も多い。ウェブ上の有名なWordノウハウ解説シリーズが「Wordはなぜ思い通りにならないのか」だったりする(大変お世話になりました)。複雑になり過ぎて、細部に入るほど、あっちを立てればこっちが立たない的な様相。にわかには信じがたい動作も多い。Wordの機能をすべて使いこなせる人は、プログラムをつくった集団の個々人を含めて世界中に一人も居ないのでは、と思うこともある。いろんな要望を全部埋め込めばこうなるのだろう、と好意的に考えれば言える。

最近も、細かい紙面レイアウトを行った後に、ページ番号を入れ忘れたので入れたら、レイアウトが微妙に乱れてしまった。特定の設定ではそうなるらしい。最初からやり直すはめに。

まずは基本レイアウトを終えておく

くれぐれも、細かいレイアウトの前に、基本的な文書づくり(基本レイアウト、書式、体裁)を終わらせておくように。文書サイズ(B5、A5など)設定はもちろん、余白・とじしろ設定(印刷形式を「見開き」に、設定対象を「全文書」にするのをお忘れなく)、段組み、章ごとの改ページ入れ、見出し・小見出しのフォントサイズ設定、埋め込まれたハイパーリンクの書き出しや脚注化、ページ番号入れなど。ほとんどが電子本作成では気にしなくていい設定作業だ。印刷本の方が手間がかかる。

リンクを脚注に変える

電子書籍の特徴を生かして、文書内にハイパーリンクをたくさん埋め込んでいる場合がある。印刷本では無論それは使えない。すべて無視してしまってもよいが、できれば脚注などで正式な出典明記に変えたい。その場合に、ハイパーリンクを脚注に書き出す作業が大変だ。リンク・参照文献が多いか少ないかにもよるが、私の場合、これが印刷本化する上で最大の関門になっていると思う。マクロでいくぶんなりとも労力を軽減している

印刷本はレイアウト微調整が大変

これらすべてを設定して文書のだいたいの大きさが確定した段階で、初めてページごとのレイアウト微調整に移行する。そしてこれがやはり大仕事、というわけだ。微調整はいろいろある。大きい写真が次ページに行ってしまう場合、今のページに大きな空白が開くのを回避する策をめぐらす。表がページをまたいで切れるのを避ける。写真や表で説明だけが次ページに飛んでしまうような事態を避ける。次節の題字が前ページの最終行に来るなど醜い配置はさける。章、節、個別題字などの文字サイズを統一する。章は改ページの後、新しい節は3行開けて、など形式を整える必要もある。その他いろいろ。電子本づくりは簡単だが、印刷本づくりは実に大変だ。出版社の方々が培ってきた技能蓄積に心から尊敬の念を抱く。

なお、ここでは便宜上、電子本から印刷本をつくる、という順序で言っているが、実際上は原本文書が完成するのは双方ほぼ同時だ。印刷本づくりで細かい編集・レイアウトをすると、中身の間違いや改良点に気付くことが多い。そこで、印刷本だけでなく電子本のテキストにも手を入れることになる。だから、完成は同時。印刷本の細かいレイアウトは手間のかかる作業だが、効用もあるということだろう。

後で基本レイアウトを変えると微調整の努力がふいに

私がよくやらかす失敗は、細かいレイアウトをした後に、余白やヘッダーの変更をし、せっかくの基本レイアウトを乱してしまうことだ。例えばWordの余白というのはなかなかの曲者で、例えば上の余白を縮めて下を大きさだけ膨らませれば、レイアウトがそのまま上に移動する、と思うのが普通だろう。ところが、そうはいかない。いろんなところでレイアウトが崩れ、総ページ数まで変わってしまう。面倒な微調整を再びやり直さなければならないはめになる。総ページ数が変わるとせっかく作った表紙の背表紙幅も変更が必要になるなど影響が大きい。

レイアウト微調整の後、「余白を直す必要がある!」などと気づくと大ごと。これを避けるためにこそ、上述の通り、くれぐれも、細かいレイアウトの前に、基本的な文書づくり(書式、体裁)を終わらせておくことが大切

ウェブをさぐっても適切な解決策は見つからない。レイアウトをそのまま上に移動するとか下に移動するというのはWordでは無理らしい。PDF文書に転換(印刷)する段階で新たに余白を設定しなおすと、編集時と同じようにレイアウトが崩壊する。

やむを得ず後で書式設定を変える場合は

だが、残念ながらヘマはやらかすものだ。そのときの次善の対策は下記。

1)詳細レイアウトの後で文書サイズを変えたたくなった場合、例えばB5でなくA5にしたいとか。これは比較的簡単に解決できる。後述するFoxit Reader PDF PrinterなどでWord文書をpdf文書にする際、目的とする文書サイズを「用紙サイズの指定」欄にB5などと指定してやれば、縮小または拡大して正しい文書サイズにできる。

2)後で余白をデフォルト値より縮小拡大、あるいは文書全体を上下左右に移動させたいと思った場合。この場合は、Word文書で余白を変えるとレイアウトが崩れるので、一旦pdfファイルにしてからそれを行なう。pdfファイルにすればどう動かしても文書の形状は崩れない。

pdfにするには、Wordでのpdf保存(Microsoft Print to PDF)をはじめ、各種ソフト利用などいろいろ方法がある。

pdfファイル文書を余白調整するには、トリミング・ソフトのBrissが役立つ。最初は使いにくいが、慣れればこれほど重宝するソフトもない。小さくなった元の文書をMicrosoft Reader PDF Printerなどで再び元のサイズにつくりあげる。ソフトの印刷機能を活用する。例えばAdobe Acrobat Readerでトリムされたpdfファイルを開いていれば、「合わせる」設定にするなどいろいろ調整してMicrosoft Reader PDF Printerに「印刷」すれば適切な最終pdf文書がつくれるだろう。

その他、例えば、印刷本にするためにはWordの「印刷形式」を「見開きページ」にするという設定が必要なのだが、これも私は忘れることがある。幸いこれは後で変えてもレイアウトを崩さないようだ。また、文書内に段組み変更をたくさん入れる場合は、それを大枠やった後にページ番号を入れた方がいようだ。そうしないと、ページが混乱してくる。とにかく文書の基本的な構造をまずは設定して細部に進む心構えを。

後日追記:2021年ごろからアマゾンでもキンドル電子書籍をオンデマンドの印刷書籍(ペーパーバック)判に出版できるサービスがはじまった。廉価だし、電子書籍同様、いつでも自由に修正し新しくしていける点が素晴らしい。これを最大限活用するには、やはりWord段階で、細かいレイアウトの前に、基本的な文書づくり(書式、体裁)を終わらせておくことが大切だ。

(それにしても、アマゾンが廉価のオンデマンド印刷本出版サービスにも乗り出してくるというのは、著作者にはありがたいが、同種サービスをアマゾン連携で行っていた第三者出版業者にとっては打撃だろう。本家が直接やったら、第三者業者は立つ瀬がない。本家になびいていく著者としても気の毒に思うところがある。)

印刷本づくりの方が大変だ

電子本に比べて印刷本づくりは大変なので、それだけコストが高くなるのは当然だろう。著者側の内容執筆労力は同じだが、それを印刷・製本する労力が大変。それへの正当な代価も必要になる。私の場合、電子本と印刷本では販売価格が10倍以上の差ができる。これが現実。むべなるかな、と思っている。

しかし、出版社・雑誌社側の人から見ると、電子出版物づくりは大変だ、ということになるらしい。そういう話をよく聞く。印刷本ができている段階で、それを電子本にするのは難しく、だから電子本を安く出すなどというのはとんでもない、ましてや印刷本のおまけで電子情報を無料で付けるなどというのは言語道断、ということらしい。

なるほど、もっともだと思う。そのまま画像として電子化するならともかく、複雑に編集したレイアウトや表や写真をデジタルな電子本の体裁の中に生かすのは確かに難しいだろう。しかし、著者の側から見ると、逆だ。これまでも印刷本づくりの際、著者はワープロで電子情報をつくり、それを出版社に出していた。その電子情報にわずかな編集を加えれば、電子本はできてしまう。だから、著者側から見れば電子本づくりは非常に簡単。それに対し、そこから印刷本の体裁にするのが難しい。専門技術を用いて立派な印刷本に仕立ててくれている、と映る。

自前の単純な電子本づくりをしているということでもある。例えば表なども、エクセルでつくった簡単な表を、本文に付けて出版社に提出している。出版社はこれを本格的な表に完成させる。しかし、電子本は、自前のエクセル表をほぼそのまま使って作成する。

印刷本をつくる段階の専門技術には、著者としては最大限のリスペクトを惜しまない。これまで長い活字文化の中で築かれてきた技術を使って見栄えのする印刷本に仕上げてくれる。だから著者から見れば、印刷本こそつくるのが難しく、高度な技術が必要で、したがって高価格になるのもやむを得ない、と思う。

PowerPointで表紙づくり

本づくりノウハウに戻る。MyISBNの印刷本作製では、表紙の作り方で神経を使う。本の厚さにより、背表紙を含めた表紙のサイズを細かく設定するのだが、細かいこと、もしくは算数が苦手な私は苦労する。この表紙づくりはMyISBNの指南に従い普通はPowerPointを使うことになるが、PowerPointを使い慣れていないと、いろいろつまずく。

MyISBNの場合、カラー印刷かモノクロ印刷か一律に決めるのでなく、カラーにするページを個々に指定できる。その分コスト節約になり良心的だが、細かい指定が苦手な私はこのページ指定をよく間違う。

MyISBNは、本文・表紙をアップロードした後も、人間の目で見て不備を指摘してくれるのでありがたい。安いのに手間をかけてくれる。

MyISBNは最初の5000円程度以外コストがかからず、後は印税が入ってくるだけのありがたいシステムなのだが(売れれば!)、販売その他コストのため(読者が払う)販売価格がある程度高くなる。価格は著者が自由につけられるのだが、このコストを下回る価格は設定できない。「最低価格」が決まっている。目安は50ページ880円、100頁1300円、250ページ以上ほぼ1ページ10円、カラーは1.5倍といったところ。これ以上安くはできないし、かといってあまり高くする(著者利益増大をもくろむ)と売れなくなる。悩ましいところだ。本のサイズにかかわりなくコストは同じなので、B5など大きいサイズにしてページ数を減らすことも考える。しかし、B5はちょっとダサい。やはりA5以下でないと本という感じがしない。

5、安価な自家製本をつくる

MyISBNサイトで本文ファイルと表紙ファイルをアップロードし、税込み5,378円を振り込めば、半月程でオンデマンド型の本が出版される。ISBNが付き、アマゾンでも販売される。それで印刷本出版の課題は終了なのだが、私はさらに、自分用・身内用、あるいは名刺代わり用に、自家製本もつくっている。上記の通りMyISBN印刷本は販売価格が高くなるので(10冊以上著者が買う場合は2割引きの著者割引はある)、自分用は、別途、印刷・製本だけのサービスを利用する。

私が使っているのは「製本直送」のサイト。調べた限り一番安かった。これもオンデマンド型の印刷・製本サービスで、1冊からでもつくってくれる。MyISBNに比べると、1冊あたり価格は半分ほどになるが、ISBNは付かず、アマゾンなどでの一般販売にはならない、という違い。

順序としては、むしろ製本直送で先にサンプルを製本し、出来上がり具合を見て修正し、その後、本格的なMyISBNの出版にまわしている。実際に印刷本ができてみると、思わぬところでいろいろ直したいところが出てくるものだ。

各バージョン作成のフォーマットなど

結局私は、1冊に付き電子本1冊と印刷本2冊の計3冊をつくっていることになる。各バージョンの概要は次の通りだ。

アマゾンのKDP(電子本)

本文はWord文書、表紙はJPEGファイルでアップロードする。共にWordで作成し、表紙は文書変換サイトなどでJPEGファイルに変換している。ファイルサイズは最大 650 MB。ページ数の制限はない、というか電子書籍にはページという概念がない。

(2023年12月追記)アマゾンのKDPペーパーバック(印刷本)

本文・表紙ともにPDFファイルでアップロード。本文はWordでつくりPDF転換(PDFで保存すればよい)。表紙は、ページ数で決まるサイズに従い、PowerPointでつくり、PDFファイルに転換(保存)する。サイズは最大A4、最小は新書版よりちょっと小さい105×173mmまで。普通はB5版程度以下のサイズになると思うが(B5の本でもちょっと大きすぎる。A5程度からが適当だろう)、この場合モノクロ・カラー印刷とも最小ページ数は24ページ、 最大は828ページ(クリーム色の紙でのモノクロ印刷の場合のみ最大776ページまで)。ファイルサイズの制限は表紙が 650 MB 以下、本文の方はファイルサイズ制限は出てないが…。

MyISBN(印刷本)

本文・表紙ともにPDFファイルでアップロード。本文はWordでつくりPDF転換(PDFで保存すればよい)。表紙は、ページ数で決まるサイズに従い、PowerPointでつくり、PDFファイルに転換(保存)する。PowerPointで作成する際、Wordなどでつくった画像をJPEGファイルに転換して流し込む場合もある。1ページ目を中表紙にした後、2ページ目を白紙にする決まりがあるのを忘れがち。3ページ目から目次や本文だ。サイズは最大A4、最小は新書版よりちょっと小さい105×175mm。B5以下の場合、モノクロ印刷 799ページ以内、カラー印刷 500ページ以内。

製本直送(印刷本)

本文・表紙ともPDFファイルでアップロード。本文はWord文書でつくりPDF保存。表紙は、同社の独自オンラインソフト「ブックジェネレーター」でつくる。使いやすいソフトですぐ慣れると思う。イラストレータ、フォトショップも使えるが、できれば有料ソフトは避けたい。Wordでつくった元画像をPDF保存し、ブックジェネレーターに流し込むこともある。また、このサービスでは製本の際の紙の種類も選べる。経験では、表紙に「ラミネート・グロス加工」、本文に「ノーフォース」が適していた、というか好みだった。サイズは最大A4、最小は新書版(113x176mm)。最大500ページまで。500MB以内。料金は本文の紙質他の条件で異なるが、目安は250頁で約1500円、カラー印刷なら約2200円といったところか。

PDFファイルやJPGファイルへの変換

WordファイルをPDFファイルに変換するには、そのファイル形式で保存すればいいので簡単。ただ、私は昔からこの変換機能を無料提供していたFoxit ReaderのPDF Printerを使っている。解像度など細かい設定もできる点が優れているのではないか。Foxit Readerをインストールすると例えばWordの印刷のとき、送信先プリンタの選択の中にFoxit Reader PDF Printerが入っているので、これを選択して、A-1b 規格準拠、解像度600dpi以上などを指定する。

A4のWordファイルをB5などに縮小してpdfファイルをつくる場合は、「印刷」設定の中の拡大/縮小の「用紙サイズの指定」でB5、「プロパティ」「レイアウト」からの「用紙サイズ」をB5と指定して「印刷」する(ここの「拡大縮小」は100%のまま)。「印刷」の結果、PDFファイルがつくられる。

Word文書をJPEGなど画像ファイルに転換する機能はWordに付いていてもよさそうだが、付いてない。他のソフトや文書変換サイトを利用する。私はConvertioサイトなどを使っている。

PowerPointが使い慣れてくるにつれ、PowerPointで表紙画像をつくるということが増えてくるだろう。これの方が使いやすい。ファイル転換も、PowerPointなら簡単な保存機能で、(PDFファイルばかりでなく)JPEGなど多様な画像ファイルにも変換できる。ただし、ここでもそれなりの細かい注意が必要で、例えばPDFファイルへの変換の際、「ISO 19005-1(PDF/A)に準拠」を指定していると、文字入力枠内の「塗りたしなし」が機能しなかったりする。つまり、背景写真の上に題字の文字だけを浮かび上がらせるようにしても、変換後のPDFファイルでは、四角の白い文字入力枠面が現れてしまう。MyISBNの場合、表紙画像はPDFファイルのみに限られるので、これへの変換の際、同じ失敗を何度も繰り返してしまった。(これは「ISO 19005-1(PDF/A)に準拠」のチェックをはずせば解決。)