サンフランシスコ上空から撮ったディアブロ山。ベイブリッジの先にオークランド、イーストベイ山地があり、その先にディアブロ山。プロが撮ると、このような素晴らしい写真になる。Photo: Jitze Couperus, 2010 (Flickr, CC BY 2.0)
ディアブロ山登山ルート (詳しくは末尾)
サンフランシスコに来ても、ベイエリア(サンフランシスコ都市圏)のシンボル的存在ディアブロ山に登らないなら来たとは言えない。頂上まで車で登れるが、もちろんそれはだめ。歩いて登る。若いもんには無理だろうが、年寄りにはできるぞ。
そう勇んで8月31日、家の南の山を目指した。(実は、慣れないテニスの特訓をやって肩を亜脱臼した。上体を使うスポーツができないので、山登りをしよう、と思い立った。)
計画性がない
家を出たのが午後2時。いやしくも1000メートルを越える登山をするのに午後2時出発は遅い。計画性がない。おまけに、年金生活に入り曜日の感覚もなくなったくらいだから、時間も平気で1時間は勘違いする。山麓の町(クレイトン)まで行く週末2時間に1本のバスに遅れ、途中までしか行かないバスに。大したことはない、歩こう。というか、午後2時の出発では、山から下りるのが夜9時過ぎになり、帰りのバスはなかった。家まで1時間半を歩いた。
普通、登山はしない
いつも通り、前置きが長くなるが、私は海外放浪の旅はしても、普通、登山はしないことにしている。私の放浪の旅は朝から晩まで徹底して歩き、登山と同じようなものなのだが。
行き当たりばったりで、出たとこ勝負。しかも一旦出ればどんどん無理してとんでもないところに行ってしまう。それでも、放浪の旅ならせいぜい路頭に迷うだけだが、これが山登りだと遭難になり、命も危うくなる。だから私は登山はしない。放浪の旅だけにしている。今回珍しく山登りすることになったが、何やら最初から、危うい気配だ。
州立公園に入ってからもミッチェル渓谷路はかなり広く、四輪駆動車なら通れそうだ。「消火道」の位置づけ。山火事の際はブルドーザーなども登るようだ。カリフォルニアは山火事が多く、消火活動のためこうした道が結構奥まで入っている。この7月にもディアブロ山頂付近で1.6ヘクタールを焼く山火事があった。1977年の大火事の際は山の南面1260ヘクタールが焼きつくされた。(山火事の際の写真参照)。
星明かりで山歩き
「星明りで歩く」と言うが、不思議なもので、実際、星しか出ていないのに、白い登山道がぼんやりと浮き立つ。極細の新月はすぐ沈んでしまった。尾根線では街の灯がわずかに届くかも知れないが、谷側の道だとそれもなく、雲のない乾いた空から照り返しが来るとも思われない。しかし、かすかに道が見えるのだ。急斜面の道では足元がおぼつかなく、乾いた土や砂利が滑る。しかし、それさえ注意していればなんとか歩ける。夜空に展開する北斗七星と北極星で方向も正確にわかる。
コヨーテを怖がる
暗くなると、怖いのはコヨーテ(小型のオオカミ近縁種)だ。ディアブロ山系でも出没すると聞いた。まだ明るいうちに鹿が目の前の登山道を横切るのを見た。鹿が居るならその捕食者コヨーテも居るだろう。谷に近い藪側だと急襲されて藪に連れ込まれると思い、崖壁側を歩く。
標識のところで、スマホを点けて順路を見ようとしたとき、近くの藪でガサガサと大きな音がして動物らしきものが動いた。半ばパニックになって「わおわお」と大声を出し、スマホの明かりをかざして振り回した。
何ごとも起こらなかった。鹿だったかも知れないし、ウサギやタヌキのような動物だったかも知れない。リスのような小動物の音ではなかった。怖くなって以後はできるだけスマホの明かりを点けて進んだ。
中古のスマホを捨てないで予備に持ってきていた。これは正解で、予備バッテリーなどを持ってくるよりよほど使い勝手がよい。通信機能のある新調スマホはできるだけ使わず電池をもたせる。中古スマホで写真を撮り、時間を調べ、こうして夜道の明かりにもする。2個で何とか下山するまで文明機能を維持させた。
夜の街でもほっとする
ディアブロ山州立公園を出たのは午後9時半。すでに帰りのバスはないので、そこからさらに1時間半歩いて家に帰った。山頂から家まで直接歩いてきたことになる。往き(登り)5時間半、帰り(下り)3時間半、計9時間歩いた。
家に向かうクレイトン通りは車交通が多い。野蛮な機械が疾走するこんな環境でも、コヨーテを恐れて歩くよりはまし、と思えた。夜の山の不気味さから、犯罪もある人間の夜の街にたどり着いてほっとする私が少し悲しい。
実際の行き方
上述の通り、ディアブロ山には南からのアクセス道路を通じて山頂まで車で登れる。しかし、自分の足で登りたいという人は、紹介した通り、ミッチェル渓谷登山口(Mitchell Canyon Staging Area)から登り始めればよい。そこに行くにはコンコードの中心部からClayton Roadを約10キロ南東に行きMitchell Canyon Roadを右に折れて約2キロ進む。駐車場もある。
が、もちろん、ここは公共交通機関で行く方法を伝授しておく場だろう。その場合は、私が帰路通ったルートをとる方がバス停に近い。全体として登山行程も短くなるだろう。Donner Creek Fire Road > Meridian Ridge Road > Prospector’s Gap Road > North Peak Trail > Summit Roadと進む。
ビジターセンターもある主要口のMitchell Canyon Staging Areaでなく、マイナーな登山口Regenccy Gate Trailheadから入ることになる。
コンコードまでBART、クレイトンまで郡バス
サンフランシスコなどから行くには、湾岸高速鉄道(BART)でConcordまで行く(Wallnut Creekなどから行く方法もあるが、行程が長くなるので省略)。コンコード駅前から10番の郡バスに乗る。同じ10番でもディアブロ山に近いClayton市内まで行くバス(Clayton Library行き)と途中までしか行かないバス(Washington Boulevard行き)がある。バスが通っていく道もClayton Roadなのでいろいろ混乱しやすい。週日の場合、Clayton Library行きはほぼ1時間に1本(10番の時刻表、ルート図参照)。週末はバス番号が310に変わり、ほぼ2時間に1本になる(310番の時刻表、ルート図参照)。バスが実際にあと何分で来るかなどは、郡バス・サイトのBusTrackerで細かく調べられる。
El Molino Parkバス停から登山道
バスはMitchell Canyon Roadとの交差点でも停まるので、上記主要登山口Mitchell Canyon Staging Areaに行くには、そこから車道を約2キロ歩いていく。しかし、バスはさらに山に近いところまで行ってくれる。Clayton市内に入ると、ぐるりと街を一回りしてClayton Libraryが終点。そこで4~5分時間調整して、今度は街を回らず直接コンコードBART駅の方に帰る(つまり一方通行で市内一周するのみ)。登山するには終点まで行かず、市内に入ってから(Marsh Creek Roadに入ってから)3つ目のEl Molino Parkのバス停で降りる。そこから実質的に登山道と言える「散歩道」を約1キロ歩いて行けば州立公園入口(Regency Gate Trailhead)に着く。