自転車でサンフランシスコ湾が越えられるようになった
この日が来ることを恐れていた。しかし来てしまった。リッチモンドーサンラファエル橋が自転車で渡れるようになってしまった。2019年11月16日(土)、サンフランシスコ湾北部にかかるこの橋(以下、「RSR橋」)の歩行者・自転車道が開通した。
何を恐れる。サイクリストすべてが待ちに待った歴史的な日ではないか。サンフランシスコ(湾西)とイーストベイ(湾東)をつなぐ長大橋はこれまですべて自転車走行ができなかった(南北につなぐゴールデンゲート橋は走行可で例外)。最も基幹路となるベイブリッジは、2016年に東側半分が通れるようになったが、西半分は走行不可。このため地域の主要都市サンフランシスコ・オークランド間は、海底トンネルの地下鉄(BART)で行かざるを得なかった(列車内に自転車を持ち込める。バスやフェリーに載せる方途もある)。湾南部にかかるサンマテオ橋とダンバートン橋も、北部にかかるRSR橋も自転車不可で(地図参照)、純粋に自転車だけで行くには湾奥(サンヨッキン・サクラメント川の河口部近く)のカーキネス橋、ベニシア・マルティネス橋まで行かねばならなかった。2日がかりの旅になり、自転車による湾横断は実質的に不可能だった。
ニューヨークでは、イーストリバーやハドソン川にかかる橋のほとんどが自転車走行可能だった。サンフランシスコ湾がこれより幅広とは言っても、「グリーン」(環境保護)で定評のあるサンフランシスコ湾岸地域の橋がほぼ自転車走行不可というのは、あまりにも残念だ。
そこに、RSR橋が最初の風穴を開けた。1956年開通・8.85キロのカンチレバー式の橋。2段計6車線の橋の上部北端の車線が自転車レーンに供用された。コンクリートブロック柵で車道と隔絶され、歩行者と自転車が安全に渡れる。こんな画期的なことはない。
言い訳ができない
が、これで私はサンフランシスコまで自転車で行かない理由がなくなってしまったのだ。コンコードから3時間の山越えをして、さらにこのRSR橋を渡り、マリン郡の風光明媚な風土を通り、ゴールデンゲート橋を渡ってサンフランシスコに至る黄金ルートを自転車で行かない、行けない理由がない。計6~7時間はかかるだろう。しかし、暇な退職老人なら1日かけて行ける。往きは昼間に自転車をこいで行き、帰り(夜)は、BARTに自転車を載せて帰ってくればいい。
「いやあ、ベイブリッジが自転車通れなくてね。」
そう言っていれば、コンコードからずっと自転車でサンフランシスコに来れない正当な言い訳になっていた。が、それがもう成り立たない。RSR橋と金門橋を渡ってくれば来れるだろう。
いや、それも相当難しいから、むろんBARTに自転車を載せて来てしまってもだれも文句は言わない。しかし、自分自身を納得させられない。私のポリシーに反する。私はアメリカの車社会と全力でたたかうために来ているのではなかったか。なぜ6~7時間かけて自転車でサンフランシスコに来ない。
そうなることを恐れていた。だが、その日が来てしまった。
歴史的な日、サンフランシスコへ自転車で
この歴史的な自転車道開通の日、私が何をやるべきかはわかっていた。天命、いや運命、宿命だ。コンコードからサンフランシスコまで通しで自転車で行く。
この土曜日はちょうど、途中のエルサリート(リッチモンド近く)でテニスの練習があった。午前中の開通式典や記念ライドには行けない。コンコードからまず山越え3時間でエルサリートに行き、テニスを4時間やって午後1時にRSR橋方面に向かう。