コンコード44度に。ロサンゼルスでは49度

43度を記録した翌日の9月7日、コンコード(サンフランシスコ近郊)の気温は44度になった。簡単に今年最高を更新してくれた。騒ぐ気にもならない。はははは、と笑うことにした。ただ、ひたすら耐えるだけ。

そんな大したことない、という理由でもいくつかあげてみよう。気休めに。

気温40度台でも大したことない理由

1、乾燥している

日本のように湿度が多くない。40度台になっても木陰に入ればそれなりに凌げる。

2、夜は涼しい

内陸だから昼暑くなるかわりに、夜はある程度冷却される。昼40度台でも夜は25度以下に下がる。何とか夜寝られる。これは大きい。体力が温存できる。少なくとも熱暑とのたたかいを昼間に限定・集中できる。日本やニューヨークではこうはいかなかった。

3、幸い部屋の中がさほど暑くならない

これはたまたま私の住む1階の部屋がさほど暑くならないという個別事情だ。直射日光が当たらない1階というのはあまり暑くならないもの。外が40度台でも中は35度以下に抑えられる。2階の直射日光が当たる部屋に住んでいる人など大変なもので、とても居られず1階の居間などに退避してきている。極端には暑くならなければ、閉め切って朝の冷気を閉じ込め、外の猛暑が入り込まないようにするという戦術である程度しのげる。

4、濡れTシャツ作戦がある

本ブログで何度も説明している「部屋の中で水に濡らしたTシャツを着る」冷房作戦。これはよく効く。ついでにわざわざ靴下もはきこれも水で濡らし、頭には濡れバンドをまけば完璧。扇風機をまわすと震えるくらいだ。50度台にでもなった時にまわせば有効戦術になるだろう。

LAで49.4度

南のロサンゼルス(LA)から、6日に49.4度(華氏121度)になったという信じられないニュースが飛び込んできた。ここコンコードの44度でも信じられないくらいなのに、それより5度も高い。ロサンゼルス市どころかロサンゼルス郡でも歴代最高の記録になったという。

注意しなければならないのは、ロサンゼルス市は東京都の6割程度の広さがあるということだ。ロサンゼルス郡は首都圏1都3県の規模。市中心部がほぼ50度の猛暑になったわけではない。中心部のこの日の最高は43度。「ロサンゼルス猛暑」の象徴としてテレビでビーチの映像が流されていたが、海岸部の気温はもっと低く36度だった。49.4度になったのは、LA中心部から北西約30キロ行ったウッドランドヒルズ地区だ。そこのピアス大学構内の測候施設が午後2時頃に華氏120.9度を記録した。

懐かしい名前が出てきた。このウッドランドヒルズに私は2009年8月に行ったことがある。ロサンゼルスの北部盆地サンフェルナンド・バレーの西南端にある。ここから南のサンタモニカ山地を越えて、サンタモニカ、パロスバーデス半島をまわりロングビーチまでロサンゼルス都市圏を自転車で縦断した。なつかしい思い出だが、この起点となったウッドランドヒルズは、閑静な住宅街で、中心部にはにぎやかな商業地区もあった。あんな所が、人が住むには危険とも言える約50度になったのか。

ロサンゼルス市北部に広がる盆地、サンフェルナンド・バレー。海側サンタモニカ山地からの眺望。
そのサンフェルナンド・バレーの西南端にウッドランドヒルズの街はある。今年9月6日に49.4度を記録した。
ロサンゼルス地図。赤が49.4度を記録したウッドランド・ヒルズ。City Council of Los Angeles / Public domain, Wikipedia Commons

49.4度は信じられるか

ウッドランドヒルズを始めサンフェルナンド・バレーは、サンタモニカ山地を越えたフェーン現象が起こりやすいところにある。しかし、49.4度(華氏120.9度)は極端だ。最初私は信じられなかった。1913年に56.7度の世界最高気温を記録している内陸の砂漠地帯デスバレー(標高マイナス86m)でも、この日の最高は同じ華氏121度だった。まだまだ海(寒流が流れている)に近いウッドランドヒルズ(標高285m)がそれと同じ気温になるというのは考えにくい。光線の加減とか微粒子の混入とか何か局所的な要因が働いて例外的な気温が記録されたのではないか。例えば世界最高気温などになると、いろいろ厳格なチェックがあって、個別要因や誤測定の可能性などで公認されないことも多い。実際デスバレーの世界最高記録も、いろいろ再検討の必要が提起されている

午後2時頃に49.4度を記録したピアス大学のすぐ隣、一般市民が設置した測候施設(KCASANFE2)ではこの日の最高は42.6度(華氏108.7度、午後3時30分)だった。ウッドランドヒルズ中心部の測候施設(KCAWOODL83)ではこの日の最高は48.9度(華氏120.0度)となっているが、細かいデータを見ると、午後5時に初めて華氏110度(43度)台にのぼった後、真夜中まで110度台から下がらず午後11時53分に華氏118.7度(48.7度)を記録している。こんなのはあり得ず、暑さで計器が壊れたかのようだ。さらにその近くの測候施設(KCALOSAN387)では、午後3時56分に華氏126.0度(52.2度)という驚異的な気温を記録している。ピアス大学測候所の49.4度を追い抜いてロサンゼルス郡最高記録になってしまう(が、そういう報道はない)。

49.4度は信用できる

観測場所の条件などによって、最新の観測機器でもかなりの誤差が出るということを学ばせて頂いた。ここはやはり最も信頼できそうな測候所に頼ることにしよう。米国では空港などに設置されている測候所が最も信頼できる。アメリカ国立気象局(NWS)、連邦航空局(FAA)、国防総省(DOD)が共同で運用する「自動地上気象観測システム」(ASOS)の観測施設で、全米に約900カ所ある。ウッドランドヒルズ近辺ではバンナイズ空港(KVNY)にあり、9月6日のデータを見ると、午後3時51分に47.8度(華氏118度)を記録していた(さすがにここはプロらしく摂氏で値を出している)。ピアス大学はこのバンナイズ空港の西南西10キロにあり、49.4度を記録したとしてもおかしくない。加えて、その南のサンタモニカ山地に入り込んだトパンガ峠近辺の測候所(TPGC1)でも、午前11時57分に華氏118度(47.8度)を計測している。やはり、このサンタモニカ山地を越えた風がフェーン現象でサンフェルナンド盆地に熱波をもたらしたのだろう。

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で、ここで最後に蛇足をつけ足さなければよいものの、私はウッドランズヒルズを出て、このトパンガ峠を海からの熱風に逆らいながら自転車で越え、ロサンゼルス縦走に向かったのだった。感慨深く、なつかしい。59歳のときであった。