大谷の試合がオークランドであるので行こう、と友人から誘われた。うーむ、最初は躊躇した。私はスポーツ・オタクと言えるほどスポーツ好きだが、やるのが好きなのであって見るのはさほど興味がない。今まで一度も(観戦のために)球場に行ったことがない。野球も、少年野球をやってたくらいだし、イチロー現役時代は彼のその日の調子で私の一日の調子が決まるほどの熱の入れようだったが、自分から球場まで見に行くことはなかった。大谷さんで初めて行くのではイチローさんに申し訳が立たないではないか。
が、友人からの説得にあい敢えなく陥落した。
野球観戦と思うな、これは巨大なビアガーデンなのだ、と言う。こんな開放的な場所で、数時間ゆっくりビールを飲めるところはない。場の雰囲気も非日常的だし、ビール片手に友と語らいながら、ふと見れば下で野球もやっていて、何と今回は大谷もプレーしている。まさにショータイム。これほどのビアガーデンはめったにない、ということなのだそうだ。
いいだろう、行ってみよう。コロナ禍で閉じこもり生活が長く続いた。ビアガーデンで息を抜く機会は本当に久しぶりだ。
で、7月20日(火)、オークランド(サンフランシスコの湾を挟んだ副都心的都市)のコロシアム球場で行われたデーゲーム、ロサンゼルス・エンジェルス対オークランド・アスレティックの試合を見に行った。
いつも車を運転している友人がBART(一部地下鉄の高速郊外鉄道)で来るという。そうか、飲む覚悟で来るのだな、と思ったら、駐車場料金が高いのが理由という。私も今回は自転車はやめてBARTで行った。友人と落ち合った後、オレンジ線のコロシアム駅で降りた。駅から歩道橋を歩いてスタジアムに行ける。さすがにまだコロナの影響で客の出はさほどではないが、熱やワクチン接種チェックなどはなく、中に入れた。マスクをしている人も居るが、してない人の方が多い。
外野の上の方の席が17ドルで買えた。友人によるとネットで買うより、現地で買った方が安いチケットが手に入るという。
巨大スタジアムを見ながら飲むのは豪快な気分
アルコール類の持ち込みは禁止。売店で、1リットルはあろうかと思うような大きな缶ビール(13ドル)を買って、舌ずつみを打ち始めた。確かに素晴らしいビアガーデンだ。ゆっくり飲める。目の前には巨大な球場があり、その非日常的な空間を見ているだけで豪快な気分になる。空は青く、カリフォルニアの陽光がまぶしい。時折、ウワーと声援が起こり、何だ何だと試合の進行をさぐる。
大谷ではないがホームランも見た。ダブルプレーも見たし、セカンドの下がりざまキャッチのファインプレーも見た。なるほど実際のプロ野球とはこういうものか。
大リーグでホームランが好まれるのはよくわかる。気持ちよく飲んでいて大きいのが一発出れば大いに意気が上がる。ちょびちょびバントなんかしていてもつまらない。
皆大男ばかりなのだろうが、スタジアム高台から見下ろしていると小柄な者たちがプレーしているように見えた。
オータニさん、不振
結局、この日、オータニさんは、3打数3三振、1四球。まったく振るわなかった。せっかく私が生涯71歳にして初めて野球観戦したのに、これでは申し訳ない、と友人も恐縮していた。「野球も客商売なのにねえ」と二人でぼやき。
確かに彼はオールスターでホームランダービーに出た後、調子を崩している。よくあることらしいが。前半戦が例外的によかっただけで、後半戦は普通の人に戻った、なんてことにならないことを祈る。
9回にあと一人で大谷に回るところ、前の打者凡退で、それで終わりになってしまった。試合自体も、0対6でエンゼルスの一方的な負け。いい所がまったくなく、無念の気持ちで球場を出る他なかった。アスレチックファンの友人はまんざらでもなかったようだが。
いやいや、これは野球観戦ではない。友人とのひさしぶりの飲み会だったのだ。積もる話をたくさんできた。事情で私はもうすぐこのベイエリアを去る。友人とも最後の機会になるかも知れない。いい時間が持てた。
コンコードに帰ったのは午後5時頃。9時まで明るい今の季節だと太陽がまだ中空にある。真昼間からビアガーデンで飲んで、こんな時間ほろ酔いで地元をほっつき歩くとは、、、まあたまにはいい。