サンフランシスコからの帰国 バスでロサンゼルスへ・LAX発の方法

ビザが下りた

99歳の父が容体悪化しているのに日本のビザが下りない、というブログ記事を書いた翌日、定住ビザが下りた。「サイバースペースを通じたテレパシーが通じた」などと周囲には吹聴したが、一日待てば出たわけで、せっかちさを少し恥じる。「関係の諸官」も決められたシステムの中で最大限努力してくれたのだろう。感謝します。家族の命にかかわるので必死になり、厳しい言も書いてしまった。ご容赦。

ビザさえ下りれば、あとは怒涛の進撃だ。即ネットで翌日夜のフライト安便を取り、サンフランシスコ領事館にビザ受領に行き、その足で、空港にコロナ検査に行き、「陰性」証明をもらって「やった、これで帰れる」と興奮し、夜から翌朝にかけて瞬速で部屋を片付け、あらゆるものを断固として処分し、最後のバキュームをかけ、荷物をぼろキャリーバッグにパンパンになるまで詰め、ヒモ縛り補強し、いつもの自転車を物置にしまい、ひさしぶりの郡バスで駅まで行き、BARTに乗って1時間前に長距離バス停に着き、LAまで8時間バスに乗って、ロスのUSC前でメトロバス102番に乗ってLAX空港に着いて、荷物重量クリアして無事チェックイン完了し、コロナ関係の質問表とか、誓約書とか、いろんな書類を飛行機の中でも書いて、暗闇の中で日付変更線を越え、羽田に午前5時前に着いてからも、思い出せないくらいいろんな手続きを通り(ウェブ上にたくさん経験談が出ているのでここでは省略)、コロナ検査再び陰性で、しかし、私のスマホはAndroidバージョンが古いので追跡ソフトを入れるには新しいスマホを2週間1万5000円でレンタルしなければいかんとか、しかし、空港からホテルまでの検疫所手配の無料バスは私一人というタクシーのようなバスで、そうそう定住ビザを日本の永住権に変える不思議な手続きでも結構時間がかかり、蒲田で重い荷物ころがしてホテルにたどり着くのはきびしかったが、着いたらいいホテル、というより社宅かウィークリーマンションのようなStudioタイプのアパートで、バストイレ・テレビはもちろん、冷蔵庫からチンから炊飯器から掃除機から、何と洗濯機まで付いていて、冷房の風もやわらかく、これならここに住んでもいいな、と思えるくらいで、、、、怒涛の脱出劇で疲れたのですぐバタンキューした。折からアフガニスタンから米軍撤退の混乱のニュースが流れる中、私もその渦中から抜け出てきたかのような錯覚にとらわれてしまった。

ビザを取りに行ったサンフランシスコ総領事館近くにケーブルカー発着場がある(California Street)。いよいよSF名物ケーブルカーも運行を再開したようだ。

出国前のコロナ検査

サンフランシスコ空港のコロナ検査場は、出発チェックインカウンターの一列の臨時転用。右側のカウンターで登録・支払いをすると、左の黒いついたて前部で検査を受する。鼻に棒を通しての検査だが、以前のPCR検査の時より浅い挿入でグリグリ回すような感じだった。ついたての向こう側に待機コーナーがあり、十数人がイスに座ている。20分ほどすると検査結果が出てきた。陰性。
検査は、予約もできるが、行ってその場で登録しやってもらうこともできる。私は別の日の予約があったが、今やってくれ、と言って問題なくやれた。行先を日本と言えば、おのずと日本政府の求める検査が行われるようで、その専用書式できちんと結果が出される優れもの(つまり、自分で書式を用意する必要はない)。料金は225ドル。高いと思うが、いろいろ安い方法を探る余裕がなかった。出発前72時間内に確実にやらねばならず、失敗は許されない。外国旅行目的での検査に慣れていて確実と思われる空港での検査に頼る他なかった。詳しい情報はシスコツアーズのブログにお世話になった。

キャンセルできる便を選んでおくべきだった

サンフランシスコからイスタンブール経由のトルコ航空便羽田行きは、コロナ禍の中、フライト変更がいくらでも自由にできる措置をとっていた。これで万全と思っていたがそうではなかった。帰国が延びお盆の時期にかかってしまったので差額運賃が相当の額になっていた。元のチケットは格安の500ドル台だったが、この時には1400ドル台。このご時世でもお盆で旅行に出る人が居るのか。いや特にヨーロッパで一定数のバカンス人出があるのだろう。9月になれば500ドル台に戻るが、そこまで待てない。他に安便はあるので、この切符は捨てた。変更自由だけでなくキャンセルも自由にできる便(又はそのような付加サービス)を選ぶべきだった、と反省。

バスでロサンゼルスに行けば500ドル台の東京便

救いは、この時期でもロサンゼルスから安便があったことだ。やはり名古屋着の安便はないが、東京までならJALやANAの直行便でも片道500ドル台がある。発着時間などを考慮してANA便を購入したが、サンフランシスコからの東京直行便だと数千ドルするのにLAXからだと500ドル台だ(他の航空会社でもSFOからは最安1000ドル以上なのに、LAXからなら500ドル台)。航空運賃の不思議と言うべきか、競争の激しいLAX発着便ゆえと言うべきか。サンフランシスコからロサンゼルスまでは40ドル程度のバス便があるので(所要時間8時間)、サンフランシスコから日本に安く帰りたい人は、この「バスでロス経由」の裏技も検討したらいい。8時間のバス旅は大変だが、飛行機自体は直行便なので、インスタンブール周りやアジア諸都市経由の安便と同程度の難易度だろう。カリフォルニア内陸を見る機会、あるいは(時間がある場合は)ちょっとロサンゼルス見物、などと考えれば付加価値が付く。

LA行きバスはウェスト・オークランド駅からがお薦め

長距離バスの予約にはいつもWanderuのサイトを使う。複数のバス会社、鉄道をまとめて検索してくれるので便利だ。バス会社としてはかつての大手グレイハウンドがあるが、恐らく新興のFlixbusを使うことになるだろう。何しろ安い。サンフランシスコ圏からロサンゼルスまでこの時期で35ドルだった。Flixbusはヨーロッパの旅でよくお世話になった。もともとドイツの会社だがヨーロッパ全域でメジャーな存在になり、2018年から米国にも進出しシェアを伸ばしている。

ネット検索で便利に予約ができるのはいいが、バスのたどるルート全貌がつかみにくくなった。一応、サンフランシスコからロサンゼルス行きのFlixbusバス便は、現在のところ日に4~5本あり、出発地点はウェスト・オークランドBART駅、サンフランシスコCaltrain駅を主としているようだ。自宅がどこにあるかにもよるが、BARTで移動する人はウェスト・オークランドBART駅から乗った方が便利だろう。サンフランシスコCaltrain駅ではBART駅からかなり歩くか市バスに乗り換えなければならず、荷物が大きいと面倒だ。

最近アメリカでシェアを伸ばしている長距離バスのFlixbus。

サンノゼ経由、州際5号線の単調だが最速のバス旅

ルートはウェスト・オークランドBART駅からサンフランシスコCaltrain駅、そしてサンノゼのコンベンションセンター付近にも停まり、ロサンゼルスへの道のり途上で他にもいくつか停車した。最初、高速101号を進み、サンノゼの南、ギルロイで州道152号に入り、州際5号線に出る。この何もない原野を真っすぐ進む5号線を延々と走り、ちょうど真ん中付近のアベナルで途中休憩があり、さらに進んでロサンザルス圏に入り、再び101号線に入ってからバンヌイ、ハリウッド、ダウンタウン(Union Station)と停車し、最後にUSC(南カリフォルニア大学)近くに停まった。空港に行くには、後述の通り、このUSC(3492 S Hope St.)で降りた方がいいと思われる。乗り換えなしの市バス102番で安く空港に行ける。そのUSCが終点だと理解したのだが、不思議だ、まだ乗っている人がいる。ルート全貌は結局不明。ウェブで調べてもわからない。そう言えば、バスの行先表示には起点も「ウェスト・オークランド駅」でなく「バークレー」と出ていた。

前には、フレズノなどセントラルバレーの内陸都市を見学したかったので、鉄道を含め別ルートをとった。まっすぐロサンゼルスに行くには今回のルートが主流のようだ。

地図:OpenStreetMap, (CC BY-SA 2.0)

まずは高速101を南下

バスは、私がよくサイクリングしたサンフランシスコ半島部を南下していった。感慨深い。自転車の走れるルートにはなじんだが、高速道路には近づきもしなかった。その高速道路をバスが疾走している。高速を走るとこんな風景が見えるのか。

2年前、19年の時を経てこの地(サンフランシスコ都市圏)に戻ってきた。今回は自転車で徹底的にアメリカ自動車社会と戦うつもりだった。戦いに勝てただろうか。家賃高騰でサンフランシスコ市内には住めず、遠く離れた郊外都市コンコードに住むことになった。「アメリカの郊外都市」という新たな体験は貴重だったが、郊外で自転車は惨敗だった。何しろサンフランシスコ都心まで片道7~8時間かかる。アメリカの都市構造を舐めてはいけない。自転車主義でハチマキをしめるだけでは歯が立たたない。

高速道路からの見慣れぬ風景だが、だいたいどの辺を走っているかはわかる。バスはベイブリッジを渡るとSOMA(マーケット通りの南)地区に入り、カルトレインの駅横で停まった。そうか、いろんな場所から別のバスが出発するのでなく、一台のバスが次々にいろんな出発点に寄るのだ。

SOMAを出ると、すぐ高速101号に入る。ミッションベイの再開発地区がよく見える。次いでポトレロヒルやベイビュー・ハンターズポイント、やがて南サンフランシスコ市のバイオテク集積地域を経てサンフランシスコ国際空港。それを越えると、徐々にシリコンバレーの心臓部に入る。閑静な住宅街の彼方、湾岸の方にIT企業と思わしきビルが見える。苦労して自転車をこいだ一帯をバスはあっという間に駆け抜け、サンノゼ市内に入る。

高速101号から見たSOMA地区やミッションベイ再開発地区。左手遠方にサンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地オラクルパーク球場が見える。きょうは空がどんよりとしている。米北西部の山火事の煙がこの辺までやってきたようだ
これはサンタクララ市内のインテル本社だ(手前)。確かにインテルは高速101に沿って立地していた。
バスはサンノゼで高速を下り、ダウンタウン(中心部)に入っていく。入口付近に立つトーマス・ファロンらの騎馬像。ファロンらは米墨戦争時の1846年、この地に進軍しサンノゼ市の礎を築いたとされる。しかし、アメリカの拡張主義の象徴ともされ、この銅像をめぐっても議論がある。
「シリコンバレーの首都」を自認するサンノゼ市の中心部。左が1803年からの歴史をもつセント・ジョセフ大聖堂。右はサンノゼ美術館。バスはこの近くのコンベンションセンター前に停まり乗客を乗せた。
サンノゼからさらに南下。南北に細長い地溝帯が続き、そこが農業地帯になっている。同様に南北に長いサンフランシスコ湾もこの地溝帯の一部だったのだな、と素人理解でもわかってくる。カリフォルニアの大断層・サンアンドレアス断層がこれら一連の地溝帯を走っている。バスはギルロイで左折し州道152号に。これから前方のあの山地帯を越えることになる。
山地帯越え。山はほぼ乾き切ってところどころに灌木がある状態。カリフォルニアはどこも同じだなあ、と車窓を見ながら思う。海岸沿いの山脈、そして地溝帯(一部は湾)。そしてまた山脈があってその先にセントラルバレーの広大な盆地が開ける。私の居たコンコードもそうした地溝帯(湾)から山地帯(イーストベイヒルズ)に入ったあたりにあった。やはり山は乾き切り、枯草の草原だった。見慣れた風景がカリフォルニア中に展開しているとみえる。

さらに州際5号線を延々と南下

広大なセントラルバレー(中央平原)に出ると、そこを南北に走るカリフォルニアの大動脈、州際5号線に入る。何もない所、とにかくまっすぐどこまでも走る幹線路だ。眠くなるドライバーも居ると聞いた。単調で面白みのないルートだが、サンフランシスコとロサンゼルスを結ぶ最速・最短の道路がこれなのだ。
はるかかなたには4000メートル級のシエラネバダ山脈があるはずだが、まったく見えない。セントラルバレーは優に関東平野5~6個分はある平らな「バレー」だ。車で飛ばしてもなかなか目的地に着かない。こんなところ自転車で行くのはなおさら無理だ。
SF-LAのちょうど中間点、アベナル付近のサービスエリアで休憩があった。ドライバーも休憩しないと睡魔に襲われるだろう。このFlixbusの運転手は英語が苦手そうな中国人だった。しかし、「3時15分には戻ってきて」というのを「Three One Five, Come back!」と大声で言い、通じさせていたのは立派だ。
大動脈では、このような大型トレーラーがやたら目に付く。乗用車が多い都市部の高速道路とはまったく違う。

ロサンゼルスに入る

ロサンゼルスに着いた。バンヌイ、ハリウッド、ダウンタウン(Union Station)、USC(南カリフォルニア大学)と停まっていく。写真はハリウッド周辺。
ロサンゼルス中心部が見えてくる。
ユニオン駅に停まった後、高速110号線を通り南カリフォルニア大学(USC)周辺に向かう。ダウンタウンを左手に見る。ユニオン駅からは空港直行のフライアウェイバスが出ていて便利だが、10ドル近くかかるので、私は避けている。
USCのFIlixbus停留所(3492 S Hope St.)。高速道路(右手)の東側で、USCとは反対側にあたる。ジェファーソン大通りと35番通りの間のホープ通り(On Hope St. between Jefferson Blvd. and 36th St.)だ。寂しい所だが危険という感じでもない。
高速道路のすぐ反対側にメトロレールのJefferson/USC駅がある。これに乗るとサンタモニカ方面に行ってしまう。この地点に停まるメトロバス102番に乗ること。ロサンゼルスの交通には詳しくないが、今のところ、Flixbusで来た場合このルートを取るのが一番便利だと思っている。102番バスは乗り換えなしで空港に行けるし、終点が空港なのでわかりやすい。(ただし、終点LAX City Bus Centerは、空港ターミナルからは遠く、シャトルバスに乗り換えなければならない。メトロレールの空港駅(Aviation/LAX駅)も同様でちょっと不便だ。サンフランシスコ空港ならBARTでも郡バスでも直接ターミナルに着ける。)
上記メトロレール駅の撮影地点から右方向を振り向くと、ジェファーソン大通り。高速下のトンネルを出てきたところにメトロバスの停留所がある。Flixbusの停留所はトンネルの向こう側。バスは20分ほど待ったが、ドライバーに料金を聞くと「なしだ」というので驚いた。コロナ禍で料金を無料にしているらしい。持ってない人に渡せるようマスクも備え付けている。車内監視カメラがあり、その映像がリアルタイムでバス前部に表示されている。抑止力抜群だろう。