適正規模の街
プリシュティーナ(コソボの首都)の生活は快調だ。だんだんコソボが好きになっていくのを感じる。
まず、街がいい。プリシュティーナの人口は市20万、都市圏50万で適正規模。ブカレストやベオグラードのような180万都市は大きすぎる。かといってスチャバのような10万都市は小さすぎる。適正規模なので、あちこち歩いて行けるし、歩けば探検しがいがある程度には大きい。
そしてこのプリシュティーナの都市構造が素晴らしくて、中心に広い歩行者天国マザーテレサ通りがある。広々とした常設の歩行者専用路で、約700メートルにわたって続く。まわりにお店やカフェやレストランが並び、その北端に大統領・行政ビル、国会議事堂、そして市の「大聖堂」とも言うべきモスク、チャルシャ・ジャミーヤがある(コソボの民族は9割がアルバニア人で、宗教も9割がイスラム教)。南端近くにはマザーテレサ大聖堂(カトリック)がある。
広くて長い常設の歩行者天国というとこれはもう公園だね。多くの人が昼、夜となく歩き集い、各種パフォーマンスに興じる。名古屋にも100メートル道路という公園道路があるが、自動車道にブツ切れにされていて、連続して歩ける空間ではない。
宿から歩いてどこへでも行ける
その他、この街が好きになるいろいろ理由
1、安宿
宿が安い。食料品などスーパーで買うものはヨーロッパ一般の水準だが(コソボは通貨としてユーロを導入している)、ホテルなど宿泊施設は全般的に安い。ネット予約で検索をしているとわかる。別途書いた通り、今回入った宿は個室で1泊8.50ユーロ(1,200円)だった。1カ月居ても3万6000円で、安アパート・レベルだろう。
2、気候
比較的天気が良い。バルカン半島、東地中海地域は冬、曇りや雨が多く、コソボも基本的にはそうなのだが、それほど本格的な雨にはならない。ルーマニアのトランシルバニア山地西側やベオグラードなどと比べてそう感じる。四周が山に囲まれているからだと思われる。日本海からの雨雲、雪雲が列島山脈にぶつかって水分を落とし、太平洋側が乾燥するのと同じ仕組みだ。雨さえ降らなければ旅人の自由度は高まる。
気温は日本の本州中心部と同じくらい。12月初頭現在で、0度から10度、だいたい5度前後だ。しかし、日本のように木枯らしが吹かない。風がなければさほど寒くないものだ。さすが日本・東アジアはユーラシア巨大大陸の東端だけあって、シベリア寒気団からの季節風が尋常ではない。大陸西端のヨーロッパはそのような季節風があまりない。
3、犬害がない
実はこれが大きい。犬に攻撃されることがない。これも別稿で詳しく書いた。犬に襲われないからこそ、どこでも歩けて、市民生活の奥まで入って行ける。
4、虐げられてきた歴史
コソボは本当に昔から周辺諸民族に支配されまくってきた。つい最近もコソボ紛争で虐殺の苦しみを味わい、独立したものの、まだ完全には承認されていない。その上、コソボの9割を占めるアルバニア人は、もともとバルカン半島西部の先住民だった可能性があるとのこと。これだけの歴史があると、共感の気持ちが否が応でも高まる。これも別稿で詳しく書く。