東欧諸国の国境検問所通過、トルコはユニーク

国境検問所では、通常、バスから降りて審査窓口に並ぶ。ギリシャからブルガリアへの出入国審査。東欧で、国境通過でどういう出入国審査が行われるか。ウェブ上の体験記を見ると意外と書いてなくて、うっかり忘れてしまったなどの記述もあり、おいおい、ちゃんと書いてくれよ、などと思っていたが、かくいう私も記憶があいまいになってしまった。結局あんなのは通りさえすればよく、旅行記に入れるほどロマンチックな体験ではない、ということらしい。しかし、これじゃまずいので、ここで少しまとめておく。

ギリシャ(シェンゲン協定国)ー>ブルガリア

バスから降りて事務所に並ぶ形式。両国出入国管理窓口は隣り合わせで、2か国別々だが、いちどきに手続きを済ませられる。

ブルガリアー>ルーマニア

係官がバスの中に入ってきてパスポート類を集め、審査後、ドライバーを通じて返却。乗客は外に出る必要がない(深夜だったからかも知れない)。両国出入国審査を一括して行うようで1カ所だけで終わり。

ルーマニアー>セルビア

両国の(離れた)出入国管理事務所で別々に手続き。車での通過だったので、車に乗ったままで3人分のパスポートが見られたが、バスだったら外に出て窓口前に並ぶものと思われる。

セルビアー>コソボ

乗客はバスにとどまったまま、ドライバーにパスポート類を渡して審査。1カ所で済むが、不可解にも1回渡して返してもらい、再度渡して返してもらうという手順。セルビアはコソボを国家承認しておらず、自国の自治州と位置付けている。

コソボー>北マケドニア

両国の(離れた)検問所で別々に審査。乗客はバスから降りて窓口の前に並ぶ。

北マケドニアー>ギリシャ(シェンゲン条約国)

これが記憶があいまいになってしまった。多分両方の検問所で降りて窓口に並んだと思う。

北マケドニアからギリシャへの出国検問所。

ギリシャ(シェンゲン条約国)ー>トルコ

ギリシャ出国はバスから降り検問所に並ぶ方式(だったと思う)。トルコ入国は、これが非常にユニークだった。まず、乗客はバスから降りるが、降り口で入国審査官にパスポート類を渡す方式。渡すと、深夜だと言うのに目の前にネオンの点いた巨大な免税店があり、そこで買い物したりトイレに行ったりできる。非常に合理的でよくできたシステムだと思った。トルコ側の利益も考えられているし、乗客にとってもありがたい。しばらくしてから窓口に並び審査を受ける。そして……、

トルコ、アメリカさんにはビザを要求

入国管理事務所窓口に並んで私の番が来た。事務的にスタンプが押されて終わるだろう、と思っていると、その係官は「ビザは?」と聞く。え、そんなもの持ってないよ。すると係官はにやりと笑い、「アメリカ人はビザが必要だ。」

「え!」と私は驚いて(日本語で)声をあげてしまった。

トルコは「西側」だと思っていたし、アメリカと別にケンカしているわけではないから、当然、他の多くの国同様、ビザなしで3カ月滞在できるものと思っていた。事実、日本のパスポートを始め多くの「西側」パスポートはそうなっている。ところが米国パスポートはビザが必要だというのだ。前もっての私の調べが不十分だったのだが、とても驚いた。(私はアメリカ国籍で米国パスポートを所持している。)

国境の入国管理所でビザが取れた

ビザで冷や汗をかくのは随分久しぶりだ。私は入国できず、このまま追い返されるのか。こんな深夜にバスはないだろう。近くにホテルはあるのか。

すると、幸いなことにこういう事態に慣れているようで、ドライバーが呼ばれ、私を建物内の審査室に連れて行くよう指示があった。そこで入国時のビザ(Visa on Arrival)が発給されるらしい。何やら暗い建物を右往左往した後、やっと審査室にたどり着き、そこでビザ・クーポンが私のパスポートに貼られた。発給料は25ユーロ。トルコリラでなくユーロで請求するところもすごい(実際、入国時にはトルコ通貨など持っていないが)

トルコ、やるじゃないか。ウクライナ問題やフィンランド・スエーデンNATO加盟問題などでも、ロシアに同調はしないが「西側」にも簡単には迎合しないなかなかしたたかな対応をしているトルコだ。ビザでも、天下のアメリカさんを向こうに回して冷や飯を食わせてくれる。乗客の中でビザがなくてトラブったのは米国籍の私だけだった。

米加豪に厳しい

後で調べると、トルコが3ヵ月などビザなし滞在を認めているのは、まずヨーロッパの国すべて。ロシアさえ2カ月まではビザなしで滞在を認めている。その他、アジアでは日本、韓国、マレーシア、タイ、モンゴル、イランなど(だから日本国籍者はトルコ入国に何の問題もない)。中南米のほとんどの国に対してもビザなし滞在を認めている。なのに、主要先進諸国としては米、加、豪にビザを求めている(ただし、オンライン発給のe-Visa)。中国とほぼ同じ待遇なのだ。やるじゃないか、トルコ。自国民入国に厳しくしている米加豪への仕返しか。

米国人の場合、E-Visa発給料金は105.5ドルだ(180日以内90日までの数次ビザ。至急の場合39ドル、大至急の場合59ドル追加)。1万円以上払うというのは大変な出費だ。

国境でビザを取れば料金は4分の1?

はて、それだけ調べて気がついた。私が国境でVisa on Arrivalを発給してもらったときに払ったのは25ユーロだった(ほぼ25ドル)。てことは、前もってビザなど用意しないで、国境で取った方が、料金が4分の1になるということか。このビザも180日以内90日までの数次ビザだと明記しており、効力は同じだ。深夜に慌てまくって右往左往し、心臓にも悪いが、その方が安くなる。うーむ、準備不足でかえって得をしたのか…。

私の友人には米国籍を取得した人が多い。彼らにとって有益なトルコ情報だと思うので、ここに記しておく。