エーゲ海に面した美しい街イズミール。「エーゲ海の真珠」とも言われる。
が、着いてすぐ、そのイメージはくずされた。何よりも大気汚染。見えない汚染、ではなく煙がたちこめてけむたい。そして石炭を焚いたような臭い。そのためだろう、咳こむ人を多く見る(決してコロナではないと思う。)
夜着いたのだが、予約した宿がなかなか見つからない。小さな路地が複雑に交差する旧市街をさまよう。訳の分からないゴミが散乱し、かなり汚れている。イスタンブールの旧市街も汚かったが、ここはそれ以上だ。途上国の気配。
自業自得
バスターミナルからバスを間違え、市内に向かうところ空港に行ってしまった(私が悪い)。混み入った旧市街を歩くときこそオフライン・グーグルマップの出番だが、あいにくこの地域をダウンロードしてくるのを忘れた(私が悪い)。翌日、いろいろイズミールの街を歩くと確かに美しいところもあるのだが、だいたい私の入る安宿というのは鉄道駅近くの古く混雑した旧市街になる(自業自得)。
が、やっと見つけた宿には満足した。清潔で大きくてベッドが3人分ある部屋。明らかに洗って乾かした形跡のあるシーツ。机もあるし、トイレシャワーはもちろん、テレビもある。しかもうつる。それで1泊1600円。
イスタンブールからある程度外食をるようになった。昭和が漂う街だと、安いと思ってしまうのだろう。実際はきれいな街とあまり変わらないかも知れないが。きょうはイスタンブールから1日中バスに乗り、食べなかったので、すぐ近くの屋台的な店に。おやじさんが素手でチャパティをいじくってつくったケバブ巻き。あまり温まってもいない。だいじょぶか。覚悟して食べるしかない。多少菌が入っているのを入れた方が胃腸が鍛えられる。しかし、うまいんだこれが。汚いものほどうまいという。このおやじさんも頻繁にせきをしている。コロナでなくて煤煙のせいだよね。
AQIは200を超えている
イスタンブールも大気汚染があったが、あそこは黒海とアラフラ海に囲まれ島のようなところだ。風もある程度あるから汚染はさほどひどくはならない。しかしイズミールの汚染度は明らかに高い。世界中の大気汚染状態がリアルタイムでわかるWorld Air Quality Index(WAQ)サイトを見ると、イズミールの空気質指数(AQI)は200を越え、紫色だ。西ヨーロッパや日本は50前後で緑か黄色。工場や車からの汚染もあるだろうが、街を回って、住民の燃やす薪がかなりの汚染源になっている気がした。薪を積んでいる家や店を多く見る。家庭の煙突から煙が出ている。それが風のない日、低層にただよう。西にエーゲ海があると言っても奥まった湾の端。東は山にふさがれている。人口400万の街で住宅からのこんな煙が出れば汚染がひどくなるのも無理がない。
イズミールは、第一次大戦とトルコ革命の前後に、ギリシャ系の人々の虐殺と追放が行われた街なので、寄ることにした。陸路でアテネに引き返すのに、イズミール、キオス島、ピレウスと、エーゲ海・海上のルートをとる。
これぞイズミール、エーゲ海の真珠
イズミール北部「バイラクリ地区」に新都心
これまでイズミールの中心部はコナク地区だった。上記紹介のほとんどはコナク地区で、観光名所もツーリストが集中するのもすべてこのコナク地区だ。しかし、その海岸プロムナードをずっと北上していくと、港湾施設地域の向こうにまったく新しい景色が開ける。上記写真のように高層ビルが林立する新ビジネス地区バイラクリがある。
今、東欧の自由市場圏内での発展、拡大する中国など対東アジア貿易などで東地中海地域の重要性が高まっている。中国がギリシャのピレウス港湾公社を買収したのもそうだが、このイズミールも重要拠点として各方面から注目を集めている。イスタンブールに次ぐトルコ第二の港湾をもち、トルコ第三の人口をかかえ、日系企業も、開発の余地が少ないイスタンブールの後釜として注目しているという。トルコはまだEUに入ってないが、22か国と関税同盟を結び「EUのルールに縛られることなく関税同盟の恩恵を享受できる」メリットがあるという。
こうした中で、イズミール市は、バイラクリ地区を新都心として開発する方針を固め、2001年に都市計画のコンペを行なった。ドイツ系建築会社の提案が採用され、詳細な都市計画がつくられた。バイラクリ地区は「行政機関ビル、観光、貿易、ビジネスのセンター」として開発され、高層ビルの建築が可能なゾーニングが指定された。すで市の司法機関はこちらに移転し、将来市政府も移転する予定という(Aslı Ceylan Öner & Burkay Pasin, “Emerging Towers in Bayraklı: Sustainability as a Branding Strategy or a Tool for Local Development?”)。