トルコの高速鉄道に乗った:イスタンブールからアンカラ

トルコの高速鉄道(YHT)。2023年4月にイスタンブールからアンカラまで乗った車両。シーメンス社製のヴェラロ(Velaro TR)。東欧諸国にはほとんど高速鉄道がないのに、トルコにはあって最高時速250キロの走行が行われている。

東欧諸国にはほとんど高速鉄道がないのに、トルコにはある。これは特筆されるべきだろう。2009年に一部区間で営業がはじまり(中国の支援が大きかったようだ)、現在ではアンカラーイスタンブール線、アンカラーコンヤ線など総延長1380キロ。将来的には4000キロまで伸ばす計画という。アンカラーイスタンブール間620キロは現在、最高時速250キロで4時間半程度で結ばれている。

高速鉄道は、線路、信号なども含めてシステム全体としてつくられるもので、単に高速走行可能な車両をもってくれば高速鉄道になるというものではない。実際、ギリシャで、安全装置も不備なところで無理にドイツ製高速列車を走らせ、今年2月28日、57人が死亡する大事故が起こっている。

ギリシャは、昨年5月にアテネーテッサロニキ間で高速鉄道の運行を開始。最高速度250キロで同区間を3時間55分で走行するスケジュールだ。今年2月の事故の際、列車の機関車は独シーメンス社製で、時速140キロ~160キロで走行していたとみられる(アテネーテッサロニキ間4時間13分スケジュール)。事故区間は時速200キロまでの走行が認められていた

トルコでも2018年12月13日に高速鉄道関連の事故が起こっている。アンカラ郊外のマルシャンディズ駅で線路点検作業中の電気機関車と正面衝突し、9人が死亡、48人が負傷した。

なお、東欧では、中国の支援でセルビアのベオグラードからハンガリーのブダペストまでの高速鉄道が計画されており、その一部ベオグラードと第二の都市ノヴィサド間75キロが2022年2月に開通している。ポーランドにもワルシャワとクラクフを結ぶ高速鉄道がある

前夜にトルコ国鉄のサイトで予約をしようとしたらできなかった。少なくとも1日以上前でないとだめなようだ。予約なしで直接駅に行ったら、簡単に買えた。623キロで248リラ(約1700円)。まあ安いのではないか。65歳以上はさらに5割引きになると聞いていたが…。イスタンブール中心部からだと、地下鉄の駅でもあるSöğütlüçeşmeが近い。列車の中も写真の通りさほど混んではいなかった。
列車は、出発するとまずゆっくりと住宅街を走行。やがて右にアルマラ海が広がる(写真)。出発して1時間半程度、イズミットに着くくらいまではローカル線と同じ時速60~70キロ程度だ。(スクリーンに速度が表示されるのでわかる。)
アルマラ海にかけられたオスマンガージー橋(イズミット湾横断橋)。2016年6月完成した主柱間長さ1,550メートルのつり橋で、当時としては世界4位。明石海峡大橋などを手掛けた日本のIHIインフラシステムが施工を請け負った。同社は第二ボスポラス橋(1988年完成)の施工にも参加している。このほか、2011年に完成したボスポラス海峡横断トンネルの施工を大成建設が請け負っている。
アルマラ海(イズミット湾)に沿って工場や港湾施設が並ぶ。
コンテナ積み下ろし港としても活発に利用されているようだ。コンテナ用のガントリークレーンも見える。
車内のモニターには政府宣伝と思われるコマーシャルが頻繁に流れていた。立派な高速鉄道や高速道路の映像が出て、その後にエルドアン大統領が胸に手を当てたポーズで出てくる。この人が国をどんどん発展させてますよ、ということだろう。日本や欧米諸国ではここまではやらないのではないか。新幹線や高速道路が立派に走る映像の後に、首相の顔が映し出される…というのはちょっと考えられない。国民から顰蹙を買うだろうし、身内からも恥ずかしいから止めてくれと言われるのではないか。まあ、日本のJRは民営化されたので国の成果とは言いにくいが。
イズミットを過ぎて山岳地帯に入る。スピードも徐々に出てきて時速100キロを超え、150キロ程度に。しかし、走りにくいところが頻繁にあるらしく、高速走行は長くは続かない。
高速道路も山を登っていく。
途中の駅で、別の高速列車とすれちがった。スペインCAF(Construcciones y Auxiliar de Ferrocarriles)社製の車両のようだ。当初はこれが主力だった。現在は前記の通りドイツ製ヴェラロを採用。トルコ独自の車両も開発中とのこと
トルコ中央部の高原地帯に入ってくる。標高は800メートル前後。広い盆地平原だ。農地も広がる。ここに来て、電車はスピードを上げ、最高速度250キロを出し始めた。
同上。
同上。風景がモンゴルや中央アジアに似ている。民家がほとんどなく広い草原となだらかな山が広がる。中央アジアの平原地帯に居たテュルク系民族がなぜアナトリア(トルコ)まで来たのかわかった気がした。乾燥したステップ平原がここまで続いている。ここから見れば、イスタンブールは湿潤な海洋気候であり「ヨーロッパ」だ。
ただし、ところどころに川が流れる。 砂漠地帯ではない。
ところどころで、在来線が並行して走る。(ヨーロッパや中国も同じだが)トルコの在来線は高速鉄道と同じ標準軌(レール間の幅1435ミリメートル)が主。高速鉄道列車が在来線にも入っていける。にもかかわらず、高速鉄道を走らせるため新しい路線を作ったようだ。
この広大なトルコ高原を時速250キロで突っ走る。実に爽快な気分だったことは認めざるを得ない。ユーラシア大陸を時速300キロで横断する鉄道ができたら、などと妄想する(計算上は丸2日で横断できることになる)。 
スクリーンのスピード表示はなぜか時速251キロになることが多かった。
徐々に、アンカラが近づいてくる。
アンカラの郊外は、山の上まで住宅がたつところに特徴がありそうだ。
アンカラ駅に着いた。巨大な舎舎だった。
アンカラ駅舎。
アンカラ駅近くの高速鉄道線路。在来線と並行している。