エルズルムまでのルートに何も期待していなかった。イスタンブールまで同じルートで帰るのは能がないのでエルズルム回りで行ってみようか、と思っただけ。粛々と通過していくだけと思っていた。しかし、ホパからの山岳景観はすさまじく、衝撃を受けるほどだった。これはぜひとも書かねばならない、と時間が限られた中でこれを書きはじめた。
バトゥミからホパへ
ジョージアの黒海沿岸都市バトゥミからイスタンブールに帰る。まずは、ミニバスでトルコ領のホパまで。そこから内陸都市エルズルムまではある程度頻繁に大型バスが出ており(午後でもあるだろう)、エルズルムからは(カルスから来ている)寝台列車に乗ってアンカラまで行ける。その先は来るとき乗った高速鉄道でイスタンブールにすぐ行ける。
一度来たところを通るのは気楽だ。トルコ国境はジョージアからの買い出し客で混乱していると聞いたが、「勝手知ったる…」で余裕。宿の近くから出るミニバスでサルピの国境検問まで行く。2ラリ(100円)だ。車の検問ゲートがたくさんあるが、歩行者は右端の建物に入って出国検査、ずーと歩いてトルコの入国検査、税関検査とくぐってトルコ側に出る。来た時と同じことを繰り返し、比較的スムーズだった。
途中で車に拾われる
しかし、7キロだ。やがて荷物が肩に食い込み、あたりも次第に暗くなる。と、その時だ。1台の車が前に止まった。「乗せてやる」方式の追いはぎか。そうではない。年寄りが道端を歩いているのを見るに見かねて乗せてくれようとする60代夫婦だった。夫婦なら安心だ。おじさんは少し英語が話せた。田舎の家庭菜園で作業してきた帰りだという。デスクワークの公務員だと言った。おお、ジャパンか、なごや? 知らねえなあ、え、人口200万? エルズルムは都市圏人口80万だよ、などなど話をして、駅近くまで乗せてもらった。非常に助かった。やはりきょうは最後まで完璧だった。(しかし、何だね、『タイム』誌の2023年版「世界の最も素晴らしい場所」50選に、日本では京都とともに名古屋が選ばれているという衝撃の事実は伝わってないようだ。)
850円の宿
いや、まだ続く。宿はどこにするか。何とこの街では駅の周りに宿がまったくない。現地予約サイトの中で最安だったホテルまで行き、その隣のさらに安そうな(ネット掲載なしの)宿の戸を叩いた。125リラ(850円)だという。喜んで入った。シャワートイレ共用だが、部屋のすぐ隣にあり専用に近い。シーツは洗って…、うーむ微妙だがまあ洗ったと信じよう。シャワーも24時間ちゃんとお湯が出る。Wi-Fiも順調。OKだ。850円は今回の旅の最低記録になるだろう。