落ちたインスタントラーメンの細片というのを見たことあるでしょう。即席めんの封を切った後、お湯に入れる前に、麺の小片をちょっと床に落としてしまう、てことがありますよね。
私も宿で、そういう麺細片をちょっとだけ落としてしまってたな、と床を見下ろしていたのだ。ところが、その麺細片がごにょごにょと動く。ひえー、虫か。ウジ虫のような白っぽい虫が床を這っている。気が付くと、あっちにもこっちにも。
あわてて、その虫をチリ紙で取っていく。幸い床は白びかりするタイルだ。どこに何が居るか一目でわかる。ごにょごにょとそんなに速く動く虫でもない。すぐに全部取って、紙ごとゴミ箱に捨てた。一体何なんだ。
1回では終わらなかった。しばらくするとまた白い床に何匹か現れる。また取る。しかし、また5、6分ほどすると何匹か出てくる。取る。これを何度も、おそらく10回以上繰り返した。どこから出てくるのか。天井から落ちてくるのかと上を調べたがその気配はない。一つ小さい絨毯があって、そのまわりが多いので、絨毯を引きはがすとぞろぞろ出てきた。全部取る。絨毯をそろりと外に持っていき、たたいて、からまっているであろうブツを落とす。
しかし、その後も何度か再出現し、30分ほど虫との戦闘が続いた。幸いベッドやテーブルの上までは来ていない。床に置いたバックパックその他の荷物にも付いていないか点検する。部屋の端を見ると、また別の難敵、壁と床の境の隙間からアリがたくさん出ているのも見つけた。これは、防虫剤を買ってきて本格的に撒く以外ない。
朝だった。日が高くなるにつれて、ウジ虫もアリも徐々に消えていった。室内が明るく暖かくなったからか、人間様が起きてきて危険を感じたからかなのかはわからない。常に安宿に泊まるが、この郊外ホームステイがそんな劣悪な住居であるわけではない。それどころか、ベッドなど、新婚さんが泊まるような立派なダブルベッドで私には良すぎると感じたくらいだ。
これは、これからのアフリカの旅が思いやられるなあ、虫とのたたかになるのか、と思ったが、いや、アフリカだからと考えるのはフェアじゃない。ニューヨークの安アパートでゴキブリとの熾烈な戦いをした経験がある。ギリシャの安宿ではダニにくわれて上半身ボツボツになった。
繊細な人、いや、並みの神経の人では、貧乏世界旅行なんてできないだろうな。繊細な私の友人何人かの顔を思い浮かべ、沈痛な気持ちになった。
「最初バックパッカー宿、次いで郊外ホームステイ宿」という戦略
最初の2日、ウィントフック中心部のバックパッカー宿(ドーミトリー)に泊まり、その後郊外のホームステイ宿に入った。ケープタウンのときとほぼ同じパターンになった。料金も似ていて、ドーミトリー宿(タコ部屋)が1泊2000円前後、郊外のホームステイ個室が2500円前後だった。あまり差がないのだから、郊外宿の個室に移らない手はない。自分の空間で好きなことやれる自由は貴重だ。思索も調べ物もたっぷり時間をとって進められる。
特にウィントフックで入った郊外ホームステイは離れの1軒屋で、専用トイレ・シャワーも付いている。なかなかよい買い物だった。キッチンは本宅にしかなく使えないが、離れにも流しと電子レンジはあり、ある程度の自炊はできた。
主に個人が経営する旅行者用のホームステイやアパートは、安いが、その場所にたどり着くのが大変だ。中心部から遠い場合が多いし、着いたばかりでは交通手段もよくわからない。常時レセプションが開いているわけでもなく、管理人がおらず、鍵の暗証番号をメールで教えてもらい勝手に入る形式もある。その街に着いてすぐ入るには難しい面がある。その点、バックパッカー向けのドーミトリー宿は居住はきついが、街中心部にあり、常時開いてレセプションに人が居るので、最初はここに入るのが得策だ。
で、どこに入るのでも、入ったらすぐ、ウジ虫、ゴキブリ、蟻のたぐいをチェックすることを忘れずに、ということだ。