象を間近で見ると、「神」のような気がする。
牛や犬なら、人間と同じ程度の目線で、人と同じ世界に生きている存在だ。しかし、象は違う。別の世界に生きている。遠くを見、我々とまったく違うことを考え感じているようにみえる。いや、実は象だって、危険かも知れない我々人間に神経をとがらせ、内心恐れているのかも知れない。しかし、少なくとも外見的にそんな風情は少しも感じさせず、悠々と歩き、水を飲み、踵を返してねぐらに帰っていく。優しく見える目は実は厳しく、威厳をたたえて万物を透視している。小山のような巨体がゆっくり移動し、何を考えているのかわからない目で、私たち地上の世界を見渡す。
神々しい「神」が前を通って行った。
柵の向こうに水飲み場をつくり、野生象がやってくるよう仕向けているらしい。象にとっても水が確実に得られるというのはありがたいだろうし、住民にとっても、観光客が喜ぶのでありがたい。互いにウィンウィンというわけだ。
幸い、象はめったなことで人を攻撃しない。これが、ライオンやピューマが来るようになってはまずいだろう。あくまでも象を引き寄せることだけに限定しているようだ。