砂漠地帯の空は、夜になると、恐ろしいまで凄みを増す。全天にきらめくこの無数の数珠玉は何だ。そして天の川。とりわけ南半球の銀河は濃く、太い。本当に白い墨汁を流したように空の片側から片側に雲がかかる。
私たちはこれを銀河系宇宙だと知っているが、太古よりここで生きてきた人々はこれを何だと思っていたのか。いろいろ神話の世界をこれに当てはめても、追いつかない。それよりはるかに奥深い現実の宇宙空間が、視野全体に広がっている。
音もせず、つまり荘厳な音楽をかなでることもなく、しかし、爆音に近い宇宙のバックグランド・ミュージックを響かせ、人類が経験する最大規模の空間芸術がそこに展開する。
これを取り込みたい。この輝きなら写真に撮れるのではないか、と、スマホカメラをクリックしたが、何も写っていなかった。
そして満月になったらなったで、これがまた明るい。街灯のないサバンナを平気で歩ける。月が街灯だ。文明諸国にある道路の街灯と同じくらいに月が明るい。はっきりと影がうつる。
そして歩くとすぐ違和感。街灯の光は移動するにつれ弱まったり、また明るくなったりする。影の方向も変わる。しかし、ここでは常に同じだ。どこに行っても同じ光源から同じ強さの光が同じ角度で足元を照らす。街灯が全空間に普遍的に存在する。自分の影も常に同じ方向に生じ、私の行く手を案内してくれる。