キリマンジャロがよく見えた日

キリマンジャロが未明からよく見えた7月23日(前記事末参照)、昼になっても見え続ける気配なので、外を回り、いろんな場所のンジャロ様を撮影することにした。

これが宿から見た朝のンジャロ様(午前7時18分)。ロイトッキトクの街中にも日が照りだしている時間だ。
ロイトッキトクの街角から見るンジャロ様。
マサイの伝統的な衣装(シュカ)に身を包んだおじさんが通った。かっこいい。これがマサイの正装なのだろう。二枚のブランケットを体に巻き付ける。勇敢さを表すとして赤が好まれる。棒を持っていることも多い。武士の帯刀のようなものかと思ったが、野生動物から自分や家畜を守るためのものらしい。
ロイトッキトク町のはずれまで歩いて行った。北のナイロビの方から来ると、ここで左の「オロイトッキトク」看板を見て、同村に入ることを知る。マサイ語は詳しくないが、ロイトッキトクと言ったり、オロイトッキトクと言ったりする。どちらでもいいという。
ナイロビ・モンバサ間鉄道の通るイマリの街からこの幹線路C102号線が南東に延び、ロイトッキトクに至る。その向こうで(土道になるが)タンザニア国境につながる。きょうはまず隣町キマナに行ってみることにした。ロイトッキトクの標高は1622 mだが、キマナの標高は1278 m。裾野に沿って少し下りて行くことになる。15キロ離れているので歩き通せないが、歩いていれば乗り合いミニバスに拾われるのを期待。(これが相乗りミニバスに乗る一つのノウハウだ。街のターミナルで乗ると、客が集まるまでなかなか出発しない。歩きだして途中で拾われれば待たなくてよい。万一ミニバスが来なければ来ないで長距離散歩になってなおよい。)

ミニバス、オートバイタクシー、乗り合いマイカー

この日は、途中でミニバスやオートバイタクシーを駆使した。料金はミニバス10キロ程度で100Kシリング(120円)。オートバイタクシーはその2、3倍の目安だった。オートバイタクシーは、そこら中にあふれているが、やや危険だし、料金も高めなので、できるだけミニバスを使っている。ミニバスでなくても、乗用車で同じように客を拾っている人が居るので、それらしい車(やや年季の入った地元の人の車なら皆そうだ)が来たら手を上げて乗る。それが庶民の普通の交通手段になっている。

キマナは比較的大きな街で、市場も大きい。
同上。バナナは安くて腹にたまり、街中で食べても衛生的なので便利な食品だ(旅ノウハウNo.XXX)。食パンにバターやジャムを付ける代わりに、バナナと食べるとよく合うことに最近気づいた。触感もバターに似てる。(旅ノウハウNo.XXY)
別の市場ではヤギの品評会か売買のようなことをやっていた。
同上。ヤギをトラックで運び入れる。
同上。ヤギを会場に連れて行く。
バイクタクシーで少し戻り、アンボセリ国立公園に向かうC103号線の入り口に。ナイロビ方面から来ると、ここで右に入り、22キロ行くと同公園入口(料金徴収所)に着く。
南のロイトッキトクの方から来ると、ここで左に入ることになる。アンボセリ国立公園へのアクセス路は、キマナとロイトッキトクの間にあるということだ(どちらかというとキマナ寄り)。
このような道路がアンボセリ国立公園入口まで続く。キリマンジャロから流れ出す小川も渡る。
アフリカと言ったら、まずこのアンボセリ国立公園のイメージではないか。湖・湿地に集まる多くのゾウやキリンの野生動物、そしてその背景にキリマンジャロ、という構図がこの国立公園を特別なものにしている。私は公園内には行っていないので、クリエーティブ・コモンズ・ライセンスの写真で紹介する。 Photo: Amoghavarsha JS amoghavarsha.com, Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0
同上。アンボセリ国立公園の繁忙期入場料は70米ドル。付近の村から入口までの往復交通費も、バイクタクシーで行ってもその半分程度かかる。公園内は自分の車でまわってもよいが、自分の車がなければならない。現地で有料のガイド付きツアーに参加することも可能と思われるが、確認していない。普通はそれら全部込みのツアーに参加する。ナイロビからのツアーになる場合も多い。Photo: Lafleursauvage, Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0
国立公園アクセス路の周辺にもマサイの人々が住み、人の暮らしがある。私の場合、野生動物より人の暮らしに興味がある。そしてキリマンジャロの姿は、別にアンボセリ国立公園の中に入らなくても、周辺で十分堪能できる。
マサイの農耕地の背景にキリマンジャロ、という構図はいかがが。
同上。これは、トウモロコシ畑。
小学校の背景にキリマンジャロ。
同上。
野生ではないようだが、動物も間近に見られる。マサイは伝統的な牧畜民。自然保護地や国立公園の拡大で放牧地が限られてきている。
キリマンジャロに続く道。ではないだろう。国立公園アクセス路から近くの集落に入っていく道。
むろん、場所によって自然地域もあり、国立公園の中と同じような「サバンナの背景にキリマンジャロ」を見ることができる。これぞまさしく、アンボセリ国立公園の景観。

同上。

アンボセリ国立公園に続く道。この先の平地あたりまで歩いて引き返した。22キロの国立公園アクセス路のうち5キロ程度入っただけ。民家があるのもこの辺あたりまでらしい。

マサイのおじさんからアドバイス

引き返したきっかけは、この辺で、マサイの衣装に身を包んだおじさんからアドバイスを受けたからだ。これまでも街で何人かマサイのおじさんと話したことがあるが、いずれも威厳があり誇り高いと感じさせる雰囲気がある。「おまえ、歩いて国立公園入口まで行くつもりか」と驚かれ、3000Kシリングほどを出しオートバイタクシーで行け、とアドバイスされた。かなり遠いので、運賃もかかる、そしてここから先は民家もあまりなく野生動物が出るので危険だ、という。住民主導型の自然保護自治組織「コンサバンシー」の決まりとしても、危険なのでこの道を歩くのを禁じているという。「歩いているのが見つかるとつかまるぞ」とも。

単なる脅かしででないことは、これまでの経験からもわかった。おじさん、ありがとう、引き返すよ、と握手して別れた。

「歩いていたらつかまる」という規則は、後でウェブで調べたが、見つからなかった。車でどこどこに駐車してはダメ、公園内の走行路をはずれてはだめ、警笛を鳴らしてはダメ、常に歩行する動物優先、など車で来る場合の注意書きはたくさんあった。歩いて行くようなばか者は居ないのだろう。

片道5キロのアクセス路往復はハイキングコースとしても悪くなかった。車はあまり来ない。舗装されているので歩きやすい。乾いた土に覆われ靴が埃まみれになる自然道よりはるかに快適。そして右手(帰りの場合)にはずっとキリマンジャロの雄姿が見え続けるのだ。午前10時が過ぎた。ンジャロ様はかなり雲に隠れてきた(写真)。10時半には完全に隠れてしまった。中腹あたりが最も雲がかかるようだ。かえって麓に居た方がよく見える。ロイトッキトクあたりはちょうど雲に隠れているのだろう。空から見れば頂上付近が雲の上に顔を出していると思われる。
ロイトッキトクの宿に帰ってきた。意外と晴れていた。昼頃になってますます晴れわたったようだ。要するにきょうは天気がいい日だった、ということだ。
夕方までずっと晴れていた。夕闇迫る午後6時50分。
そして、夜通し晴れていて、翌朝も美しい山体全容を見せてくれた。写真は、翌7月24日午前6時10分、かすかに明るくなりはじめたキリマンジャロ。おお、何だこの写真は。星の明かりまで写っているぞ。どうすればこういう写真が撮れるのか。