どうやってコートを探すか
ナイロビでバスケをするにはどこに行けばいいだろうか。まず、調べるのは下記サイトだ。都市名を入力すれば、バスケコートの場所を地図上に示してくれる。
私もこれで調べて市中心部から近いコートにいろいろ行ってみたが、残念ながら学校の中など、現実的には一般人が自由に使えないコートがほとんどだった。中には空軍基地内のコートなどというのもあった。その他、グーグルマップで「basketball court」で探す方法もあり、また、「playground」で近隣公園を探し、そこに行ってみると予期せずバスケコートがあったなどというケースも。教会が敷地内にコートをもち、時間限定で一般に開放している場合もあり、私が使うことになった下記コートも結局これだった。ウェブ上の検索で見つけ、実際に行ってみて「いける」と判断し、近くの安宿に入り、通うようになった。(つまり、バスケコート先にありきで、それに近い宿をさだめた。)
お薦めコート
Parklands Baptist Church basketball court
Rhapta Road & Sports Road, Westlands, Nairobi
これは11年前の古いビデオだが、プレイの様子がわかる。
午後5時以降から使える。写真を見てわかる通り、背景に高層ビル。近代的な新しい街ウェストランズ(Westlands)近くにある。最初は教会の施設だと思えなかった。カフェやイベント会場があり(写真背景の巨大テントもイベント会場)、何かのリクリエーション施設かと思った。教会のような建物も見当たらない。しかし、よく見れば、十字架の立つ近代的な建物があった。奥に学校らしき建物も。
教会メンバーでなくとも、だれでも使える。ナイロビのどんな施設でも同じだが、ゲートに入る際セキュリティチェックがある。基本的に午後5時からだが、ゆるい警備員だとその前でも入れてくれた。バスケする若者に好意的なのを感じた(老人にも)。
水曜日と金曜日がチームに分かれてガチの試合。参加者の数も多い。それ以外の日は自由練習で、人も少ない。シュート練習や1対1など気ままにプレーする。ガチ試合の曜日についてウェブ上には異なる情報もあるが、少なくとも私が参加した2024年8月段階では水金だった。日が暮れてくるとライトがつく。何時までできるのかははっきりせず、聞いても「さあ、何時まででもいいんじゃないの」。確かに夜は施設全体の利用者も少なく、ゲートには常に警備員が数名常駐するので、何時までやっても支障なさそうに見える。が、ナイロビの街で夜遅くまで居たいと思う人はあまりいないだろう。
過密都市ナイロビ
ナイロビの人口は1989年の130万から2019年の440万人に急増した。30年間で3倍以上に増えたわけだ。都市インフラが人口拡大に追いついていない。中心部の渋滞は深刻で、バスがこの街に入ってもバス停で降ろされるまで1~2時間、のろのろ運転の車内で忍耐を強いられる。中心となる巨大なバスターミナルがあるわけではない。そこら辺の広場にバスが停まり、それでも足りなくて道路にたくさんのバス、ミニバスが並ぶ。バスを降りても市内で人とぶつからずに歩くのが難しい。これまで行った他のアフリカ大都市でも経験しなかった混雑で、ケープタウン、ダルエスサラーム、カイロなどよりひどいと感じた。
したがって市内中心部には公園、ましてや市民が自由に使えるバスケコートやサッカー広場などはない。それなのに「中心部」に広大なゴルフ場があるのに違和感をもったが(Kenya Railway Golf Course)、これも郊外だったところが急速に都市化してしまったからだろう。1958年に新設され1978年に増設された「郊外の」新空港(ジョモ・ケニヤッタ国際空港)も、今では過密都市域内部にあると感じる。
比較的大きなミニバス発着所。
バスケコート探しの旅
7月31日にナイロビに着いて、最初の4泊は市内中心部の適当な安宿に入り、バスケコートを探しまわった。上述の通り、市内中心部は運動スペースは望み薄。上記「世界のバスケコート」サイトの情報を頼りに、まず、街の東の方を歩き回る。
*アフリカでは、地面さえあればできるサッカーが主流で、バスケができるところはほとんどなかった。バスケゴールや、平らで固い地表面を造成するのは高くつくからだ。しかし、ナイロビのような大都市ならある程度やれるだろう、と探し始めた。
*バスケ・ボールもあまり売られてないが、ナイロビならスーパーチェーンのQuickMartで1200Kシリング(約1400円)低度のゴム製バスケボールを売っている。数カ月使っていると歪んでくるシロモノだが、1ヶ月以上やることはないだろうからそれで十分。その地を去る際には子どもたちにあげてきてしまう。
ナイロビの街を歩いて気付くのは学校が多いことだ。無理もない。ケニアの人口構成は日本と違ってきれいなピラミッド型をしている。つまり若年層ほど人口が多く、20歳未満が52%を占める(2015年)。同18%にすぎない日本では街を歩くと高齢者施設は目につくが、ここでは学校が異様に多く感じるということだろう。
そしてバスケコートも、こうした数多い学校の中にあるようだ。何か手続きすれば使えるのだろうが、固く門を閉じ、警備員が守っている状況では実質的に使えない。
中心部から西の地域
次いで、中心部の西側の地域もまわってみた。こちらは、ウェストランズ、アッパーヒルをはじめ新しく開発された中産階級の街だ。その中でウェストランズに隣接する冒頭Parklands Baptist Churchのバスケコートに白羽の矢を立てたわけだ。申し訳ないが、東地区より西地区の方が空気もよく、混雑も激しくなく、運動環境・住居環境ともによかった。歩いている人さえ、何だか育ちのよい中産階級に見える。
もう一つの有力候補(だったが)
この環境のよい西部地域で、もう一つ有力なバスケコート候補があった。下記のState House運動場のコートだ。ステートハウス(大統領官邸)の近くにある運動場の中に、陸上トラックやサッカーコート以外に2面のバスケコートがある。昼間から利用でき、さほど利用者も多くなく、二つのうち一面は常に空いている状態。比較的初心者が多く、気楽にやりたい場合は、こちらの方がいいかも知れない。しかも広々として気持ちよい。私は、ガチの試合もある冒頭Parklands Baptist ChurchのコートとこちらState Houseのコートをその日の気分によって使い分けていた。が、これは途中で赤ランプが点いて、利用を止めた。
まあ、ここは最初から異様な感じの運動場だった。State House運動場という名前からわかるように、珍しく公共の(国の)施設なので期待していた。しかし、行くと入口に自動小銃をもった兵士数人が警備にあたっている。何しろ大統領官邸(State House)の付属施設だ。こりゃだめだ、使えない、というのが最初の印象。
しかし、兵士たちは意外と愛想がいい。「バスケをしたいのだが」と言うと、コートの方を見て「残念ながらだれもやっていないようだな」。だれかやっているなら加わってもいいぞというような口ぶりだった。
こりゃだめと思いながらも、その後も行ってみると、付近の若者たちがバスケしているときもある。兵士たちに、バスケやりたいと言うと、簡単に中に入れてくれた。その後も、毎回、簡単に入れてくれて、兵士たちと親しく談笑するようにもなった。
広く気分のいい運動場だが、武装兵士が見回りにくるバスケコートというのはやはり異様。自動小銃というのは、当たり前だが、おもちゃのプラスチック製銃とかなり異なり、銃身は鈍く光る鋼鉄(合金?)製で、膝で折ろうにもそう簡単には折れない頑丈な武器だな、などと認識を新たにする。兵士たちは愛想がいいのだが、こんなのを抱えている人とどこまでも親しくする気にはなれない。
少し慣れてきて、そうか武装した警備があるというのは怖がることでなく、そこで安全にプレイできるということなんだな、と能天気にも思い始めたある日、その見慣れぬ上官らしき兵士がやって来た。「ここはProtected Areaだということを知っているのか。許可がなければ入れない。ましてや午後6時半過ぎはだめだ。」
だって、毎回、入口の兵士に許可をもらっているよ、などと言い返したが、もちろん抵抗する気はない。大統領官邸エリア内の運動場だ。だめならだめでスパッと出るのみ。いっしょに追い出された地元若者たちに聞くと、6時半までというのは聞いたことがあるが、許可が必要だなんてことはない、と言う。今年6月の反政府デモ(23人死亡)で議会議事堂が簡単に突破され被害を受けたらしいから警備を厳格化したか。一般人の入れない大統領官邸は、しかしケニア国民のものなのだから、ツアーくらいでなら入れるようにすべきだ、という声もある。
別に長く居てどうしても使いたいコートではないから、真相究明する気はない。面倒なところはただ使わないだけ。以後行っていないが、これまでの感じでは、今でも付近の若者・子どもたちがつれづれなるままに遊びに来ているのではないかと思う。大統領官邸敷地内といっても本格的な競技場ではない放任的なグランド。地元民がぶらっと遊びにくるのを禁じたら何の用途もなくなってしまう。それで、厳しく警備しつつも事実上利用を認めるという玉虫色の解決策が取られていたのだろう。
ケニア青年のバスケ実力
で、以後は、ガチ試合もある冒頭Parklands Baptist Churchコートの利用に一本化した。
現地でバスケをやって、ケニアの若者たちの実力はどうか。確かに運動能力、フィジカル(体力)がすごい。いや、「黒人だからバスケがうまい、体力がある」というステレオタイプを持ってはいけない。黒人でも下手な人はいるし、体力がない人もいる。アフリカではまだスポーツと言えばバスケでなくサッカーだから、バスケ技術は粗削りとも言える。
しかし、1m80、90のごつい体の彼等がぶつかり合うガチ試合を見ていると、やはり迫力が違う。黒人ばかりなのでまるでNBAの試合を見ているような気になるのは、やはり私の中のステレオタイプだろう。あんな激しいぶつかりあいの中に入ったらあばら骨の4、5本折られてしまうか、などと思わなくもない。ケニアの青年相手に小さい74歳アジア系はたたかえるか。へぼの中で最もへぼいのは自分のレベルもよく認識できないやつだという。私もその手のへぼである可能性に十分注意しなければならない。
しかし、「あきらめたらそこで試合終了ですよ」という安西先生の言葉も思い出し、ふんばって私もガチ試合に入りはじめた。ぶつからないようにするのも技のうち。それに、姿勢を低くすればぶつかっても吹っ飛ばされないということがわかってきた。私のへぼバスケでも、1試合に1~2本のシュートは決められることがわかってホッとした。