記録更新 1泊696円

ついにやった。これまでの安宿記録更新だ。アゼルバイジャン・バクーの安宿が1泊8マナト(696円)だ。これまでの記録、トルコ・エルズルムの宿、1泊850円(2022年12月)を更新した。若い頃アジアを放浪したときには数百円の宿にも泊ったかも知れないが、最近の経験としてはぶっちぎりだ。(ドーミトリーならもっと安いのもあろうが、ここではあくまで「個室」で比較している。ちなみに「ヨーロッパ最安」は、コソボのプリシュティーナで同じ2022年12月、1泊1200円を記録アフリカの旅の最安も2024年7月にケニア・ロイトッキトクで1200円だった。)

とにかく安い部屋を求めている諸君にも、ぜひ紹介・推薦しておきたい。

経緯

バクー北西部のSovet Hostelの「クラシック ダブルまたはツイン」部屋だ。トイレ・シャワー付きかどうかは予約時に不明だったが、当然にも共用だった。こんな安宿でWifiがあるというところがすごく、これが選択理由の一つになった。

アゴダ(Booking.comには出てない)で検索して最初100数十円というとんでもない料金が出たが、最終的には1泊518円での予約となった。結果的には、この料金も異なったのだが、これらでたらめさはほとんど「ネット予約サイト」事業の終焉を意味しているようなものと言える。が、「安ければいい」路線を歩む私はこれに賭けることにした。いったいどうやってこんな料金が可能なのか。恐ろしい宿かも知れないが、肝試しだ。その覚悟で、2泊を予約した。

宿に入ると、マネジャーの男は「この予約はリジェクトされた」と訳の分からないことを言う。アゴダからは正式の予約書が届いている。それがアゴダによって反故にされるようなことがあるのか。満室で泊まれないのでそう言っているのでもなく、直接カネを払えば泊めてくれるようだ。それで案内されたのがこの8マナト、696円部屋だった。予約サイトの管理がまったくでたらめになっている印象だが、それでもまあ約束に近い料金で泊まれたことにはなる。

詳細報告

そのホテルは、バクーの中心、地下鉄28 May駅(100円のエアポートバスの終点で、中央駅の近く)から地下鉄で3つ目のİnşaatçılarで降りた庶民街にあった。写真真ん前、路地対岸がその住所のはずだが…。(バクーは住所番地の表示が徹底しており、この点では場所が見つけやすかった。)
坂下から見ると。なるほど建物はある。改修中のようだが、この混乱の中で宿を運営していた。この4階建ての中の部屋は少しましで、その代わり個室で2200円くらいする(トイレシャワー別)。
私に提示された部屋は、その後ろの平屋構築物の中の部屋だった。
4階建ての裏庭はこんな状態だった。
そこからさらにこの隙間を進み、
さらに奥に進むと、左手が我が部屋。鍵は、市販の南京錠を使っている。ドアや窓はすきまだらけで、暖房装置はあるものの、冬は寒いと思われる。エアコンはないが、9月半ばとなればバクーは涼しく、必要ない。むしろ、こういう所で肌寒かったらわびしい。(バクーは海に面しているからか朝方でもさほどは寒くならない。)
ドアから見た部屋の中。何と電気が点く。コンセントもあってそこにコードを差し込むとPCに給電されるのが「脅威」だ。Wifiさえまともに使える。ベッドはへこみ汚れていたが、マネジャーがその場で、洗ってはいるらしいシーツをあてがってくれた。テーブル上のビニールクロスは埃まみれだったので、私が自分で洗った。何と共同の水道があり、3カ所あるうちその一つから確かに水が出るのだ。奥の机は汚れがひどく、使わないことにした。
共同シャワー(左)と共同トイレ(右)。シャワーはお湯が出ないと思ったが、ある時蛇口をひねると給湯器に火がつきお湯が出て感動した。小さいスイッチを押しておけばいいらしい。だが、その後も不調で出たり出なかったり。4階建て別棟のシャワーを借りる。まったく湯が出なかったタシケントの某宿よりは優れている。トイレもちゃんと水が出た。これもイスタンブールの某宿に比べると優れている。

山小屋の生活として上等

総体的に「山小屋」だ。とてもホテルとかホステルとか言えない。しかし、ろ露をしのぐだけの掘っ立て山小屋だと思うと、その中に電気が入り、共同の水道から一応透明な水か出るというのは驚異だ。なんとか生活と知的活動ができる。何よりもそれで700円弱という宿代が感動的、かつ賞賛に値する。ぜひ泊まらせて頂こう、と即断した。

残る唯一の不安は、今晩寝てダニにくわれないか、ということだが…。

この宿のあちこちに猫がたくさんいる。私のドアの前も猫の母子が寝床にして住んでいる。猫は、多数出るであろうゴキブリを食べさせるため置いているのだろう、と推測した。

私の部屋のドア前を棲家とする猫の母子。ごめんよ、しばらくの間、お邪魔するよ。

(後日記)

残念ながら8マナト(696円)は2日限りだった。さらに延長しようとしたら15マナト(1300円)になった。これが通常料金で696円は特別割引料金だったらしい。日によって異なる料金にするのはアリだが、依然よくわからない。アゴダには、相変わらず安料金(696円より安い)が出ている。直接マネジャーに申し込むのでなく、アゴダを通して追加予約にすれば安くできたのかも知れない。

まったくもってデタラメと言わざるをえないが、一応、通常料金は、4階建て棟のツイン25マナト(2200円)、同ドーミトリー8マナト(696円)、裏手平屋シングル15マナト(1300円)あたりと理解できる。だが、予約サイトで大幅な値引きをしているのだから、これを通じて予約し、証拠をもって主張すれば696円、またはそれ以下も可能ということだろう。

いや、マネージャーさんはぼーとしていい人だよ。でもちょっとルーズで、住む場所の清潔感も少しずれている(彼もこの長屋に住んでいる)。自分の基準でやってる。つまり私のような人なのだと思う。(顔も似ているように思う。)

なお、ダニ被害は、今のところ出ていない。

最安宿の、最後の夜がふけていく。

思いのほか愛着のある宿ととなった。マネジャーが印象深く、同じ長屋の住人は、話する機会はなかったが、日本で言えばネットカフェに住み続ける人たちと同じ雰囲気をもっていた。泊まっていたロシアの青年2人も快活でおもしろい男たちだった。

バクーにはもともとロシア系が多く、ウクライナ戦争以後、逃避してくる人が増えている。二人ともこの宿に長く、宿の掃除などをして宿代にしているようだ。一人は父がロシア系、母がギリシャ系と言っていた。モスクワに住んでいたがロシアの生活が嫌になり外国をまわっている。盗みが多いなど精神が荒廃しているという。ベトナムに数年住んだ経験も話してくれた。アゼルバイジャンもロシア人への締め付けを強くし、前は一旦外に出ればビザなし滞在3カ月を何回でも繰り返せたが、今では、1年に3カ月に制限されている。彼も、ビザ問題で苦労している、と言っていた。