JR時刻表からフライト予約サイトの時代へ

常々思うのだが、旅客機が音速の3倍で飛ぶより、飛行機代が3分の1になることで、地球は確実に小さくなるのではないか。

スカイスキャンナー

そのために格安航空会社(LCC)が果たす役割は大きいが、それとともに安便を探せるネット上の航空券予約サイトも重要だ。暇にまかせて一日中ネットを検索していることがある。それでも確実に数万円安いフライトを見つけられるのだから、1日のアルバイトとして十分ペイする。

私がよく使うサイトはスカイスキャナー。複数の予約サイトをまとめて探してくれるので手っ取り早い。かつ、燃油チャージ、税金などを含め実際の価格で調べてくれるので良心的だ。サイトによっては付加料金抜きの安い値段で釣り、予約する段で高額となって愕然とするところもある。それでは、長期的にはサイト(「プラットフォーム」!)の信用を失わせ、顧客を離れさせると思う。

またスカイスキャナーは、例えば「日本からアメリカまで」などという大雑把なくくりでも調べてくれる。1カ月の料金変遷を全部表示してどの日が最も安いかわかる。むろん、「往復」「片道」だけでなく、「複数都市」を経由する検索もできる。

ベトナムに住んでいた頃、ニューヨークの息子のところに行くので安便を探したら一番安いのは、中東・ヨーロッパ経由便だというのがわかった。ドイツのLCCエアベルリンとアラブ首長国連邦のエミレーツ航空とのコードシェア便。ハノイ-バンコク-ドバイ-デュッセルフドルフ-ニューヨークと地球を反対側に大回りしてニューヨークに行き、感慨深かった。中継空港で少しずつ降りながら観光すれば内容豊富な旅行になったはずだが、急用だったのでそれができなかったのが残念。

JR時刻表の時代

かつて、自称旅職人はJR/JTB/国鉄時刻表を使いこなすことが必須だった時代がある。あの細かい数字満載のページを読みこなし、どこどこに行くには何時何分の列車でここを経由して行けば明日中に着ける!などと突き止め、夜汽車に飛び乗ったりしたものだ。(あの時刻表という文化は日本独特のものだ。他の国でもないことはないが、列車の大幅遅れが当たり前という状況では乗り継ぎなど細かい計画は立てられない。)

今も時刻表は健在だろうが、この夏日本に帰って、駅内コンビニで時刻表を売ってないところがあってびっくりした。かつてはミリオンセラー書籍だったというのに。今は皆スマホの乗換・時刻表アプリで探してしまうのだろう。

そして、現代の国際旅職人にとっては航空券予約サイトを駆使することが必須となった。旅行会社にすべてお願いする時代は去り、予約サイトを徹底的に使い込んで安くて便利なフライトを探す。旅行会社の方に、経路や日にち、あれこれ面白半分に変えて値段を聞くのははばかれる。失礼だ。しかしコンピューター相手ならいくらでも気のすむまで試せる。その過程で、例えば、米国から日本に帰るのにアジア回りで行った方が安い、例えばマニラまで行けば半額になる、などを発見して有頂天になる。

大穴・小穴の当て方

「何日にどこどこ往復」を検索しただけで満足してはいけない。ついでに遠方まで行くようにしたらどうか、出発地と帰着地を微妙に変える「オープンジョー」にしたらどうか。例えば東京発着にするより、東京発・名古屋着にした方が安くなる場合がある。単なる「往復」検索ではなく「複数都市」検索にすると微妙に違う便が出てくるようだ。特に大都市など安便が多い経由地にわざわざ立ち寄るようにするとおいしい発見をすることがある。

先日、年末年始休みに日本からローマに行く人の安便を探してあげた時、「乗換3回片道40~50時間・空港夜明かし」などという安便しかない中で、複数都市めぐり検索でパリ経由を検索したら比較的楽な安便を見つけることができた。加えて関空発・名古屋着の「オープンジョー」にしたらさらに安くなった。通常時には普通の「往復」検索で最安が出てくるが、正月休みなど料金高騰期には別の法則がはたらくようだ。複数都市オープンジョーで相対的に安め・適切な便が出てきた。一般化はできない。何事もあらゆる可能性を探っているうちにそういう大穴・小穴にぶつかるということだ。

もちろん、日にちを決めないで、1カ月間の運賃推移を調べ、最安日を探すなどは基本中の基本。最安日を特定した上でそこを徹底的に攻める。出発日が同じでも帰着日を変えると数万円安くなったりすることもあるから、あらゆる可能性を追求してみるものだ。同一航空会社を接続する安便が見つからなければ、ややリスクはあるものの、異なる航空会社便を組み合わせる手段も試みる。

戦闘モード

スカイスキャナーの場合、安便を探してから個々の予約サイトに導かれることになるが、その中で、どこも「この便は売り切れました」と出てくるのに、例外的に予約できるサイトがあったりする。間違いじゃないのか、と思いながら予約・購入してちゃんと乗れたこともある。また、「どれにするかなあ、こうするかなあ」と考えあぐねながら同じ日付・経路を何度も検索するうちに、そこの料金が上がってしまうこともある。AIが「この路線は人気がある」と判断して値段を釣り上げてしまうのか、とも思ったが、これは確証がない。もちろん決断を翌朝に回したら料金が1~2万円上がっていたなどということはよくある。したがって、予約サイトに向き合う際は戦闘モードだ。良い便があったらすぐその場で予約してカネを払ってしまう。その決断が重要だ。しかし、あまりに早く決めて後で後悔することもあるので、難しい。だから緊張に満ちた戦闘モードになるということなのだが。

ご同輩バックパッカー諸氏も、日々、同様の戦闘をたたかっておられるであろう。お互い、JR時刻表のDNAを受け継ぎ、益々狭くなる地球を駆けずり回っていきたいものだ。