イマジン:自転車交通で社会がどう変わるか

岡部一明『車社会を自転車で in ロサンゼルス』( アマゾン電子出版、2015年)より

LAの自転車専用路

ロサンゼルスの「自転車高速道」。

 こんな高速道が全国津々浦々に張り巡らされたら、自転車利用はどう変わるだろう。「県内は自転車で」「5、6駅先までは自転車で」「隣町までは自転車で」。自転車のどんな可能性が実現されるか。イマジン…。



 本書は、2009年8月、米国ロサンゼルスの自転車交通事情を体験的に調査・取材した記録。「車社会の首都」ロサンゼルスに自転車交通の先進モデルを探しに行くわけはない。縦横に走る高速道路、広大に広がる郊外都市、排気ガスによるスモッグ。押しも押されもせぬ車社会の中心都市を自転車で走破したら痛快だろう、という野望で出かけた。

 しかし、意外とロサンゼルスは自転車交通整備に力を入れていた。立派な自転車専用路が約20路線つくられ、通常道路の自転車レーンなど含めると自転車に優しいルートは全長580キロ(ロサンゼルス市部のみ)。市バスでの自転車搬送、地下鉄への持ち込みが可能なので自転車の可能性が広がる。ロサンゼルス郡自転車連合(LACBC)などNPOが活発な自転車交通アドボカシーを行い、行政もロサンゼルス郡都市圏交通局自転車プログラム課をはじめ各自治体が、自転車ルート網整備、駐輪施設設置、中継の施設整備などを行っていた。

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 自転車がすべてを解決するわけではなない。車も必要だ(できれば更新エネルギー利用に変わってほしいが)。しかし、自転車の可能性は全面的に引き出されているか。

 車が便利なのも、膨大なインフラ投資が行われたからだ。街中に敷き詰められたアスファルト道路、全土をおおう高速道路網、都市面積の相当部分を占める駐車場、そして信号、交通標識からガソリンスタンド、ドライブインレストランまで。それらがなくなれば車も単なる飾りボックスだ。

 自転車にはこのようなインフラ整備が行われたか。その数百分の一の投資でいい。自転車がもつ可能性をそれなりに引き出せるのではないか。

 平らでなめらかな自転車専用道が全国に張りめぐらされたらどうか。今のように危険な自動車のわきを排気ガス吸いながら走ったり、ガチャボコの歩道を歩行者に迷惑をかけながら走ったりしなくていい。思い切り風を切って街や農村、川辺や海辺を走り、どこまでも走って行く。そうなったとき、自転車本来の力と可能性を知れるのでは。
 

バロナクリーク橋を自転車走行

マリナデルレイ(ロサンゼルス西部海岸)付近のバロナクリーク橋

(詳しくは『車社会を自転車で in ロサンゼルス』で)



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