ウォータシェッド評議会Johnson Creek Watershed Council

 「私たちはシャケが川を上ってくるの見ると胸が高鳴るんです。」とジョンソンク リーク流域評議会事務局長のミッシェル・バッサードさんが、胸がポンプのように弾むしぐさをした。「シャケは水系保護の象徴。ああ、私たちは野生 生物と水の環境を守っているのだ、という実感がもてる。だから私たちは、シャケが多くないジョンソンクリークでも、事の外シャケ遡上の回復に大きな力点を おいている。」


ミッシェル・バッサードさん

 オレゴン州には個別河川のウォーターシェッド(流域)ごとに九〇以上のウォーターシェッド評議会(Watershed Council)がつくられている。NPOだが、州法で半ば公的な役割が与えられており、流域の水系を総合的に保全する活動を行う。ジョンソン・クリーク はポートランド市の南を約三五キロにわたって流れる小河川で、南隣ミルウォーキー市付近でウィラメット川に合流する(ウィラメット川はポートランドを北に 流れワシントン州との州境を流れる大河オリンピア川に合流し太平洋に注ぐ)。

 「ジョンソンクリーク流域はオレゴン州で最も人口密度が高い水系だ。下流部はかなり都市化されているが、上流部は農村地帯で環境もかなり多様だ。 上流部では動物も多く、肥料が水系に入るなどの問題があったり、水系保護のアプローチの仕方も変わる。」

 ミルウォーキー市内の事務所は、会議室、図書室、水系回復作業用具の道具室などもあり広々している。付近を流れる小河川ジョンソン・クリークも、 この辺まで来れば何とか川らしくなり、さらさら流れる姿が見られた。


 「他のウォータシェッドでは人間の数より牛の数のが多い。私たちのウォーターシェッドは都市化が進んでいるので、住民のライフスタイルからの影響 を受ける側面が強い。」

 事務所にはバッサードさんを含め三名の有給スタッフと、若干名のパート、それにボランティアなどがつめる。ウォーターシェッド全域で水系の回復事 業を組織するとともに、水系を守る住民のライフスタイルについて教育活動を行う。

 「自治体は市域内のことしか問題にしない。近隣組合は近隣の中だけ、学校区は学校のことだけだ。ウォータシェッド評議会にはこれらの領域・境界は ない。流域という自然の境界があるだけだ。既存の行政枠を越えたウォーターシェッド全体の自然を守る。」とバッサードさんは、ウォーターシェッド評議会の 必要を説く。「ポートランド市域の境で自然の回復事業が終わるとは思わない。自然は連続し有機的につながっている。私たちはその全体を問題にし、流域の多 くの団体、機関をテーブルにつけて総合的な自然回復をはかる。」


ジョンソンクリーク河岸で自然教育の講習

 アメリカでは現在、流域を単位に総合的に自然を守っていこうとする動きが強まっている。流域保護の観点をもった団体は一説には全米で四〇〇〇以上 あり、「最も急速に成長するNPOセクターのひとつ」とも言われる[ 1]。そうした中で、オレゴン州のウォーターシェッド評議会は、単なる自然保護団体の性格に留まらず、半ば公的に規定された行政体的な位置づけで活動する システムをつくりあげた。一九九七年に制定された「シャケとウォーターシェッドのためのオレゴン計画」(Oregon Plan for Salmon and Watershed[ 2])により、各地に自主的につくられるNPOのウォーターシェッド評議会を州が公認し「カムバック・サーモン」の課題を中心に流域環境保護に取り組む体 制が成立した。州全体で九〇以上のウォーターシェッド評議会があり、州機関であるウォーター シェッド育成理事会(Oregon Watershed Enhancement Board)[ 3]がそれらを取りまとめている。ポートランド地域にもジョンソンクリークなど三つの評議会が領域を重ねている。
 

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 1 - Center for Watershed Protection, "Community Watersheds," http://www.cwp.org/Community_Watersheds.htm

 2 - 正式には、*Oregon Salmon Recovery Initiative*, passed as SB 924 and HB 3700 at Oregon Legislature.

 3 - http://www.oregonwatersheds.org/oregoncouncils/index_html


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