ラオス・タイの国境越え:フアイサーイからチェンコーンへ

                     岡部一明 2015年12月


 2015年12月23 日、ラオス・ボーケーオ県のフアイサーイ(フエイサイ、Huay Xai)からタイ・チェンラーイ県のチェンコーン(Chiang Rai)に国境を越えた。かつてメコン川の渡しで国境を越える有名な場所だったが、2013年12月、約10キロ下流に第4タイ・ラオス友好橋が完成し、 国境の越え方が変わった。以下に体験したことを記す。(国境まで歩いていくと、途中すてきな景色もみられた。)

sメコンにかかる第4友好橋_
メコンにかかる第4友好橋。現在はここで国境を通過する。

sメコンの渡し
かつては渡し舟で国境を越えた。(2011年8月、フアイサーイ側から)


 フアイサーイの町から国境の橋まで約12キロを、トクトク(乗り合いタクシー)などで移動するのが普通。しかし、私の場合、前日に長距離バスターミナル(町から東に約6キロ)近くに宿をとっていたので、そこから6キロを歩いた。

  この国内バスターミナルから約1キロ東に国際バスターミナルがあり、そこからチェンラーイ行きの国際バスが出る。それに乗るのが最も簡単な国境の越え方だ が、出発が朝早かった。午前10時ごろターミナルに行ったら、次は午後4時だと言われてしまった。待つのも芸がないので歩いてやろうと強い日差しの中、歩 き出した。

 フアイサーイ付近の地図は、下記のホボ・マップスのものが見事。
http://www.hobomaps.com/CKHXmap.html
 ホボ・マップスはラオス、タイ北部各地の地図や観光情報を丁寧にフォローしている(英語)。
http://www.hobomaps.com

  荷物を転がしての歩きは厳しいが、条件さえ整えば楽しいハイキングになる。天気はよかった。日差しは強いが、国際バスターミナルの売店で日焼け止めを買え た。やや裏道も通り犬との対峙があるが、フアイサーイの犬は北部ウドムセイなどの犬に比べて攻撃性が少し弱かった。バックパック(リュック)だと6キロの 行軍は厳しいが、コロコロ転がすキャスター方式だと楽。

 (ちょっと横道にずれますが、コロコロ転がすキャスター方式でも、スーツケース のようなキャスターケースはだめですね。コロコロ車輪がすぐ壊れる。私は写真のような骨組みだけのキャスターにかばんをくくりつけて転がしています。この 形態のキャスターだと車輪は丈夫で、長距離を転がしても簡単には壊れません。しかも、かなり格好悪く、また貧乏に見えるので防犯上の効果もあります。)

s国境の橋に向かう国道3号線バイパスを歩く。荷物はこういうキャスターで。_
国境の橋に向かう国道3号線バイパスを歩く。荷物はこういうキャスターで。_

  国境までの6キロの後半は立派な国道3号線バイパスだった。交通は激しくなく、路肩が広く平らで、キャスターを転がすのが楽だった。これだけ条件がそろう と6キロの行程は苦ではなく、楽しいハイキングになった。友好橋が見えてきたあたりで、メコン河岸に展望台がつくられており、ゆっくりと絶景を眺めること ができた。これは、バスやトクトクで来てしまったら、寄れないところだったと思う。

mekong
国境近くでメコン川の展望台がある。ウアイサーイ方面を望む。

  さらに、ラオス、タイの両国境検問所も閑散としてよかった。国境は普通、バスなどで越えることが多いので、乗客が一度に検問所に押し寄せ、険悪な空気にな る。しかし、歩いてくると他に通過者はほとんどおらず、係官も珍しそうにこっちを見ながら、優雅にスタンプを押してくれる。ラオス農村光景の一部という雰 囲気。検問所間の1、2キロは専用バスに乗ることになっていて、出国手続きが終わるとバスに乗車(8000キップ)。タイ側で降りて今度は入国審査。人が 少ないとバスもなかなか出発しないが、まったりした田舎の雰囲気を満喫できるので、それなりに楽しい。国境越えは、できれば歩きで、そして一人で。

sラオス側の国境検問所_
ラオス側の国境検問所が見えてきた。

sこの専用バスに乗って国境を越える_
この専用バスに乗って国境を越える。

  タイ側の入国審査が終わると、出口で検問所係員のような人(に私には見えた)が机を出して待っていて、行き先を聞き、北部の中心都市チェンラーイまでであ ることを告げると、60バーツのトクトクでチェンコーンの町に行けと言われた。本当はやはり歩いて町まで行きたかったが、「町まで10キロ。無理だよ」と のこと。60バーツの領収書も発行してくれた。トクトクが運賃をぼったくりしないよう、公的な手続きを介在させているのだろ、と見た。

sトクトクに乗ってタイ国境検問所を後に_
トクトクに乗ってタイ国境検問所を後に。


  数人が乗ったトクトクは、しかし、約2キロ行くと、市場みたいなところで止まった。何だこれなら歩けたぞ、と思う。ちょうどチェンラーイ行きのバスに出く わしたらしく、乗り換えるよう指示された。いかにもローカルバスという感じの古いバス。チェンラーイまでの3時間が65バーツだった。え?2キロのトクト クが60バーツで、3時間のバスが65バーツ? トクトク代をぼられたのかな、とも思ったが、通貨の感覚がはっきりしてくると、200円と220円である ことが判明。いずれにしても大した額ではないことがわかった。

s市場で乗ったチェンラーイ行きのローカルバス_
市場で乗ったチェンラーイ行きのローカルバス。

  チェンコーンからチェンラーイまでは直線距離では100キロもないが、バスはずっと南東側を遠回りしたらしく、3時間かかった。12月でラオス北部などで は寒い日もあったが、ここまでくるといきなり熱帯モードで、バスの窓は開けっぱなし。吹き込んでくる風がここちよい。おまけに天井の扇風機もまわってい た。

 ラオスの山岳風景とは打って変わって、窓の外には平地が広がっていた。刈り取りの済んだ水田が主。なんと水入れが始まった水田もあ る。これから田植えか、3期作か。タイ北部はまだ少数民族の山岳地帯、と思っていたが、いきなりタイ中心部の熱帯農村地帯に来てしまった感じ。

s12月なのにこれから田植えか
12月なのにこれから田植えか。3期作?

sチェンラーイの街_
チェンラーイの街。

 ラオスに比べて、寺院や大仏が立派で巨大になったのに気づく。いや、宗教建築が珍しいから目立つだけで、学校、役所などの施設、一般家屋などもよく見れば、立派になっていた。やはり中進国タイ。ラオスとの経済力の差が歴然としているようだ。


詳しくは:

書籍「アジア奥の細道」

岡部一明『アジア奥の細道』(Amazon KDP、2017年、2060ページ、写真1380枚、398円



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