上海の安宿の見つけ方 七宝と川沙がねらいめ
(岡部一明)
インドネシアとフィリピンを旅していると、どうもホテル代が高い。他の東南アジア諸国は安かったぞ、特に中国は安くて質もまあまあよかった、やはり中国は為替レートを無理に低くしているのかな、などと考えていた。
上海・浦東の高層ビル
が、上海に戻ってきて、ホテル代の高さに参った。中国でも上海は特別らしい。近くの蘇州でさえ、1ヶ月1800元(3万4000円、1日当たり1100円、2015年11月現在)のホテルがあったのに、そんなのは上海にはない。そもそも1ヶ月契約(「長包房」という)の割引料金が、上海中心部にはまずない。安くてある程度質のよいチェーンホテル、ハイ・イン(海友酒店)をいろいろあたったが、中心部では1泊130元がせいぜい。しかも窓なし部屋だ。(蘇州の安宿も繁華街に観前街近くの海友酒店だった)
体勢を立て直し、バックパッカーの誇りにかけ、本格的に安宿探しを開始。まず、オンライン予約サイトで上海の宿を調べる。中国の宿は、オンライン予約だとやや高目だ。実際に行くと、特にシーズンオフの時期は少し安い料金が掲示されている。そして「実際どうなの」と突っ込むとさらに安い料金を出してくるのが普通だ。ぜひぜひ、現場に行って突っ込んでみよう。(ちなみに、インドネシアのリゾートホテルなどは現地に行って選ぶとオンライン予約の2倍くらいも高く取られる。日本もオンライン予約の方が若干安い。)
それで、中国ではオンラインサイト予約はしないことにしているが、オンラインで調査をすれば一般的な傾向はわかる。最も安い宿は川沙(地下鉄2号線)や七宝(地下鉄9号線)にあるとわかった。実際にそこに足を運んで当たってみることにする。
川沙は空港に近いのが利点
上海の浦東国際空港
川沙は浦東国際空港に近い古くからの農村都市だ(地下鉄で空港から4駅目)。行ってみると本当に地方都市で何となくさびしい。しかし、空港に近いからだろう、安宿チェーンのホテルが5、6軒ある。1泊130元前後、1ヶ月長包房2500元前後を掲示していた。ちょうど春節(旧正月休み)のときで、どこも満員。宿泊料金の話まで進みにくいので、出直すことにした。
せっかく上海に来ているのに、中心部から地下鉄で1時間近く(5元)かかる農村地帯に住むというのは少しさみしい。しかし、金がなくなったら背に腹は変えられない。また、空港から近いので、日本から着いてとりあえず落ち着くところ、経由のため短期間滞在するところ、などとしては川沙は利用価値が高いだろう。オンライン予約可能な安宿もあるので試してみたい。
七宝の易佰旅店がお薦め
七宝に安宿が多いのは意外だった。市中心部から最も近い運河の町で、人気のある観光地だ。周辺はミドルクラスの上海人が住む郊外都市。
七宝は運河の街
しかし、考えてみれば、観光地だからこそホテルが多く、競争が激しくて安くなるのだろう。アジアの旅の経験から、「安宿は競争のあるところを狙え」が鉄則になった。「駅の近くは高いだろうから」などと離れた住宅街の1軒宿などに行くと返って高い。駅の周りの方が競争が激しくて安いのだ。
また、中国では、外国人が泊まれない宿がある点が、宿探しを難しくしている。地域によってこれを厳格に適用しているところとそうでないところがあるが、上海は厳格に規制しているようだ。せっかく安宿を見つけても「外国人はだめ」と断られることが多い。そして、外国人OKのホテルは高い。
期待していた七宝の海友酒店は何と「外国人お断り」だった。通常、チェーンホテルは外国人OKなのに、ここはだめ。がっくりして・・・しかしあきらめず、片っ端からホテルを聞きまくる。確かに、チェーンでありながら外国人お断りのホテルは他にもあった。
何軒目かで、比較的高級なチェーン、如家ホテルに当たった。案の上200元前後の高いレートが掲げられていたが、だめもとで聞いたところ「149元」だと言う。かなりの割引なのでちょっと驚き。とりあえずそこに1泊することにした。日本の1万円台ホテルと同じく立派で、バックパッカーにはもったいない部屋だった。
七宝の易佰旅店
翌日さらに七宝を踏査。にぎやかな運河の観光区域を外れ、後側の一般住宅地域に入ったあたりに、別チェーンの「易佰」ホテルがあった。聞くと、一泊130元。うむ、かなり安い。部屋も一応清潔。トイレ・シャワー・WiFi付き。1ヵ月料金を聞いたら(そんなのないと思ったが)、3000元と提示してきた。私が外国人であることを十分承知した上だ。躊躇する様子はない。
すぐカードで3000元を下ろし、パリパリの百元札で払った。川沙を探せば、最低月2000元程度の安宿があるかも知れないが、それでも1000元(1万7000円)の差だ。これで一応、上海の市部に留まれる。1日100元(1700円)は、上海では相当な安さだ。窓なし部屋の料金でもそれ以上し、しかも、外国人はだめというケースが多い。この「易佰」も、本当は外国人だめなのに間違ってOKしているのではないか。そう思ったから、気が変わらないうちというか、外国人条件などを思い出さないうち、パリパリの新札で即契約したわけだ。
そして、ここは七宝。上海に最も近い伝統的運河の街だ。超一流の観光地ではないが、生活の場としては贅沢な場所。1ヵ月毎日散歩しても惜しくない。食事なども豊富で安い。観光地なら、外国人が長居しても公安に怪しまれないだろう。
易佰連鎖旅店(上海七宝店)
上海市閔行区新鎮路1048号
電話:021-54388171
(七宝にはもう1軒、易佰旅店があるが、上記ホテルは観光地の七宝老街に近い方)
公園、ショッピングセンターも近い
即、新しい生活がはじまった。1ヶ月でも、新しい街の生活が始まるということはういういしく気分がいい。いろいろ物品を買い揃え、まわりを歩いて様子をさぐる。
易佰ホテルはとてもいい場所にあった。すぐ前の大通り、新鎮路を北に5分行くと七宝老街の入り口。南に5分行くとスーパーが2軒あり、ここで食料、生活用品を仕入れられる。南に10分ほどいくと、小金井公園(東京)を思わせるような広々とした公園(閔行体育公園)がある。ゆったりした芝生や池や林によく整備された散策路が通る。お年寄りなどが散歩や体操をしている。体育館や各種競技場があり、野外バスケットコート3面は夜9時まで無料開放。まわりから若者たちがやってきて自由にシュート練習をしている。私もここで毎夜ジョッギングができそうだ。
閔行体育公園
こういうところでこそ中国の発展をまざまざと感じる。空港リニアカーからの詐欺タクシーなどでは後進性を感じたが、整備された公園を楽しむ市民の余裕には先進国の折り紙が付く。
公園入口から南にさらに5分ほど行くと、巨大なショッピングモールLOTUSがあり、生鮮品から電気製品まで何でも買える。街の中心(運河の北)にも、同規模のショッピングモールTESCOがあった。おまけにその裏手には小規模ながら電気街があり、パソコン部品など電子機器製品が手に入る。多数の伝統的食品店、物産店がある七宝老街を含め、この地域を歩けば何でもそろいそうだ。
詳しくは:
岡部一明『アジア奥の細道』(Amazon KDP、2017年)、2060ページ、写真1380枚、398円
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