アジア奥の細道 ―簡単に出られるアジア

(岡部一明『アジア奥の細道』( アマゾン電子出版、2017年)3章(1)より)

四川省西部ミニヤコンガ

(氷河瀑布のかなたに白い中腹を見せたミニヤコンカ=四川省西部、7556メートル)


上海まで片道999円
 2016年6月30日〜7月23日、上海からミャンマー国境の瑞麗までの旅に出た。名古屋・上海間片道999円という春秋航空のキャンペーン料金に釣られた。モンゴルからニューギニアまで半年の旅から帰ってきたばかりなのに、もう矢も楯もたまらない。冬で旅行が難しかった四川や雲南の山岳地帯に行きたくなった。

 航空運賃が片道999円でも燃料サチャージ、空港税などを含めて3569円。帰国便は、7月なので1万数千円になるが、それでも往復1万5000円ほどで、名古屋・東京間の新幹線往復料金より安い。ピーク・シーズンをはずせば往復計1万2000円程度になる(行き3569円、帰り8299円)。


帰りは内陸都市からの便
 春秋航空は名古屋から、上海以外に、寧波、ハルビン、合肥、常州、銀川、貴陽、フフホト、石家庄などに飛んでいる。私は今回の旅の帰りは貴陽からの便にした。雲南省から上海まで同じ道を陸路で帰ってくるのも芸がなく疲れるだけと思ったので、雲南省に近い貴州省の省都・貴陽からまっすぐ飛行機で名古屋に帰ってきた(このため、帰国便の料金は1万9300円、往復計2万2869円となった)。

上海で肩慣らし
 6月30日上海着。3カ月ぶりの上海。半年のアジアの旅で上海や蘇州など中国に計4カ月滞在・旅行している。勝手知ったる・・・だが、3カ月日本に居ただけで、やはり勝手が違う。気を使わない淡白さ、ずぼらな人々、横断歩道に飛び込んでくる車、翌日の便まで切符売り切れの鉄道、市バス内での大声の携帯電話・・・まあ、全部前とおんなじだ。頭ではよくわかっているが、やっぱり最初は体と神経が適応しない。それに、前回はベトナムなど2年以上アジアの生活を続けた上での中国旅行。体が慣れていた。

 最近膝を故障して、ジョッギングをやっていなかった。足腰が弱ったらしく歩くとすぐ疲れる。歩けるのは歩けるので、いいリハビリになると上海の街を歩きまわった。

「こだま」型?新幹線
 2日目、7月1日は、上海から「新幹線」に乗って華中の徐州まで。190元(約2900円)。1元=15.4円と円が値上がりしているので助かる。

 こだま型(D系統)で本当の高速鉄道(G系統)より89元安い。そしたら案の定、高架の新幹線線路を通らず、在来線を走行。よく植林の行われた地上を走るので眺めがよくない。いい眺望を求めて高速鉄道に乗ったのだが…。中国では、在来線も高速鉄道も同じ広軌道レールだ。新幹線車両も在来線にそのまま乗り入れられる。中国と日本の新幹線の1番の違いだ。

 だいたい時速150キロ台のスピードで走った(車内に表示が出る)。徐州まで約5時間50分。在来線(約8時間)と本当の高速鉄道(約3時間)の中間くらい。車両は新幹線に似た和諧号なので快適だった。完全禁煙で、窓もちゃんと磨いてあったので景色がある程度よく見える。しかし、季節は梅雨で、日本と同じく外はほとんど雨模様。

旅とは
 旅とは前に進むことだ。列車に乗りバスに乗り、次の街に向かう。

 人生で前進のない私にはこれは非常にありがたい。あたかも自分が前進しているように錯覚できる。ぼけっと頭を空っぽにして窓の外を見続ける。列車の時刻表を見て切符を買うと、前に進めている。そして進めばいやでも何かがある。いや、何もなくとも、少なくとも自分は前に進んでいる、と感じられる。ありがたい。

 そんなの無意味だ、ただ移動してるだけじゃないか、と人は言う。しかし、人生とはそもそもそういうものでは。無意味だが、しかしとにかくみんな毎日、懸命に前に進む。そして、とにかく前に進めば、そこに新しい体験があり、何らかの発見があり、ことによると感動さえあるかも知れない。それが人生。それが旅だ。

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…てなことで始まった何度目かの中国旅行。お後は『アジア奥の細道』( アマゾン電子出版、2017年)で。電子出版でなければ無理な2037ページの大部。写真満載。それでいて398円のお買い得。私の前後50年のアジアの旅記録を全部収めました(「悠久のアジア」、50年が何か?)。全部読む気になってはだめ。興味ある所だけその都度、参考程度にお読みください。

 なお、上記、華中から四川西部、雲南北部、ミャンマー国境までの旅は、特にチベット自治区以外にチベット文化圏が広大に広がるということがわかって面白い旅でした。四川西部の山奥には上段写真のミニアコンガ(貢嗄山、7556メートル)が。めったに全容を見せない7千メートル峰が、雲の合間にちらっと顔を出し幸運でした。ヒマラヤ以外でこれほど高い山があることに驚き。世界屈指の難峰で、日本人登山隊8名の犠牲者が出ているとのこと。


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