世界をまわるだけが旅ではない
世界何か国に行ったの?と聞かれることがある。数えてないので即答できないが、地球上全ての国に行くなんてことは目標にしていない(まあ、5大陸には行ったが)。一つの理由は、じゃあ私たちは日本国内全ての都道府県に行っているか、ということがある。いや自分の都道府県内でも、その全ての市町村を制覇しているか、もっと突き詰めれば、自分の市の中の全ての町、あるいはその(例えば)緑町内の全ての丁目、いや、あなたの住んでいる緑町3丁目内のすべての街路を歩いたことはあるか、ということだ。
実は、あなたの家のある100メートル四方にも、あなたの行っていない知らない場所は無数にある。地球上全ての国に行くことは難しいが、あなたの住む緑町3丁目のすべての道を歩くことも結構難しい。
自分が育った街なら、子どもというのは(少なくとも昭和の子どもは)そこら中走り回って大人の知らない空き地とかわずかに残された林とか、そういう秘密の場所を見つけて、悪がき連の遊び場にしているものだ。だが、大人になって住んだ街では、そんな探索はしていない。毎日、通勤で駅まで同じ道を通って歩いている。実は、一つ別の街路に外れるだけで、知らない光景が開けている。へえ、こんな所があったのか、と感動する。-そういう経験を、コロナ禍の自宅幽閉生活の中でたくさんすることになった。
どうもいつも前置きが長い。退職者ながら世界中に出歩いていた私も、名古屋の自宅にほぼ閉じ込められ、周囲の散歩やサイクリングのみに行動制限せざるを得なくなった(こういう基本的運動まで制限するのは間違っていますぞ)。振り返ってみると、すでに3月上旬から3カ月、市バス・地下鉄にも乗っていない。
だが、これは私にとって福音で、自宅周辺の素晴らしい自然、そしてゆったりした街並みの光景をじっくり堪能する機会を得ることができた。どんな街でも、自分の周囲をとくと見つめると心躍る風景、敢えて言えば「観光資源」がごろごろ転がっている。コロナ時代のレジャー、身近な自然と身近な街並みを体験する極上の「行楽」にすっかりはまりこんでしまった。
横丁のアスファルト道路に芽を吹いた雑草にも感動するが、そこまで身近にしなくても、体験した中の極上お勧め、名古屋市東部の身近ハイキングコースを下記に紹介する。
お薦め裏山探索コース地図
お薦めコース
いろいろ試行錯誤の末行きついたお薦めコースは上記だ。いや、初めての人は、東山公園の1万歩コースや、平和公園の散歩道を歩くのが「正しい」が、ここではそういう普通の道は紹介しないことになっている。地元民でもあまり知らない特等コースを紹介する。(裏山コースの一端を知る入門編としては、このページが適切と思われる。ここで紹介するコースとも一部重なる。トイレの場所までちゃんと表示している立派な案内だ。)
まわり方はいろいろあっていいが、東山公園テニスコート周辺から出発するのがお薦め。このあたりに自転車を置いて(まあ、車で来てもいいが)、周囲の裏山をぐるっと回るというのがここでの基本パターン。
名前のない森
この辺の森はかわいそうに、正式な名前はないようだ。東山公園はあるが、その裏側一帯の森は名前がない。結構な山が、道路に分断されながらたくさんあるのに、グーグルマップをいくら拡大しても名前は出て来ない。市販の詳細市街地図をよおーく見ると、「裏山」という表記を見つけた。しかしこれは正式な地名ではないだろう。正式名だったらなおかわいそうだ。八事裏山という地名はあるが、これは「天白区天白町大字八事裏山」というれっきとした住所名。住宅地を含めた広域を指しており、森の名前ではない。テニスセンターの南側一体の森には「東山公園天白渓湿地特別緑地保全地区」という看板があった。しかし、これも地名というわけではないだろう。
遭難はしない
東山裏山のいい所は遭難することがないことだ。
当たり前だろ、と言われるかも知れない。都市公園たる東山公園、平和公園をはじめ住宅地の中の緑だ。千種区から天白区、東京で言えば、まあ、杉並区から小金井市あたりという感じ。都市地域に囲まれたこんな所で遭難することなどない……と。しかし、整備された公園の裏山に行くと、慣れない人だと、道なき道に入り込み迷うことがある。雨が降って来そうだ、日が暮れそうだ、となれば「遭難」の二文字さえ頭にちらつく。実際、この地域では子どもが迷子になって保護されることがよくあるという。
しかし、大丈夫だ。遭難はしない、というのがここの山道のいい所。とにかく藪のクモの巣払って下の方に降りて行けば、必ず道路に出る。東山の深い森は、郊外に出る道路に至る所寸断されて、比較的小さな森林域に分割されている。