名古屋東部・裏山めぐり ー東山公園の裏に深い森が広がる

名古屋は、東部郊外に向かうと、南北に連なる丘陵地帯にぶつかる。北から平和公園、東山公園、その裏山一帯、八事(やごと)霊園、八事山、さらに天白川を越えて相生(あいおい)山など緑地帯が続いている。平和公園、東山公園、興正寺の八事山はよく知られ人出も多いが、名もない裏山にはほとんど人が行かない。しかし、ここにも都会としてはもったいないくらいの自然が隠れている。上記地図の紫の線がお薦め探索コース。迷いさえしなければ全行程約3時間。下にもっと詳しい地図あり。オープンデータのOpenStreeMap利用(CC-BY-SA 3.0)。
東山公園の裏山一帯。天白区植田の稲葉山公園から北方を見たところ。東山スカイタワーがあるあたりが東山公園。隣の大きなビルは高速道路トンネルの排気所。裏山一帯に緑が広がるが、東側の郊外住宅地も相当侵入してきているのがわかる。自然と都市がせめぎあう「平成狸合戦ぽんぽこ」(ジブリ作品)の世界があるところだ。

世界をまわるだけが旅ではない

世界何か国に行ったの?と聞かれることがある。数えてないので即答できないが、地球上全ての国に行くなんてことは目標にしていない(まあ、5大陸には行ったが)。一つの理由は、じゃあ私たちは日本国内全ての都道府県に行っているか、ということがある。いや自分の都道府県内でも、その全ての市町村を制覇しているか、もっと突き詰めれば、自分の市の中の全ての町、あるいはその(例えば)緑町内の全ての丁目、いや、あなたの住んでいる緑町3丁目内のすべての街路を歩いたことはあるか、ということだ。

実は、あなたの家のある100メートル四方にも、あなたの行っていない知らない場所は無数にある。地球上全ての国に行くことは難しいが、あなたの住む緑町3丁目のすべての道を歩くことも結構難しい。

自分が育った街なら、子どもというのは(少なくとも昭和の子どもは)そこら中走り回って大人の知らない空き地とかわずかに残された林とか、そういう秘密の場所を見つけて、悪がき連の遊び場にしているものだ。だが、大人になって住んだ街では、そんな探索はしていない。毎日、通勤で駅まで同じ道を通って歩いている。実は、一つ別の街路に外れるだけで、知らない光景が開けている。へえ、こんな所があったのか、と感動する。-そういう経験を、コロナ禍の自宅幽閉生活の中でたくさんすることになった。

どうもいつも前置きが長い。退職者ながら世界中に出歩いていた私も、名古屋の自宅にほぼ閉じ込められ、周囲の散歩やサイクリングのみに行動制限せざるを得なくなった(こういう基本的運動まで制限するのは間違っていますぞ)。振り返ってみると、すでに3月上旬から3カ月、市バス・地下鉄にも乗っていない。

だが、これは私にとって福音で、自宅周辺の素晴らしい自然、そしてゆったりした街並みの光景をじっくり堪能する機会を得ることができた。どんな街でも、自分の周囲をとくと見つめると心躍る風景、敢えて言えば「観光資源」がごろごろ転がっている。コロナ時代のレジャー、身近な自然と身近な街並みを体験する極上の「行楽」にすっかりはまりこんでしまった。

横丁のアスファルト道路に芽を吹いた雑草にも感動するが、そこまで身近にしなくても、体験した中の極上お勧め、名古屋市東部の身近ハイキングコースを下記に紹介する。

お薦め裏山探索コース地図

東山公園の裏山一帯の地図。紫の線がお薦め山歩きコース。ゆっくり歩いて全行程約3時間。多少は違う道にはみ出して歩いても可。名古屋高速2号東山線が表示されているが、この部分はすべてトンネルになっているので見ることはない。地図はOpenStreeMapによる(CC-BY-SA 3.0)。OpenStreeMapは細い山道、ことによるとけもの道のようになってほとんど歩けないような道さえも地図上に表示しているので非常に役立つ。しかもこうして転載が自由にできる。世界を歩くにはグーグルマップが必須なのだが、残念ながらこうした山道までは手がまわらないようだ。各種地図サイトを比較できるmapCompareサイトも活用のこと。

お薦めコース

いろいろ試行錯誤の末行きついたお薦めコースは上記だ。いや、初めての人は、東山公園の1万歩コースや、平和公園の散歩道を歩くのが「正しい」が、ここではそういう普通の道は紹介しないことになっている。地元民でもあまり知らない特等コースを紹介する。(裏山コースの一端を知る入門編としては、このページが適切と思われる。ここで紹介するコースとも一部重なる。トイレの場所までちゃんと表示している立派な案内だ。)

まわり方はいろいろあっていいが、東山公園テニスコート周辺から出発するのがお薦め。このあたりに自転車を置いて(まあ、車で来てもいいが)、周囲の裏山をぐるっと回るというのがここでの基本パターン。

名前のない森

この辺の森はかわいそうに、正式な名前はないようだ。東山公園はあるが、その裏側一帯の森は名前がない。結構な山が、道路に分断されながらたくさんあるのに、グーグルマップをいくら拡大しても名前は出て来ない。市販の詳細市街地図をよおーく見ると、「裏山」という表記を見つけた。しかしこれは正式な地名ではないだろう。正式名だったらなおかわいそうだ。八事裏山という地名はあるが、これは「天白区天白町大字八事裏山」というれっきとした住所名。住宅地を含めた広域を指しており、森の名前ではない。テニスセンターの南側一体の森には「東山公園天白渓湿地特別緑地保全地区」という看板があった。しかし、これも地名というわけではないだろう。

遭難はしない

東山裏山のいい所は遭難することがないことだ。

当たり前だろ、と言われるかも知れない。都市公園たる東山公園、平和公園をはじめ住宅地の中の緑だ。千種区から天白区、東京で言えば、まあ、杉並区から小金井市あたりという感じ。都市地域に囲まれたこんな所で遭難することなどない……と。しかし、整備された公園の裏山に行くと、慣れない人だと、道なき道に入り込み迷うことがある。雨が降って来そうだ、日が暮れそうだ、となれば「遭難」の二文字さえ頭にちらつく。実際、この地域では子どもが迷子になって保護されることがよくあるという。

しかし、大丈夫だ。遭難はしない、というのがここの山道のいい所。とにかく藪のクモの巣払って下の方に降りて行けば、必ず道路に出る。東山の深い森は、郊外に出る道路に至る所寸断されて、比較的小さな森林域に分割されている。

1、裏山絶品コースの起点となる東山公園テニスセンター。この左の道路を進んでいくと、いろいろ森への山道入口がある。「天白渓湿地特別緑地保全地区」とされる裏山だ。
2、山道の入り口は隠れていて目立たない。例えばこの道路側壁に登ってフェンスの端に薄暗く開いている空隙(中央)から入っていく。地図上の出発点に図示した場所だ。
3、これはその右側下を走っている比較的交通量の多い道路からの入り口。こんなところ入って中に道があるのか、と不安になるくらいだ。しかし、意外と中に入るとそれなりのハイキング道が続いている。このあたりの裏山を歩く上での最大の壁は山道入口だ。とても入れないように感じてしまう。逆に言うと、この裏山歩きの秘訣は、不安に抗し思い切り入り込んでみること。すると文字通り道が開ける。少なくともOpenStreetMapに山道が図示されている限りそこは道なのだ。
4、こんな入口も。ちょっと入りにくいですよね。しかし、車は入れないということであって、歩く人は入れます。中には使われていない駐車場があって、その奥に山道の入り口がある。1のテニスセンター写真の道路を奥に進むとこの写真の地点に来れる。一つの方法としては、入りやすいところから一旦森の中に入り、出口らしいところ片っ端から出てみることこと。すると、おお、こんなところが入口だったのか、と気づける。
5、一旦中に入るとそれなりのハイキング道が整備されている。都会の中とは思えないような森。本格的な山歩きと何ら変わらない。この辺の裏山内部はどこでもこんな景色だ。
6、立木が朽ちて倒木となっているような場所も多い。
7、分かりやすいこの裏山のコース地図もいくつか表示されていた。裏山を育てる市民の活動があるようだ。
8、湿地帯がある。これを天白渓湿地というようだ。
9、この崖は、だれが付けたのか「人間地獄」という名称がついている。かなり恐ろしげだ。アリ地獄のように人間も引きづりこまれたら出られない崖ということか。
10、ユーカリの森があって、いくつかの種類のユーカリが植えられていた。
11、推薦ルートには入れてないが、この「天白渓湿地特別緑地保全地区」裏山をさらに南行くと、16万平方メートルの八事霊園がある。近くお仲間に入れて頂く諸先輩方への挨拶まわり、という意味合いだけでなく、広い眺望が得られるので行く、ということもある。裏山はたいてい木がうっそうと茂り眺望はよくない。しかしこの無数の丘の上に展開する霊園なら、木も生えておらず、名古屋郊外地域が広く見渡せる。アクセス路も整備されている。
12、八事霊園と「天白渓湿地特別緑地保全地区」裏山の間には、もう一つこの裏山がある。名城大学グランドや天白渓下池公園に近いところだ。写真は渓下池から北方に向かった眺望。この裏山もできればコースに含めたかったが、アクセス路の難度が高く断念した。「暴れん坊少年」に成長してからトライするといいだろう。
13、さて「天白渓湿地特別緑地保全地区」裏山のお薦めコースに返る。裏山の東側に出て来ると、写真のような山村風住宅街の道に出る。こんな道を歩くのも味があっていい。保育園などもある。
14、郊外に向かう国道153号豊田西バイパスの広い道路を横切って住宅街を北に向かう。「裏山公園」という名の公園(写真)があり、その先にゴルフセンターがある。
15、ゴルフセンターを越えたあたりの森。森に沿っていい散歩道が通っているが、写真左のけもの道?を入っていくと、山道に入れる。
16、深い山道を約1キロ歩いて写真左の入り口に出る。柵が立ててあると入りにくいが、ここから入ってもよい。落ち枝に気を付けるよう注意が書いてあるのみ。ここを出たら右手の坂を下りていく。
17、東山の森に沿って「荒池ひろば」公園がある。
18、その公園の右わきに、こんな山道入口が。夏に草ぼうぼうになると益々入りにくいが、思い切って入る。すると奥には素晴らしい竹林が広がっている。
19、この一帯は舗装道路もなくなり、ますます「山村」の雰囲気がある。都会のど真ん中でこんな所に住んでいる人は幸せだ。
20、さらに北に進むと、東山公園に隣接する毘沙門寺が見えてくる。
21、毘沙門寺。ここに登ると、ある程度まで眺望が開ける。推薦コースでは、この石碑の右、山道の方に進む。東山公園1万歩コースに合流できる。
22、整備された1万歩コースの山道を歩き、広大な駐車場の入り口付近で道路に出て、この写真付近まで坂を下って来る。上を横切る幹線道路歩道に写真左の階段を上って入る。そこに1万歩コースが続いている。
23、1万歩コースの表示。1万歩コースは東山公園を中心に約6.2キロ。この付近は高架幹線道路の歩道になっている。名古屋大学付近から牧の原方面へ東山公園を横切る幹線道路だ。
24、この裏山の地下には名古屋高速2号東山線のトンネルが通っている。その空気を換気するのが、この緑橋換気所(左)。最初何のビルかと思ったが、要するに巨大な換気口ということらしい。正面奥はさっき通ったゴルフセンター。裏山コースでは珍しく眺望が効く場所だ。
25、反対方向(北方向)には、東山公園と東山スカイタワーが見える。これに登ればさらに眺望はいいのだが。
26、お薦めコース最後の森へ。幹線道路からの入り口。さすがに1万歩コースの一部だけあって、安心して入っていける雰囲気。入ったら右方向に歩いて行こう。
27、ここから出て来る。あとは住宅街を下っていけば10分程度で出発点の東山公園テニスセンターに着く。