日本の夏を耐える切り札

今年は6月27日という早い時期に関東甲信、東海が梅雨明け。それ以降、時に40度を越える猛烈な暑さが続いている。「梅雨末期の集中豪雨」が北海道で起こっているようだ。沖縄が東京(本州主要部)、東京が北海道になってしまった感じだ。地球温暖化の余波だろう。

テレビが、暑さ対策を熱心に報じている。熱中症を防ぐため、昼は外出を控えよう、水分をこまめに採ろう、エアコン利用を控えない、そして日射を防ぐグッズはこれこれで、等々。

が、決定版と私が思うものの紹介がない。暑さ対策の究極にして最高の方策。それは濡れたTシャツを着ることだ。いや、これは一般に勧めてはいけないのかも知れない。これでかえって体を壊す人が居るかも知れない。これは決して一般へのアドバイスではありません。私は医者ではありません。

しかし、こんなに効く暑さ対策について黙っているというのはまた別の意味で問題だ。私にとっては特効薬的裏技になっている方法を紹介して参考事例にしてもらっていい。72歳のおじいさんがやっていて大丈夫、てか、効果てきめんなのだ。若い元気な人が1度くらい試しても害はないのではないか。

簡単だ。Tシャツを水に濡らして着る。常温でこんなことをすると心臓麻痺を起こすくらい冷たい。しかし、日本の夏は外に出ると、心臓麻痺を起こすくらい暑い。濡れTシャツを着るとちょうどよい。(だから外に出てから濡らせば一番いい)。暑さ加減で、濡れ具合を調節する。通常はきちんと絞る。絞っていればシャツから水がしたたり落ちず、見た目に均等な湿りなので、違和感がない。濡れた衣類を着ているとわからない。そういう「濃い目の」色のTシャツを着ているように見える。まだらに濡れているといかにも汗をびっしょりかいているようでみっともない。均等に湿らせるのがコツだ。

暑い時、乾いた衣類を着ててもいずれ汗だくになる。ならば最初から濡らしておけばいい、ということだ。人間は汗を出して体温を下げる。ならば最初から水で濡らして体温を下げればいい。体内から体液(汗)を表出させるより、外から水分をかぶせた方が、体力的に消耗しないだろう。

ものすごく暑い時、あるいはその中でジョッギングなどをするときは、びしょびしょに濡らす。帽子も濡らし、なんなったら短パンも濡らし、その上頭から水をかぶってもいい。びしょびしょで街中を走り、あるいは体育館でバスケをするのだ。真夏の体育館は、窓を開けても異常に熱い。夜になっても昼の熱がこもっている。そういうときには遠慮なく、びしょびしょTシャツで走り回る。体が触れると気味悪いくらい汗をかいている人だと間違われるが、それで人を遠ざけ、バスケ対戦を有利にできる。

私はこれでカリフォルニア内陸の摂氏44度を冷房なしで乗り切ってきた。家の中でも濡れた着物を来て、濡れ靴下を履き、ベッドにも濡れタオルをしいて寝る。外気温40度以上の日射を遮り、できるだけ朝の冷気を室内に閉じ込めて、この水冷方式をとると、普通に生活できる。濡れ着の上に扇風機で風を当てたりすると震えるくらいだ。

さすがに日本ではそこまではしない。家族がエアコンつけて家の中にいるから、それに合わせる。普通通りの服装で家の中に居ればよい。

最近は、衣服の中に小型扇風機を仕込ませて涼しくする空冷式衣服が出回っているようだ。それもいいだろうが、Tシャツを水で濡らす「水冷式」は、複雑なテクノロジーも要らない。手間もカネもかからない。乾いたら、また出先の公園噴水などで濡らせばいいだけだ。通風がよい涼しいTシャツなども出回っているが、効果はたいしたことない。どんなTシャツでも、水をぶっかけて着ていた方がはるかに強力だ。何でこんな簡単な方法を人はとらないだろう。

思うに、濡れた着物を着るということに文化的な抵抗があるのだ。衣服は水で洗って乾いてから着るという常識にとらわれている。衣服を保温でなく冷却装置ととらえ、濡れたものを着るという「逆転の発想」ができないでいる。え、体に悪い? いや冷水摩擦と同じで肌を強くする効果があるかも知れない。

私はこの水冷式を学生時代、新聞配達をしているときに身につけた。今も、灼熱の炎天下で夕刊を配達している若者諸君を見るだろう。あれは実につらい。熱暑で体がふらつく。しかしある時水をかぶって走ったら意外と楽だった。以後、暑さ対策にはこの水冷式を常套手段とする人生がはじまった。

炎天下30分くらい濡れたTシャツで散歩すると、帰宅するころにはTシャツは半乾き以上になっている。この気化熱がそっくり私の身体冷却に使われたのだな、と思うと気分がいい。しかし、それでもやはり喉は乾く。あれだけ発汗代替をやってもまだ汗をかいているようだ。

自転車に乗る場合は風が気持ちよく、濡れTシャツ冷却は効果抜群だ。灼熱の太陽の下を普通に走ってくることができる。

バスケなど激しい運動をするときは、濡れTシャツでも追いつかない。頭はボーとしてくるし、呼吸も苦しい。スポーツドリンク類をがぶ飲みするし、休憩中に冷たい水道水を首まわりに流す。さすがの水冷式でも熱中症の危険はあるので注意しなければならない。が、それでも、がぶ飲みドリンクの量は半分くらいになっている。それだけ危険回避の足しにはなっている。