ヒトカラ11時間、200曲、1600円、73歳

忘年会攻勢の時期ですが、皆さま、健康・健全にお過ごしでしょうか。私も健全かどうかはともかく、一応健康に乗り切り中です。

が、とある二次会カラオケで何時間カラオケができるか議論があり、「10時間できる」と豪語してしまいました。日頃、近くの格安カラオケでシニア3時間500円の一人カラオケ(ヒトカラ)をしている感触からそう断言してしまったのですが、「実証」しなければならなくなるはめに。

12月19日(火)、2つのカラオケ店をまたにかけ、朝8時から夜8時まで12時間のヒトカラをしました。途中、移動に20分、弁当食べ20分、その他トイレやフリードリンク調達や、曲入力の不手際などでの無カラオケ時間を20分と推定して、まあ計11時間歌ったのは固いでしょう。

この12時間、ずっと録音していました。それを「物証」でここに載せようとしたのですが、調べると、自分のへぼいカラオケでも勝手に載せることは著作権法に違反することがわかり断念しました。自分の声はともかく、曲自体の著作権、カラオケ音源(伴奏)などの著作・著作隣接権があるからです。

(Youtubeなど動画・音声配信サービスでは、音楽著作権を委託管理しているJASRACとNexToneと一括契約しているので、こういうサイトに出す限り、ほとんどの場合著作権をクリアする。しかし、これに委託管理されていない曲もあり、対象が数百曲にもなるのでは調べるのは現実的ではない。さらに、カラオケ音源の著作権・著作隣接権の問題も残る。Youtubeなどで「歌ってみた」を投稿している人は、自分で伴奏音楽を用意しているとのこと。詳しくは例えばここ。)

12時間1600円のからくり

私が外国に出て一番困るのは、安価なカラオケがないことだ。食べ物はだいたいなんでも食える。日本食がないと生きられないということはない。住むところ、寝る環境も、かなりの貧しいところを含めて大丈夫だ。しかし、カラオケがないのはとても苦しい。欧米のカラオケは大広間酒場で皆の前で歌うという形式が主で、ヒトカラや友人仲間カラオケ派の私には合わない。アジア系が多い米西海岸などには「カラオケボックス」店があるが、一般的な物価高を背景に安くて1時間2000円など、なかなか手が出ない。東・東南アジア諸国には安いカラオケ店はあるが、この地域ではカラオケがキャバクラ的ないかがわしいところになっていて、難儀する。

そういう中で、日本の健全なカラオケ文化は素晴らしい。料金も退職老人にやさしい。特に私の住む名古屋市塩釜口近辺は、格安カラオケの宝庫で、全国的に言っても非常に恵まれた環境だ。行きつけの「カラオケ・ジョイランド」は、平日昼間(12時~19時)シニア3時間(水曜4時間)500円。一般でも12時~20時フリータイム1000円だ。一人カラオケはもうからないので割増料金をとるところが多い中、ここは入り口に「お一人様大歓迎」と書いてあり、激賞に値する。

カラオケJoylandはこの2階だ。地下鉄鶴舞線塩釜口駅のメイン出口を出てすぐ。近くに名城大学があり、学生も多い。
料金を示した看板。
数名用の小さい部屋から、大は20人以上は入れるパーティルームまで。ヒトカラの部屋はこんな様子。フリードリンク付き、飲食持ち込み可。

そこから近いジャパンレンタカー(ジャパレン)の「ジャパン・カラオケ」は24時間オープンで朝が割安。例えば7時~11時フリータイム1室500円だ。レンタカー屋さんがカラオケをやっているのは名古屋近辺だけらしく外から来た人に珍しがられる(北陸から滋賀・長野、東海まで店舗あり)。飲食持ち込み可で出入り自由。しかもここの料金は一人当たりでなく1室当たり。多人数の場合絶対にお得だ。いろんな時間別料金があり、例えば7時~15時フリータイム1300円、11時~20時同1800円など。この間、家族・友人6人が入れ替わり立ち代わり11時~20時、9時間使って計1800円だった。一人当たり300円で恐れ入った。

名古屋名物、カラオケができるレンタカー屋さん、ジャパレン・カラオケ(正式には「ジャパン・カラオケ」)の天白店。
部屋も大きい。どれも10人は入れる。全クッション式滑り台など遊具付き「キッズルーム」もあり(同一料金)、お母さん方が安心して子どもを遊ばせながらカラオケを楽しめる。

さて、話は遠回りになったが、安く10時間ヒトカラをするにはどうすればいいか。いつも行くジョイランドは昼間フリータイム1000円だが、12時からしか始まらない。ジャパレン・カラオケと組み合わせることにした。ジャパレンで7時(早すぎるので8時に入室)~12時600円、12時~20時はジョイランドのフリータイム1000円。計12時間で1600円になった、というわけだ(夕方から朝までならもっと安くなるかも知れないが、徹夜カラオケはサステナブルでないので選択肢から外した)。終わった時点で喉筋肉的にはまだ数時間やれそうだったが、料金が一挙に2倍以上になるのでそこで自制した。また、一店舗で10時間以上籠るのは異常だし、安否を疑われる懸念もあるので、場所を二店舗に分けたのは適切だったと思う。

11時間ヒトカラの「物証」

冒頭の通り、カラオケ店滞在の12時間録音はここに出せない。つまり、「物証」を示すことができない。とりあえず下記に、両店舗の入退室時間が記されているレシートと、カラオケ機械に残された「履歴」の映像を載せておく。しかしこれでは、カラオケ室で寝ていたかも知れず、曲だけ一挙入力して読書していたかも知れず、確実な証拠とは言えない。また、たとえ歌っていても、「あー、ウー」と歌と言えない音声だったらだめだし、蚊のなくような小声でもルール違反だ。やはりどんな風に歌っていたか確実に検証できる録音があることが望ましい。

両店舗のレシート。左がジャパレン・カラオケで7時59分から12時1分まで201号室で600円。右がジョイランドで12時7分から20時まで21号室で1000円。こちらは会員になっているので名前と来店回数まで出ている。あくまで会員になった十数年前からの来店回数なので誤解なきよう。(杉山一明は私の本名で、岡部は旧姓。私らの場合、結婚して男の方が姓を変えた。男女平等なんだから日本人夫婦の半分はそうなるべきです。不便をかこつ多くの日本女性と同様、私も身分証明書は本名で、仕事を含め社会生活上は旧姓。)

ジャパレン・カラオケの4時間弱で歌った曲の「履歴」を表示させた。かぐや姫「赤ちょうちん」から始めて中島みゆき「空と君のあいだに」まで70曲。ちょっと画面がずれ曲名がよく見えなくてすみません。

ジョイランドで8時間弱歌った曲の履歴。今度は直前に歌った曲から最初に歌った曲へさかのぼる形でページめくりしている。最後の曲が黒川泰子「千の風になって」で、最初が中島みゆき「帰れない者たちへ」。それ以前の曲は前日に入った別の人が歌った曲だ。全130曲で、2店舗合わせるとちょうど200曲になる。

ただし、12時間録音していたのは無駄ではないだろう。お前はホラを吹いているだけだ、11時間ヒトカラなどウソだ、ブログで虚偽情報を流した等と訴えられた場合(訴える人居るかな)、裁判所にこの録音を提出すれば一応難は避けられる。

いや待て。現代ではこれでも決定的な証拠にならないかも知れない。技術ある人なら、別の日のカラオケ録音をわからないようにつなぎ合わせて連続ファイルにすることができるだろう。それに最近では生成AIが本人の声に似せて合成歌声をつくることも可能になったという。一定の確率で音程やリズムをはずさせる操作もできるはずで、そうすると私のリアルな声に近づく。私にそういう技術はないが、可能性を考えると12時間録音も決定的物証にはならないだろう。

私が歌ったと言っている。それを信じてもらうしかない。どうしても信じて頂けない場合は、旅費とカラオケ代さえ出してくれればどこにでも行きますので、そこで監視付き生再現をさせて下さい。それが確実な証拠になるでしょう。あと5~6年はやれそう。燃料・喉潤滑用のアルコール提供もお忘れなく。

経過報告

ジャパレン・カラオケは7時からの安料金があるが、朝に弱い私は8時になってしまった。やり始めて気が付いたのは、曲を連続して入力しておくのはかなり苦痛であること。長目の間奏・後奏の時に入力するのだが、とにかく何でもいいから早く入力しなければならない。普通なら1曲歌い終えて自然とその時の気分で次の歌いたい曲が出てくるものだが、もう次々に入れまくる。カラオケの自然な味わい、喜びが失われる。

曲を早く入れるには、好みの歌手の曲リストを出してから次々に入力するのが効率的だ。あるいは歌える曲のリストをつくって持参するのも手だ。その場では瞬時に出てこない曲がいろいろある。DAMやJOYSOUND(カラオケシステムのブランド)でアカウントを持っている人は、好みの曲をあらかじめ登録しておく方法もあるだろう。

公式の「ヒトカラ最長記録」というのがあるのか、ウェブであらかじめ調べたが、そんなのはないようだ(当然か)。記録達成のための条件を自分で考えた。まず、連続して歌うことが必須だろう。トイレその他で短い中断が入るのはやむを得ない。私の場合、カラオケ店を代えるのに移動、清算・入室手続きなどで20分使った。フリードリンクをもってくるとか、曲入力に失敗して無カラオケ時間ができるとか、エアコンの入れ方がわからずリモートの操作に四苦八苦するとか何かと中断はあるもので、これは許容範囲とした。間食は、カロリー補給のゼリー飲料で瞬時にすませることにしていたが、どうしても腹が収まらず、持ってきたパンとソーセージをむしゃむしゃしてしまった(約20分)。貴重な休憩となり、生き返ったのは確かだ。

12時間ともなるとマイクを持ち続けるのも結構な重労働。ときたまマイクなしで歌った。最初すわって歌っていたが、これだとどうもアドレナリンが出ない。眠くなる。途中から立って体操しながら歌った。

また、独自規則として同じ歌をうたわない、という方針をとった。これはカラオケに通いなれているあなたなら大きな問題ではないだろう。結構、数百曲のレパートリーはあるものだ。かえって、同じ曲を歌うと飽きて、気力上の問題が起こる。

中盤で「おはこ」であるビートルズの曲群をマイクなしで歌った。ビートルズは元気よく絶叫しないと歌った気がしない。しかし、これでかなり喉がやられ、後半が難しくなった。

しかし、いろいろ手はあるもので、普段より高音で女性的な声で歌うと、歌えることがわかった。喉も歌い方によって使われる部分が微妙に違うらしい。

それで、由紀さおり&安田祥子的に日本の唱歌を歌うと、これがいいんだな。普段歌わない「ふるさと」「里の秋」「夏の思い出」「かあさんの歌」などかなりのなつかしい歌を乗りまくって歌った(DAMの場合、歌手を「唱歌・抒情歌」、英語曲の場合「Standards」とするといろいろ出てくる)。ヒトカラでも、その回ごとにいろいろ違う声体験・発見があって面白いものだ。

最後は哲学的なジョン・レノン「イマジン」の次に、「千の風になって」となって終わった。私はお墓には居ません、風になって吹きわたっています、と歌うことになり、孫たちにいい置き土産録音になった。

背景

カラオケは私の悠久の昔からの趣味だが、2013~15年のベトナム(ハノイ)滞在時と2018~21年の米サンフランシスコ圏滞在時に、縁あって現地の日系人合唱団に参加することができた。非常に勉強になった。カラオケというのは多分に気分で歌っているところがある。カラオケでなじみの曲も合唱団で歌うと、かなりいい加減だったことに気づく。音程、リズムを正確に歌うという訓練を重ねさせて頂いた。加えて、発声法も徹底的に叩き込まれた。声帯に負担をかけず喉全体を使って歌う発声法が少しはできるようになったようだ。これが今回の長時間カラオケの背景にあると思う。

しかし、先生からはまた叱られそうだ。「音楽は芸術であって、耐久力を競うスポーツではありません」。大学教員時代、「カラオケは喉の格闘技だー」と言って学生たちと競い合っていたことが反省させられる。

体育系としては、現在でもバスケに打ち込んでいるが、53歳のときフルマラソン3時間42分18秒(2004.2.1紀州口熊野マラソン)、54歳のとき1万メートル42分8秒(2005.2.13犬山シティーマラソン)の記録がある。番外編で、3年前の在米時、「1日10万歩」もやった。思えばあのときも、仲間内で「歩くのくらい1日10万歩いける」と豪語してしまい「実証」するはめに。今回のカラオケ中もそのときの記憶がちらついていた。

ただし、50歳前の私は純粋の文科系だった。それどころか20代半ばから年2~3回はぎっくり腰を起こし、1年で計1カ月程度は寝ている人生。老いてから早くに寝たきりになるのではないかと絶望していたが、50歳を過ぎたら、腰痛が出なくなった。背骨の軟骨が老化で固まり、飛び出さなくなるらしい(椎間板ヘルニアが出なくなる)。それで人生が変わった。若き腰痛持ち諸君も、ぜひ50を過ぎるのを楽しみに。