一念発起して、10万歩(日)歩きを試みた。12月14日、朝5時起きして6時40分出発。10万歩は、体力というより時間との闘いであることを知っていたので太陽が登る前に出た。実際、夜の1時に10万歩に達し、計18時間かかった。
バックパック世界旅行中、10万歩を目指したが失敗している。7~8万歩止まり。旅先の見物でとにかく歩くのを目指したのだが普通は5万歩程度だった。10万歩を歩くには朝、日の出とともに起きて日の沈むまで、休みも昼食もなく歩き続けなければならないことを思い知らされた。
合唱団でウォーキングの「チャレンジ」
別に10万歩が人生の目標でもない。しばらく忘れていたが、最近、熱が吹き返した。私の参加しているサンフランシスコの日系男声合唱団で、歩くチャレンジ企画が始まったのだ。コロナ禍で合唱の集まりが持てず、オンライン練習したり、互いに精神的にも身体的にもがんばるよう励まし合っていたのだが、毎日外で歩き、皆の歩いた歩数で世界バーチャルツアーをやってみようということになった。各人の毎日の歩数がオンラインの表に記入される。
じいちゃんもモチベーションが高まるじゃないか。過去の目標10万歩に再挑戦することにした。
最初はコンコード市内巡りで足ならし。「朝もやにけむる公園」を見て感動した。昨日珍しく雨だったせいもあるが、こんなものは初めて見た。いつも運動に来る公園なのだが、不健康にも夕暮れから夜にかけてが私のあばれる時間。朝はこんな風景なのか、と感じいった。
早朝に街や公園を歩く人には中国系の人が多いこともわかった。コンコードには別に中国系は多いわけではない。早朝運動は彼らの文化らしい。また、自転車でも行かない(行けない)小道にも入り、「秘密の抜け道」も見つけた。犬も歩けば棒に当たるでいろいろ発見がある。
運河トレイル巡り
一旦家に帰り、次はコンコードからウォルナットクリーク、プレザントヒル、パチェコなどを巡るコントラコスタ運河歩道(Contra Costa Canal Trail)一周へ。この地に農業・飲料水を供給している用水に沿った歩道・自転車だ。10万歩を歩くには、とにかく何も考えないでひたすら歩ける時間が絶対必要だ。それにはこの安全・快適なトレイルは最高。紅葉の盛りは過ぎているが、それでもいろいろ美しい木々や落ち葉があり、くっきりとした周囲の山々を望むことができた。
会う人ごとに「ハーイ」と笑顔で挨拶する気持ちのいいトレイルなのが、今は多くがマスクをして、あらぬ方向を見て通り過ぎる(私はマスクしなかった)。顔を合わせて話しかけるなど言語道断。中には、すれ違う前にわざわざマスクをかける奇特な人も居た。
ちょうどそれでいい。7~8時間歩くうちには何百人にもすれ違う。いちいち挨拶するのは大変だ。道の端と端に分かれ、下を向いて知らん顔ですれ違う。
(カリフォルニア州では、公共の場では法律でマスク着用が義務付けられ、罰則もある。スーパーなどマスクなしには入れない。屋外では6フィート(1.8m)以上離れていれば免除されるが、多くの人がかけている。今、少なくともサンフランシスコ都市圏では、日本よりマスク・エチケットが厳格なのではないか。)
朝たらふく食べたので昼食は抜き。ウォールグリーンでジュースとチョコレート買って頬張った。飲食する間も店の前をぐるぐる歩いて歩数を稼ぐ。
コンコードを出発して、トレイルはパチェコ付近で高速道路(州高速4号線)とぶつかり途切れた。コンコード空港(一応小さな飛行場がある。ブキャナンフィールド空港)を大回りしてコンコード市内方面に戻る。滑走路先の原野を横切る道路だ(Imhoff Drive)。産業用トラックは通るが、歩いている人は居ない。前方から来たサイクリストがにっこりして挨拶してきた。珍しい。私もサイクリストなのでわかるが、サイクリストは普通、歩行者になど声をかけない。すれ違う自転車野郎同士は、強い仲間意識を感じ挨拶をかわす。ここで会った彼は、人も通らぬ原野を歩く私に仲間意識を感じ、挨拶したのだろう。私もニタッとして彼に笑顔を返した。
市内に入る頃には暗くなり、かつ寒くなってきた。昼間の服装をしてきたので、寒さが応える。ジョッギングと違って歩きは体が温まらない。
自宅に帰ったのは午後7時20分。それまでに10万歩を達成できているはずだったが、何と7万2,000歩。しかも万歩計アプリの動くスマホが電池切れで止まっていた。
長距離歩数を計測するには、このスマホの電池切れが意外と伏兵だ。一定時間ごとに家に帰り、充電しなければならない。当然その間歩数は伸ばせない。中古のスマホを二つ持っているので、一つを歩数計測専用にして、他を写真撮影など別の用途に使いバッテリーをもたせる。
夜の徘徊老人
やむを得ない。簡単な夕食を済ませて、再びコンコード市内を徘徊開始。夜10時のダウンタウンは店もすべて閉まり、閑散としていた。中心部のトードス・サントス公園にも人影がなく、いや一人だけ何かの売人のような方が居て呼び止められたが、知らんぷりさせて頂いた。10時半にBARTの駅が閉まっているのにも驚いた。普通は真夜中まで通勤電車が動いているのだが、コロナ禍で早く閉めているらしい。
家近くのスーパーも軒並み閉まっていたが、意外にも大型ドラッグストアのCVSファーマシーは夜12時まで開いていていた。同じく近くの雑貨屋は何と1時まで開いている。みんな遅くまで働いているのだ。用もないのに歩きまわっている輩としては反省する以外ない。
夜12時までに9万7000歩しか行かなかった。残りは「翌日」で、2日がかりになってしまったのがちょっと美しくない。しかし、人体的には1日として考えられるだろう。午前1時までに101,845歩。「証拠写真」を下記に添付した。
「歩数競技」というスポーツ、その流儀
「歩数競技」とはなかなか面白いスポーツ?だ。速く歩かなくていい。遠くに行こうとしなくていい。目標地点があるわけでもない。とにかく歩数を増やせばよい。最初の頃、いつも通り(短足なのに)大股で速く歩いた。いつも、健康のため速く歩かなけばならないと思っている。しかし、疲れるだけで歩数もあまり伸びない。小幅でちょこちょこ歩く方が歩数が伸びるし、楽だ。ジョッギングなんかも運動量の割には意外と歩数が伸びない。マラソンにはマラソンの走り方、競歩には競歩の歩き方があるように、「歩数競技」には「歩数競技」なりの歩き方があるようだ。
また、家に帰ってもいい。家で掃除洗濯をやっても、買い物で巨大なスーパーを歩いても歩数が伸びる。今回も何回か家に戻った。戻れるように、遠くに直進していくのでなくグルグル循環するように歩いた。万が一の場合、帰れるようにしておく。忘れ物をしても取りに帰ってまったく問題ない。引き返しも同じように歩数になる。電池が切れそうになったら、喉が渇いたら、腹が減ったら、昼になって上着が不要になったら、そのたびに家に戻る。普通、食事の後は激しい運動はしないものだが、「歩数競技」ならできる。のったりのったり歩いても歩数が出る。他のスポーツなら食休みしているようなものなのだ。
バッグなど荷物は持って行かない。シャツとズボンのポケットに入るものだけだ。歩数アプリの動くスマホと財布と地図くらい。水は、喉がかわいたら途中で買えばいい。まあ、小さいペットボトルなら尻ポケットに入るが。食料も同じく途上調達。大切なものを忘れた。マスク。歩くとき付けなくても、物資補給に店に入るときは(アメリカでは)必須だ。マスクを取りに家に戻ることもあった。
10万歩は、心肺機能的にはきびしくないが、足の関節や腱に来る。マメもできる。敢行前から足を鍛えておく必要がある(数日前からジョッギングの距離を伸ばしていた)。出発前はもちろん、歩行中も折を見て足首回し、膝回し、腰回しをして故障対策をする。マメは針で刺して中の水?を出し、絆創膏で巻いて別の靴に履き替えれば切り抜けられる。こういう作業をするにもすぐ家に帰れるという条件はありがたい。