Everything’s OK? と若者が不安げな顔で聞く。「これで全部、大丈夫ですか。」
レストランの食事では、全部出て少し経った後、ウェイターがそう聞くのが習わしだ。
オオ、ヤー、デリシャスだ、
と答えて私たちは大きなビフテキにがぶりついている。
それだけで満腹になりそうな大きなツナサラダもある。大枚はたいてこんな豪勢なディナーを食べるのはめったにない。マルタ最古・最大の要塞「聖アンジェロ砦」に近い地域最高級のマルタ料理レストラン。ワインとビールも入り、大きなビフテキを全部平らげたのでカミさんがびっくりした。
心配したお勘定は、二人で40ユーロ。多分日本なら2万円。四分の一だった。
さて、海外安食の秘術の話はこれからだ。それだけだと誤解されるので、最初に対極例を出して、そんなものばかり食べている訳じゃないと先手を打ったのだ。
秘策:マックのハンバーガーが好物になると、海外放浪の外食は安く済ませられる。
何しろ、世界のどこに行っても、マックかバーガーキングは必ずある。そのハンバーガーが好きなら、どこに行っても好物が安く食べられるということだ。これで食の問題は解決。
むろん、宿でスーパーからの各種食材でサンドイッチをつくって食べれば、栄養と量は安く確保できる。それが基本で、他に、高くなりがちな外食…それを、マックとバーガーキングで解決する。
店内掲示に大きく出ている5ドル(ユーロ)以上のメニューにつられてはいけない。「Two hamburgers!」と断固として注文する。
今回の旅でよくわかったが、広いヨーロッパ中、どこに行ってもマックの単純ハンバーガーは1ユーロだった。見事に均一。バーガーキングの単純ハンバーガーも同じく1個1ユーロ。これを2つ頼めば、260円で、そこそこ空腹は抑えられる。もしかしたら、貧乏旅行で不足しがちな動物性たんぱく質も補給できてしまうだろう。
コーラなどをたのんではいけない。ハンバーグだけ。食事にあのようなソフトドリンクを付ける習慣をだれが広めているのか。食をドリンクで流し込むような作法は邪道だ。うまいものは、限りなく分泌される唾液でおいしく頂くのが通の業。
不思議なことに店内掲示には高いメニューしか出ていない。それに比べて、1ユーロ(130円)の単純ハンバーガーは圧倒的な安さ。まさに穴場で、マックやバーガーキングが隠したがるのも無理はない。デジタル注文の場合でもわかりにくいところに出てくるから腰を据えて操作してみよう。
単純ハンバーガーがうまいか。いや、諸君、ファストフード店にグルメを求める姿勢がそもそも間違っている!…などと私が言うと思ったら大間違いだ。何しろ好物。うまい。ハンバーグにケチャップやマスタードがまぶされ、妙味のピクルスも入っている。塩(salt)をもらってかけて食べると、歩き回って疲れた体に得も言われぬ美味が口中に拡がる。そう、マックとバーガーキングの単純バーガー、ばかにできないのだ。