今年の年末年始は、バチカン宮殿近くに宿を取り、ひたすらバチカンに迫った。
歩いて5分。朝な夕なに散歩に行き、広い参道(コンチリアツィオーネ通り)と広場をまわり、荘厳な大聖堂を拝覧した。その日、その時間によってアクセスできる制限区域が異なる。
元旦は早起きして、かみさんとバチカンに初詣に行った。なむあみだぶをつぶやき、目立たぬよう柏手も打った。今年の神仏のご加護は絶大なものがあるだろう。
人の列に付いて行ったら、何と警戒厳重なサンピエトロ大聖堂の中に入れてしまった。すごく背の高いスイス衛兵が我々を迎えてくれた。元旦行事の式次第と讃美歌の歌詞の冊子を渡され、高い天井の下、信徒たちが並ぶ中に座らされた。
これはまずいんじゃないか。式が始まってしまったら出られなくなる。そう2人で示し合わせ、早々に会場を出た。出てきたのは我々だけで、変な目で見られた(ように思った)が、何事もなく解放してくれた。後でローマのテレビを見ると、フランシスコ法王が出てきて、新年のミサが行われていた。
異教徒も、だれでも受け入れるバチカンの懐の深さ。夜のバチカンも散歩したが、ホームレスの人たちが大聖堂前参道に沿い多数寝ていた。排除しないようだ。彼らも神のご加護を受けている。警備が厳重なので、返ってここは安全なのかも知れない。
しかし、12月31日の午後、バチカン美術館に入れなかった。1時過ぎに玄関前に行くと、出てくる人ばかりで入る人はだれも居ない。他にやってきた観光客たちも門の前で係員とやり取りすると帰っていく。聞くと、午後は臨時閉館なのだという。そんなの何の情報もなかったぞ。立っている男に問い詰めると、「バチカンはプライベートな機関だから、仕方ない。」
現地ツアーガイドのようで、彼も困っている方だった。
博物館などが突然休館になるようなことはイタリアでは珍しくない、というウェブ上の書き込みを思い出した。しかし、天下のバチカンが、連絡もなく突然閉館するのはひどいではないか。
宿に帰ってウェブページを細かく調べると、なるほど、分かりにくいところに「臨時休館」の案内は一応あった。通常の開館時間解説ページにその情報はなく、カレンダー方式のスケジュールでも12月31日は全日オープンの印になっている。「All times」という意味不明の箇所をクリックすると臨時休館が出てくる。これでは気づけなくても仕方ない。
1月1日もバチカン美術館は休館だったので、とうとうこちらの方は見逃した。
しかし、その代わりに正月の神聖な式(の前)にサンピエトロ大聖堂に入れたのは神の救いだった。