個室1泊1400円 「ヨーロッパ最安」ホテルの研究

個室1泊1400円

個室1泊1,383円。どう、これでヨーロッパ最安と言えないか。ドーミトリー(たこ部屋)方式のホステルならもっと安いのはある。あくまでも個室にこだわった場合の最安だ。東欧コソボの首都プリシュティーナにあるArberia Hostel という宿。2022年11月末の料金。1泊7.94ユーロ=1,143円(税込み9.60ユーロ=1,383円)だ。1ユーロ=144円換算。円が現在のように安くなっていなければ、3桁になるかも知れない。

トイレ・シャワーは室外で、共用。同じく共用の比較的大きなリビングとキッチンあり。5階建ての2階(First Floor)、全4室のうち他3室はドーミトリー。つまり個室は1部屋だけだ。1人宿泊の料金が上記で、(元々ツインの部屋なので)2人入ると倍近い料金になる。つまり、日本と同じで、人数で料金が決まる方式で、それがこの辺の主流のようだ。

ウクライナ、モルドバ、ロシア、ベラルーシなどにはさらに安い個室宿があるかも知れない。しかし、現時点では行けないし、行くべきではない。これらを外した上で、最も安い東欧地域を貧乏旅行している。その私が見つけた最安宿はヨーロッパ最安と言っていいのではないか。

(さらに細かく言うと、車がないと行けない田舎の宿、あるいはネット予約サイトに入ってない宿ならさらに安い所があるかも知れない。しかし、それは見つけるのが難しく、実用的でもないので、検討から外している。私は主に予約サイトbooking.comで安宿を探している。これには「個室のみ」や「専用バスルームがあるものだけ」なども表示してくれるので「個室最安」なども探しやすい。ネット情報は正確でない場合もあるが、この宿は実際に今私が泊っているので確実だ。)

安いのでそれなりに欠点があり、長期逗留してもよいかどうか迷っているから、こんな「研究」記事を書いている。が、「お前、迷う余裕などないだろ、これだけ安けりゃ泊まる以外ない!」という天の声はすでに聞こえている。環境にどう適応するかだけが課題かも知れない。

良い点

まずは良い点をあげていこう。特筆すべきは、安宿なのに、良い場所にあることだ。普通、安宿というのは荒廃して治安の悪い場所にある。しかし、ここは閑静な住宅街で、高台なので眺望もよい。近くに主要国の大使館があると言えばだいたいわかるだろう(100メートル以内にチェコ、300メートル以内に独仏、トルコ、ハンガリー、ルーマニア、500メートルに米の大使館、など)。

宿からの眺めも最高で、リビングのバルコニーからプリシュティーナの街が一望できる。下記の通りだ。

Arberia Hostelのリビング・バルコニーからの眺め。プリスティーナの街が一望できる。すぐ近くに市立スタジアム(左)、「若さとスポーツの宮殿」(右)が見える。
Arberia Hostelの道路側。真ん中の建物の看板が出ているあたりが入口ドア。なぜか記載の住所と違ってストリート番号は207だ(Arben Xheladini通りの207番)。2階に上ってそこのドアをあけて入る。他の階は一般のアパートになっている。2人組の若者が1フロアだけ買ってホステルに改造した宿のようだ。
宿の中、共用のリビングとキッチン。
共用のトイレとシャワー。トイレは別にもう一つある。
個室の部屋は一応「スタンダード・ダブルルーム」と呼ばれている。二段ベッドで2人まで泊まれるということだ(上記の通り、2人泊まると料金は約2倍に)。
窓からの眺めもまあよい。前の家が景観を邪魔しているのが惜しい。ただし、あまり気にならない。こちらの部屋の中は見られない。前の家こそ、こんな5階建てアパートから見下ろされていやだろう。時たま窓に人の姿が見えることがあるが、すぐカーテンを閉め切ってしまう。
夜など、高層ビル(実際には中層だが)の灯りがともり、大都会に暮らしている気分になる。

欠点は主にメンテナスの問題で、もともとの構造はしっかりしている。眺めがよいのもそうだし、リビングも部屋も広い。天井が高くて開放感がある。遮音もよく、隣室の音は聞こえない。安宿だと、くしゃみも遠慮しながら、などとなるが、それはない。ネット動画をイヤホンで聴くなどの配慮も無用。共用トイレも、少なくとも今の時期だと宿泊客が少なく2つあれば十分だ。専用に近い形で使えるし、換気扇が大きな音で回るので、他の音を消してくれる。シャワー、水道で熱いお湯がちゃんとと出る。セントラルヒーティングはないが、輻射型電気オイルヒーターで広い部屋も結構暖かくなる。エアコンはないが、この辺の夏は乾燥しており、三方の窓から風も入るのでしのげるのではないかと思う。

欠点とそれへの対応策

メンテナスをもう少ししっかりやればかなりいい宿になるのにな、と思う。例えば、道路側の窓が下記のようだ。ブラインドが壊れていて下がらない。外が丸見え。向かいの家から部屋の中が見られる(だが、実際上、向こうさんはいつもブラインドを降ろしている。空き家か)。宿の看板が部屋からも丸見えで、これは夜になると光るので、部屋の中が電気を消しても少し明るい(しかし、夜トイレに起きるとき薄明るくて便利。いやいや、これは少し経ってから、私の部屋の中から看板の電気を消せることがわかった。もともと管理人の部屋を客用にした、ということか)。

道路側の窓はブラインドが下りない。ベランダになっているが、埃やゴミが溜まっていて出る気がしない。

その他、水道の蛇口がぐらぐらして今にも外れて水が噴きそうだ(そろりそろりと壊れないように使えば何とか使える。熱湯さえ出るのだし)。コンセントが壁から突き出しぐらついてやはり壊れそうだ(そろりそろり使う)。部屋のドアの接触が悪く、閉めるたびにガキーンと大きな音が出る(工夫してできるだけ静かに閉める)。最初ドア近くの電灯が点かなかった。電球を替えてもらおうと思っていたところ、2日目、突然点いた。接触不良になっていたらしい。初日、夜トイレに起きたら水道から水が出ない。これは致命的かと思ったが、ひねり方を調整すれば大丈夫。栓を右端にすると水が出ないのだ。Wifiがつながらなくなったときがあったが、これは宿の問題ではなく、ネット接続業者側のトラブルだった。よくあるようなので、ネットがなくとも仕事ができる準備を整えておいたらよい(Wordでの執筆、ダウンロードした電子本を読むことなどの「仕事」を用意しておく)。ネットサイトには「専用キッチン」有りとあるが、実際は共用キッチン。「バスタブ」ともあるが、これはない。「薄型テレビ」その他いろんな設備が書いてあるがすべてリビングの共用設備だ。この辺の区別はちょっとあいまいになっている(booking.comの表示も改善の余地があるだろう)。掃除してない。素敵な板の床なのに細かいゴミやほこりが目立つ(自分で掃除しよう)。長期逗留で文筆活動をするにはイスと机は必需品だが、机がない。これは洋服ダンスを下記のように改造して対応した。

ヨーロッパ最安を体験しては

よし、長期滞在することに決めた。マネジャーに、2週間滞在するから安くしてくれないかと交渉したら、1泊9.60ユーロのところ8.50ユーロにしてくれた。何と1,224円だ。ヨーロッパ最安がさらに安くなった。1カ月にして3万6000円で、安アパートのレベルだ。ぜひ皆さんにもお勧めしたいので詳しく書いた。どうだろう、「ヨーロッパ最安」を体験してみないか。


(追記)

高級で安全な街ならではの違和感

高級住宅街だ。周囲を歩くと面白い。各国の大使館や(独立承認してない国の場合)連絡事務所などが多い。警備が厳重で鉄条網が張ってあるところもある。「撮影厳禁」の貼り紙も多く見る(したがって、ここでは写真なし)。確かに高級住宅街だが、ここまで来ると逆に、風来坊旅行者にとっては落ち着かないかも知れない。

外国公館でない一般民家でも、高い鉄格子に覆われた家とか、玄関先に守衛詰め所を設置している家などがある。まあ確かにコソボ紛争の頃は危険だったろうが、現在のコソボでそこまでやる必要があるのか、過去の異物ではないか。詰め所の中に、実際には守衛は居ないのでは、と思ってのぞくと意外に居たりするんだな、これが。詰め所の横にご丁寧に簡易トイレを設置しているところもあり、これは本気だろう。

宿の近くにも、玄関に守衛詰め所を設置した民家(右)がある。ここはその上、何やらコンクリートの防護壁まで設置している。何だこれは。道路のどちら側からか来た盗賊団と銃撃戦になった場合、ここに身を隠して応戦する、ということか。

ドイツ大使館周辺の賑わい

大使館街、在外公館街なのだ。すると、住宅街なのに、旅行代理店、ビザ取得代行店、写真撮影店、コピー店などが多くなる。その中で特にドイツ大使館の周辺にそうしたお店が集まっているのは、やはりドイツの力を示しているだろう。(コソボはシェンゲン条約に加盟していないので、EU(シェンゲン)諸国のビザは個別国ごとに取得することになる。ただし、これは今後変わる可能性がある。)