日本は出られた

名古屋の空港でチェックイン。LCCベトジェットエアの係員は私のパスポートとパソコン画面をじっと睨んでいる。やがて同僚と上司を呼び、複数での睨みあいがはじまった。ドキドキ。このまま中央アジア行きはご破算か。

7月3日、アゼルバイジャンのバクー行きの予定で空港に向かったが、「はは、空港から戻ってくるからも知れない」と言って家を出た。

前日にいろんな問題が起こっていた。まず、飛行便キャンセルの連絡が来た。3カ所乗り継ぎ格安券だが、その最後のムンバイ・バクー間のアゼルバイジャン便が欠航になったという。乗り継ぎが保証されないいわゆる「別切り発券」航空券だ。

何とかしてくれと購入したネット予約サイトGotoGateとすったもんだ交渉を繰り返しているうち、別の問題に気づいた。名前のミスがあった。私が、姓と名前を反対にしていた。セキュリティが厳しくなった現在の航空業界では、名前が一文字違うだけでも搭乗拒否される。

こりゃお陀仏か。とにかく行けるとこまで行ってみよう、と出てきた。ムンバイまでは行けるかも。そしたインド旅行に切り替えるか。しかしインドは今日本よりさらに猛暑だろうな。ネパールの涼しいところに行こうか、と後から合流する予定のカミさんに冗談を飛ばした。しかし、出発の名古屋(中部国際)空港で搭乗拒否されると、ちょっとがっくりだぞ、と思いながら、係員3人の合議を固唾を飲んで見守った。

フライト予約サイトが提供する最安券は大体において乗り継ぎが保証されない「別切り発券」の切符を連続させた便だ。今回の場合、4便乗り継ぎで、ベトナムのLCC(格安航空会社)ベトジェットエアでハノイ、同社便でバンコク、そこから関連会社ベトジェットエア・タイ便でムンバイ(ボンベイ)、そこからアゼルバイジャン航空便でバクーまで、計25時間5万5000円の飛行便だった。これだけ経由して25時間というのは少し短すぎる。それだけ乗り継ぎ時間が少なく、ちょっとした遅延で乗り遅れる危険があるということだ。乗り遅れたら自己責任で先の旅行がフイ。そういう危い航空券だから安くなる。(ただし、GotoGateを含め最近の格安サイトでは、一定条件で乗り換え保証をするとうたうようになった。)

最終行程のムンバイ・バクー間は航空会社都合でキャンセルされてしまったのだが、そしたら別の便を探してくれるのか、返金はあるのか、GotoGatoのサポート係と交渉していた。そのうち、名前の間違えにも気付いたので、これ幸いと全便キャンセルも申し出た。しかし、欠航したムンバイ・バクー間の分は返金されるが、その他は航空会社が違うので返金されないという返事。欠航連絡のメールには全便キャンセルという選択もあり得るという内容も書いてあったが、返金はあくまで航空会社のポリシー次第ということらしい。ええい、面倒くさい、それならとにかく行けるとこまで…という経緯で今、名古屋空港のカウンターに立っているのだ。

「バンコク以降の切符はありますか」と聞かれ、ムンバイまでのベトジェットエア・タイの飛行便など一連の予約書を見せると、やっと納得したらしく、ハノイ、バンコクまでの搭乗券を渡してくれた。ホ。同じベトジェットエアでもタイは別会社なので対応できなかったらしい。ベトジェットエアの券としては、帰り(または第三国出国)の便の予約がないバンコク便だけだったので入国審査上の心配をしたと思われる。

よくわからんが、姓名の転倒は問題にならなかった(オンラインチェッキングの段階で正しい姓名順に直せたので直しておいたことが功を奏したか)。GotoGateの方に全便キャンセルも申し込んでいたが、オンラインチェッキング申請情報はまだ生きていたのかも知れない。よくわからないが、とにかくこうして出国だけはできるようで、この危い私のバクー行き旅行ははじまった。

*「ホー・チミン(胡志明)」「マオ・ツォートン(毛沢東)」は英語でも決して「チミン・ホー」「ツォートン・マオ」とは言わない。日本の場合は欧米語にするとき姓と名の順を逆にするのが普通だが、他の東アジア諸国では、自国文化に従い「姓・名」の順番を通す。その辺の文化的背景の違いがあるから、東アジアの航空会社では姓名の転倒をあまり問題にしないポリシーなのかも知れない。

*いずれにしても、名古屋の空港で手間取ったのは、心配していた点とおよそ別の事情だったようだ。以後の行程でも、繰り返し「別の事情」で困らされることになった。