ナマンガンへの道 一人旅と二人旅

カミさんと旅行すべし

時にはカミさんと世界旅行をすべきだ。私の老後人生、なぜか頻繁に世界を放浪(貧乏旅行)する人生になってしまった。自由でいい。私のしょうにあっている。しかし、家族的責任はどうなるか。理解を得るためにも時にはカミさんと旅行すべきだ。旅好きご同輩にはぜひこれをアドバイスとして送りたい。

いっしょに旅するといっても、何か月にもなる耐久生活すべてに突き合わせる訳にはいかない。旅の中のハイライト部分にお呼びする。今回は3カ月の中央アジア放浪のうち8月の約1ヶ月をつきあって頂いた。私の旅に付き合うのは確かに大変らしく、カミさんはかつて東欧で帯状疱疹になったし、今回も百日咳になって、帰ってから咳が治らないと連絡が来ている。しかし、人にもよるが、うちのカミさんも海外旅行は好きだ。特に私の旅のような手作りの旅は面白いと思っている(ようだ)。次は私がどこを旅するのか楽しみにしてくれているようでもある。そう、この点は人によると断らなければならないが、諸君にぜひ私のアドバイスを届けておきたい。

一人旅もいいが、私としても二人で旅するのもまた楽しい。別の性格の旅になる。ここ何年か(いや、もう10年くらいになるぞ)、こういう「基本一人旅で、時にカミさんと」という旅人生が続いている。(ちょっと弁解しておくが、私の年金額は平均以下、以前、生活保護と比べたこともあったが、その給付額以下でもあった。生活保護で世界旅行をしてはまずいが、年金で旅して何か悪いことはあろうか。恐るべき貧乏旅行と徹底した情報収集と体力で、日本でだらだら生活しているのとたいして変わらない費用の外国旅行を続けている。この点は、本ブログを読んで確認して頂けるだろう。)

二人旅はきびしいぞ

しかし、カミさんとの旅行はある意味厳しい。一人旅なら、出たとこ勝負、どうにかなるさの気安さだ。困難に陥っても力技で乗り切るということができる(例えば、バスで間違った所に着いてしまっても、何キロでも歩いて所期の目的地まで行ってしまう、とか)。だが、カミさんとの旅ではそんなことはできない。そもそも、あやしげな行路難状況に陥ると、たちまち容赦ない非難、大目玉が飛んでくる。

うちのカミさんも70台半ばとしては元気な方だが、日ごろ若者とのバスケで鍛えている私はその3倍くらい体力があることがわかった。この点は充分考慮し、注意しなければならない。したがって、旅を間違わないよう徹底した事前調査を行い、できるだけ無理のないルート、旅の仕方を選ぶ。これがかなり難しい。旅慣れしていると言っても、旅と言うのは常にどこか新しい場所への移動だ。思わぬ困難にぶつかることがしょっちゅうだ。この予測不可能性を最低限に抑える。相当の時間ネットで調べるし、不安な場合はあらかじめ自分ひとりで事前調査する。例えばカミさんを駅に置いてまず私が宿の場所、どのバスに乗るか、その他調べてくるのだ。宿に行ってからもまず私が周囲の状況を調べてくる。これがまた不確実性満載の調査になりがちで、予定時間を大幅に上回り、駅などで待つカミさんを不安にさせる。着いたばかりでも連絡が取れる方法を確保しておかねばならない。

そんなこんなで厳しい1ヶ月の二人旅を終え、ある意味ほっとしたわけだ。また自由に行き当たりばったり、何でも力わざで解決する一人旅に戻れる。…と、いつも通り、前書きが非常に長くなった。これからが本論「ナマンガンへの道」だ。一人だと、どれだけ適当な旅になるかの例を出そうというのだ。

タシケントから列車で着いたポップ駅は、驚いたことに野原の真ん中にあった。フェルガナ盆地最大の街ナマンガンに行こうとしていたが、ポップ駅の周辺に手ごろな宿があったら、ここに1泊程度泊ってもいい、と思っていた。だが、とんでもない。宿どころか民家もない。

シルダリア川を見に行けるか

地図で見ると、シルダリア川が駅から数キロなので、ここから川を見に行くのもいいと思っていた。ナマンガンからだとシルダリア川は10キロ程度ある。

グーグルマップで、行けそうな小径に入り川の方向に歩いた。てっきり街中の道だと思っていたが、野原の藪道だった。そのうち行き止まりになってしまった。川は姿も見せない。どう行けばいいんだと、頼りにならないグーグルマップを探っていると、民家から男が犬を連れて出てきた。何かどなっている。犬が吠える。退散する以外ない。

あまり調べてこなかった。ポップに着けばなんとかなるだろう、という例の出たとこ勝負の旅だ。結局この辺の小径はすべて野原の頼りない道で、シルダリア川行きは断念せざるを得ない、となった。こんな旅行はカミさんといっしょではできないな、と思う。

駅前には、列車が着いたときだけにやってくる街中行きの乗り合いタクシーが来るが、すでに出払っていく。街まで歩きだした。道路は立派だが、建物が現れるのは1キロ先(写真)。何か検問所のようで、もしかして街に出るのでさえパスポートチェックなどがあるのか、と不安になる。(まあ、そうではなく、あのあたりを折れて街への道が続いていた。)
ポップ(人口23万)の中心街。駅の様子からてっきり田舎町と思ったが、そうでもない。駅から街の中心まで4、5キロあるというのはいかにもけしからん。
ナマンガンまでのバスを探すが、なかった。いや、徹底して探す以前に、乗り合いタクシーの呼び込みに囲まれた。ナマンガンまで約40キロ、1時間の乗車になるが、35,000スム(約400円)という。まあ、これでもよいか。駅に荷物を置いてきたので、駅を回ってナマンガンに、と言ったら30,000スム追加料金だという。ばからしい、と駅まで歩きだす。こうして駅まで1回半往復することになった。1回目の戻りで、駅近くの家に帰る途上の親切なマシュルートカ運転手がただで乗せてくれたが、計10キロは歩いたと思う。カミさんといっしょだとこうはいかないな、とまた思う。決して苦痛ではない。とにかく私は歩かないと、運動しないと病気になってしまう。競馬馬と同じなのだ。
乗り合いタクシーは、緑のフェルガナ盆地を快調に、いや恐ろしいくらいにスピードを出して進んだ。前の席で、シートベルトがつけられたのがよかった。
同上、フェルガナ盆地を行く。

宿探しで1時間徘徊

ナマンガンでは、着いたバスターミナルなどの近くで自分で宿を探そうとしていた。booking.comなど予約サイトで探すより、その方が安い(そして必ずしも悪くない)宿が見つかることを経験から学んでいた。どこまで行くんだ、としつこく聞く乗り合いタクシー運転手に、「チープホテルだ」「自分で探すんだ」「バスターミナルやバザールのまわりがいい」と、大仰なジェスチャーで答えていた。

すると運転手は、ナマンガンに着いてすぐ、西部の新市街地で私を降ろした。たしかにホテルがいくつか並んでいるが、みな高級。1泊400,000スム(4500円)を越える。こちらが明確な場所を指定しない限り、運転手は街に入ってすぐの運行上めんどくさくない所に客を降ろしてしまうインセンティブがはたらくようだ。また勉強になった。以後ははっきりと場所を指定しよう。

安宿を求めてその辺をうろつきまわる。荷物を背負って1時間ほど、例のごとく運動のつもりで徘徊した。庶民的な住宅街に入っては、こんなところにホテルはないぞ、冷たくあしらわれ、大通りの「トルキスタン・ホテル」に行ってみろ、という助言に賭けて、そこに行くとやはり350,000スム(4000円)と高い。自分でバスに乗りバザール近くにでも行ってみるか、と思ったその時、

トルキスタン・ホテルの近くに「アドラス・ホステル」というのを見つけた(写真)。やや高級そうに見えるがホテルでなく「ホステル」と自称しているところに好感が持てる。料金を聞くと個室で240,000スム(2800円)。合格だ。
確かにドーミトリー主体の「ホステル」だが、つくりが立派だ。建築が堅固で、タイル張り床も輝き、ロビーは広い(写真)。トイレ・シャワーは共同だが、あまり客がおらず、専用に近い形で使える。部屋は清潔。共同のキッチン、冷蔵庫、湯沸かしポット、電子レンジもある。すぐ5泊の料金を払った(次の目的地ブハラ行き列車は5日後にしか出ない)。なぜこんないい宿に客が少ないのか不思議だ。
宿の近くにはバザーがある。というか、部屋のカーテンを開けるとそこが市場だ。中心部のチョルスー・バザールに比べると小規模だが、一応ここで何でも手に入る。