アラル海が干上がってアラルの街は

「20世紀最大の環境破壊」

延々と続く砂漠と草原。ここは、かつて琵琶湖の100倍、世界で4番目に大きな湖だったアラル海の海底、だったところだ。流れ込むシルダリア川、アムダリア川の沿岸で1960年頃から綿花栽培などのため大規模灌漑開発が行われ、2014年推定では10分の1の面積に縮小した(1960年68,000 km2、2014年17,160 km2)。「20世紀最大の環境破壊」と言われる。

かつての「海」の北端、アラル(露:アラリスク、人口3万6000)の街に来た。漁業で繁栄したが、水面は一時100キロかなたに遠のいた。「アラル・シー(海)」は「アラル・サンド(砂)」になり、街の漁業は壊滅、一時期5000人を雇用したアラリスク漁業コンビナートも崩壊した。失業や転出が増え、街自体もさびれた。残った湖水は塩水化が進み、動植物の多くが生息できない。かつての湖底に堆積した塩分、有害化学物質が飛散して周辺住民の健康被害が出ている。

(全体の一部だが、北部湖をダムでせき止め若干の改善がみられる。2015年までに「海」がアラルまで12キロに近づいた、とされるが、現在、グーグルマップで距離を測ると、少なくとも湖水まで20キロは離れている。)

かつてのウラル漁港の残骸。クレーンだけが残っている。一時期、露出した湖底に船の残骸なども残っていたが、それも徐々に撤去されてしまったという。
往時の漁港を描いた絵。アラリスク漁業史博物館の壁に描いてあった。
衛星写真で見るアラル海の縮小。左1989年、右2014年。Photo: NASA, public domain
かつての湖底を行くラクダ。格好のラクダの放牧地になっているようだ。

荒廃する街

港湾施設の残骸には、危険なので近づけないようだ。
営業しているのは鉄くず屋さんだけ。
港への鉄路は閉鎖されている。
港からの鉄路も、行くあてがないようだ。
繁盛していたであろう港近くの界隈もさびれた。

かつての岬から展望するアラル海砂漠

町の南西に、水文気象測候所のある小高い丘がある。行ってみた。かつてはアラルの大海原が一望できる岬突端だったと思われる。水平線の代わりに広大な地平線が展望できた。
同上。湖水が遠のくと、まず各所の窪地に水溜りが残る。蒸発で塩水化する。やがてそこも干上がって塩の砂地となる。こういうところから塩分や化学物質が風で舞ってきて住民に健康被害を生じさせる。
意外と残っている水溜りも多い。

ダークツーリズムの観光名所

これは、漁港から続く水路の跡。遠のいていく湖水の方向に必死に水路を整備し、漁業を続けようとしたようだ。それも限界に至り、漁業は停止。この撮影者の居る地点でせき止めて、水たまりを残している。グーグル地図上ではこの地点は「観光名所」のBerge(はしけ)跡と出ている。写真右手の岸辺付近に、使われていた舟艇の残骸が野ざらしにされ「滅びゆくアラル海」を象徴する観光スポットになっていた。それも撤去され、鉄くずとして売り払われたという。残しておけば、より高い観光収入源になったのに、という声もある。
その先の「水路」は干上がっている。
不気味な色になっている水溜りも。

しかし、アラルの街は滅びていない

しかし、アラルの街(人口3万6000人)はゴーストタウンになったわけではない。何よりもここはモスクワからタシケントに至る長距離幹線鉄道(トランス・アラル鉄道)が通る。衰えながらもこの地域の中心都市の立場は維持している。
ここはユーラシア大陸の主要輸送ルートが通る。果てしない砂漠からやってくる列車。
それがアラル駅に停まる。
駅のすぐそばに手ごろな宿があったので、ここに入り、アラルの街やかつての湖底を歩き回った。アラルは緯度的には樺太南部だが、直射日光を受けて暑い。Tシャツの上から水をぶっかけながら歩いた。
駅前にかつての栄光を象徴する帆船オブジェが立っている。
街の中心部に賑わいがある。建物の中にいろんな店が入り、市場となっている。
市場の中。
かつての漁港付近は公園になり、往時を思い起こす文物が配置されている。
その一角にあるアラリスク漁業史博物館。小さい鉄のドアが閉まり、開いていると思ったが、開いていて、中の展示も充実していた。右手の船は、当時使われていた実物の船を改装したもので、博物館の展示室になっている。乗り組み員になったような気分をアラル港を眺められる。
博物館の中。
展示室に改造された実物の船の中。
船員になったつもりで、アラル漁港を眺める。
かつての漁港を描いた切手が展示されていた。
壁にもかつての活況を伝える絵が。
博物館のある公園を出たところにも、当時の活況を伝える壁画が。
廃墟となった港湾施設の近くにはモスクが立ち、こちらは活発に利用されているようだった。
元湖底の水溜りでは子どもたちが元気に水浴。これは新鮮な湧き水を導入してるようだった。遊泳禁止とは書いてあるようだが。
街の外縁部には新興住宅が大規模に建てられているのも見た。
ラクダはこの辺の人たちの放牧で飼われているようだ。牛か馬のように街中で見る。
猛暑の中、新鮮な水のあるところで休むラクダたち。楽だ楽だ。