ユネスコの「世界で最も難しい言語ランキング」などない

今、言語について調べているのだが、ネット上に「ユネスコによると、世界で最も難しい言語は…」という不確かな情報が溢れている(ユネスコ、UNESCOは国連教育科学文化機関の略)。日本語が難しいのはその通りと思うが、それを信頼できる機関UNESCOがランク付けしているというのは、怪しいと思う。そのランキングによると日本語は世界3番目だとか5番目に難しいとされているようだ。その他、中国語やアラビア語などが上位に来ている。

原典が見つからない

私も正直なところ、UNESCOがお墨付きを与えているなら面白いと思い、どう言っているのか原典を見たいと思った。だが、出典を示すウェブページはなかった。独自にネット検索してみたが、UNESCO文書中のランキングは出てこなかった。確かに、こんな文化的に偏った形にならざるを得ないランキングを、国際機関であるUNESCOが出すというのはちょっと考えられないところがある。

ただ、英語情報でも、「UNESCOによると」で言語の難しさランキングを示すページはたくさんあった。そこでも出典を明記したページは皆無だし、独自に検索して原典を確認することはできなかった、ということだ。どういうことだ。単なるジョークか。UNESCOが実際に何か出した後、引っ込めてしまったのか。ウェブ上には上がっていない出版物の中でそういうことが語られていたのか。

「日本語は難しい」の記事を書く人は、私が面白そうだと思ってしまったと同じように、こうした英語ページを見て無批判に引き写した可能性がある。参照する際は、やはり原典を確認し明記すべきだろう。この手の情報は、誰かを傷つける名誉棄損的なものではないし、フェイク情報とまで批判すべきものではないかも知れない。しかし、都市伝説のような情報が拡散し続けるのは止めなければならないと思う。むろん、私が間違っていたなら改めたいので、ぜひ出典を教えて下さい。

英語話者にとって難しい

絶対的・客観的に見てその言語がどの程度難しいかを確定するのは困難だ。不可能と言ってもいい。近しい言語圏の言葉であれば習得しやすいだろうし、遠いところの言語は難しい。言語の難しさにはそうした相対的な面がある。例えばかのUNESCOランキングで韓国語もかなり難しいランクに入っているが、日本語話者にとっては文法などが似ており、やさしい言語に入るだろう。逆にヨーロッパ系の言語を話す人にとっては中国語、日本語、韓国語、アラビア語などは難しい言語になる。

「英語話者にとっては」「ヨーロッパ系言語話者にとっては」習得が難しい言語、ということでランキングを出すのはいいし、確かにそうした難易度は存在するだろう。その立場を明確にして、それなりの判断でランキングを出したページはある。Foreign Service Institute(FSI、米国務省下の外国語教育機関) のランキングが最も総合的と言えるだろう。これは「英語話者にとって」の立場を明確にし、あくまでその機関の判断、言語学習者の意見に基づくとし、専門家からの異なる見解がありえることを断っている。